少し前の話だが、「酒は百薬の長」が全く無根拠であると実証されたそうだ。
では、何でそんな説が出たかというと、大麻愛好家が「大麻は体に良い」と主張しているのと同様に、酒飲みが「酒は体に良い」と主張していた、というのもあるかもしれないが、昔、酒は割と高価なものであり、金持ちしか飲めなかったらしい。
そして金持ちの方が貧乏人より健康状態が良く長生きだったため、酒は体に良いという話になった、という説もあるようだ。
逆に言えば「貧乏人は栄養状態も悪く、病気をしてもろくに医者にかかれないから早死にするしかない」というただの嫌な話だったのである。
現代人の人生は「2000年代のバトル漫画」?
だが時は経ち、現在我が国では逆に「金がなくても割と長生きしてしまう」という問題が浮上してきている。
長生きは良いことだが、長生きすればそれだけ余分に生活費がかかるということだ。さらに国も70歳ぐらいで死ぬことを想定し、老の面倒はその子供が見る算段で制度を作っている。
だが、現実は100歳まで生きるのが珍しくなくなった上、結婚して子供を持つのが当たり前でなくなり、いたとしても自分のことで精一杯で親を援助する余裕はない。むしろ子供の方が親の老後資金で食っているという8050問題も発生している。
その結果、近い将来国が老の生活を保障することは不可能ということになり、「自助」「老後2,000万」などの言葉が爆誕することになってしまった。
それなら無駄に長生きせず、最近のジャンプ漫画ぐらいキリの良いところで人生を終了させたいところだが、栄養状態や医療の進歩のせいか、そう都合の良いところで終われなくなっており、無理な引き延ばしにあっている2000年代のバトル漫画のような消耗戦に入ってしまいがちなのである。
実際、今は80代でも「将来に対する不安を持っている」と答えるらしい。
今のご時世、将来に対する不安が一切ない若者の方が少数派だと思うが、50年以上経っても同じ不安を持っているという恐ろしい話である。
国税庁の若者飲酒コンテストにカレー沢氏が颯爽参戦?
そんな死にたくても死ねず、考えたところでどうにもならない現代人に考えるのをやめさせるために生まれたのが、飲む福祉ことストロング系酎ハイである。
しかし、酒を飲まずにやっていられない世の中の割には、酒の消費量は自体は減っており、特に若者のアルコール離れは深刻らしい。
アルコールから離れることに一体何の問題が、と思うが、国的には由々しき問題らしく、国税庁主催で「酒類業界の活性化や課題解決に資するプラン」を募集する「サケビバ!」という公募企画が始まったそうだ。
国主催の企画が誉められることの方がレアなのだが、もちろんこのサケビバ!も始まるや否や批判を受けている。
まず主催が国税庁な時点でヒントが出過ぎているし、運営が株式会社パソナ農援隊だとわかった瞬間解散である。
つまり酒類業界の活性化というのは建前で、徴収が減ってしまった酒税を盛り返すための企画であることは明らかだと批判を受けているのだ。
さらに冒頭言った通り、酒というのは決して健康に良いものではなく、むしろ飲み過ぎると有害なものだ。
少なくとも酒は人間の生産性を落とす飲み物である。飲むとぼんやりしたり眠くなったり、トイレに行って席に戻る頃には行く前より強い尿意が復活していたりと、あまり仕事に適した状態ではなくなる。
逆に酒を飲まないと手にビブラートがかかりすぎて仕事にならないという人もいるが、それこそが飲酒推奨を素直に聞き入れた人間の最終形態である。
一時的な税収を増やすために、健康を害す恐れがある飲料を国が国民に勧めているとしたら世も末である、と嘆く医療関係者もいる。
そもそも、酒の飲み過ぎは良くないので、消費を抑えるため酒税を設けたはずなのだ。本当に酒類業界の活性が目的だとすれば、酒税を下げるのが1番早いという指摘もされている。
ちなみに募集要項の中に「AIやメタバースを活用した新しい販売手法の確立」というのがある。とりあえずこれから流行りそうなものを使って何か考えてほしいという感じが清々しい。
ただ、コロナ最盛期の時、ビデオ通話を利用したリモート飲み会が流行したので、メタバース飲み会も可能かもしれない。
しかし、メタバース上で飲酒してもリアル酒は消費できないし、メタバース内で売買されるバーチャル酒にも酒税をかけると言い出したら、酒の消費ではなく徴税に全力ということがわかってしまう。
そうなると、メタバースしながらリアルで飲酒をするしかない。ゴーグルをして視界はメタバースのまま飲酒をすれば、こぼす量の方が多くなり、酒の消費量も増える。さらに、口より床が飲んでいる量の方が多いので、健康問題も解決だ。
意外といいアイディアだと思うので、私もサケビバ!に応募し、もし賞金とかがもらえることになったら、サケビバ!について批判していると取られかねないこの記事は秒で消そうと思う。
だが、要項を再度読んでみたところ、受賞しても「賞状」がもらえるだけで賞金の類はなく、受賞したアイディアが確実に事業化されるという訳でもないようだ。
一体誰が何のためにこの企画に応募するのか。考えても仕方がないので、考えるのをやめるために酒でも飲んで、酒の消費に貢献してこようと思う。