そろそろ夏休みがはじまるらしい。

これは「キムワイプが大幅値上げらしい」と言われたようなもので、名誉無職の私にとっては「特定業界にとって大激震なのはわかるが自分には完全に無関係な話」である。

「大人になると夏休みは関係なくなる」というが、これは正確ではない。

まず無関係になった大人の中にも、単純に夏休みがなくなった派と、勤務形態が週休7日なため関係ない派にわかれる。この派閥は諸事情により季節感も喪失している場合が多いため、そういう意味でも夏休みは無縁だ。

しかし大人でも、夏休みを送る子供がいる家庭の者は全く無関係ではない。むしろ激震が走っているのはこの層である。

  • 両親は仕事、子供は夏休み、こんな無理ゲーどうやってクリアしてたんだ

    昭和の頃は子供一人で野山を駆け回っていた気がしますが、結構な割合で事故にあったり事件に巻き込まれていたような気もします。そもそも、子供の人口が多かったから遊び場所もたくさんありましたしね

夏休み当事者である子供と、それを保護しなければならない親などとでは、夏休みに対する認識がまるで違うということを大人になってから知った。

子供だけ夏休みにされて途方に暮れる親たち

Xが中高年のツールであることは周知の事実であり、20代や大学生を見かけるだけでも「YOUはどうしてこのSNSを?」と問いかけたくなるし、高校生なんかを見かけた日には「お逃げなさい」と森のくまさんみたいになる。

よって、X上で見かける夏休みへのコメントは、当事者の楽しみより、夏休みを迎える子供がいる親世代の「恐怖」の方が多く、それも「憂鬱」レベルではなく「俺たちはどう生き残るのか」という、ジブリみさえ出てきている。

子供のころ、夏休みは楽しみなものであった。

特にレジャーの予定や、遊ぶ友達がいたわけではない。むしろ父親の実家恒例「耐久墓参りタイムアタック」が唯一の予定という意味では憂鬱ですらあった。

それでも「学校がない」というだけで、夏休みは楽しかったのだ。

しかし、保護者にとっては「学校がない」というのは一大事なのである。

子供は、一定の年齢になると「自分のことは自分でできている」という気になっているものだが、実際はそんなことはない。私も物心ついてから30年以上経つが、未だにできていないのだ。

子供には、食事を与え、何より安全を確保し、見守ってくれる大人の存在が不可欠なのだ。

学校はそれらを日中子供に与えてくれる存在である。

それがないとなれば、親が代わりに与えなければならないのだが、現代は両親共に働いている家庭の方が多く、「子供の生命維持のため、夏休みの間は仕事を休みます」というわけにもいかない。

よって、学校や自分たちの代わりに、子供の命を守ってくれる学童などのサービス手配や昼食をどうするかなどで、毎年頭を悩ませているそうだ。

自分が子供のころ、どうやって命を落とすことなく夏休みを過ごしていたか思い返してみると、我が家には「BBA同居」という有利アイテムが存在した、しかも「母方BBA」という、もはやチートと言って良いカードである。

これが父方BBAだったら、母は義母に子供や家事を任せて仕事をせねばならず、相当やりづらかったはずだ。

ちなみに、我が家には私の父親も常駐していた。家事も子守もしないのでBBAに比べればNカードでしかないのだが、それでも「常時家に大人がいる」というのは大きい、少なくとも埼玉県条例(廃案)に引っかからないというメリットがある。

思い返せば、我が家は少なくともワーママにとってはかなりの有利家庭だったと言える。

しかし、チーターへの報い、それとも自宅警備一本の職人気質な父親の背中を見て育ったせいなのか、私はこんな感じに育ってしまった。

親の夏休みへの恐怖感が高まっているのは、両親の共働き化に加え、核家族化により祖父母などのカード未所持家庭も増えているのに対し、それをサポートする制度が不足していることが原因と思われる。

今は「夏休み」も上級国民用になってしまったのか

そしてさらに、影響を与えているものもある。

「夏休みどこに行く」という質問に対し、2024年は半数が「自宅ですごす」と答えたそうだ。

この数字に対し「暑いからね」と感想をいだけるのは、かなり平和の国の住人である。

もちろん暑いのも関係あるかもしれないが、給料が上がらないのと、物価高が影響して節約傾向にならざるを得ないという見方も多い。

さらにその影響を大きく受けているのも子育て家庭だ。

もはや、夏休みどこにいく、ではなく「夏休み何を食う」の域に達している家庭も珍しくないようだ。

夏休みは給食がないため、昼食の用意が必要で食費がかかるなど、困窮家庭にとって夏休みは生きていけないレベルの貧困になりかねない恐怖のイベントと化しているようだ。

どちらにしても、親の負担が大きすぎるため「夏休みを廃止に」という声も出ているそうだ。

また子供たちにとっても「夏休みどこ行った?」の質問に対し、饒舌になれる子供と答えに窮する子供にわかれるなど、夏休みは「経験格差」が浮き彫りになってしまう行事になりつつあるという。

ただ、そういう苦い思いをしたり、親の苦労を察せる子供なら「夏休み廃止」も妥当と考えるだろうが、私のように気楽に過ごした子供は「何をいっているのだ?」と思うだろう。

親の心子知らずだが、子供が幼いうちから親の苦労を察してしまう社会の方が健全でないとも言える。