火事と喧嘩はTwitterの洟(はな)、今もどこかで誰かが燃え、昨日の一般人が今日は本名住所を晒され「ちょwお前有名人じゃんwww」と中学の同級生にリプライされているのがTwitterである。

よってTwitterなどをやっている人は「自分もこんな大炎上をしたらどうしよう」という危惧を少なからず持っているのではないだろうか。

しかし大炎上というのは「湿度ゼロの暴風状態でこの枯れ草の山に火をつけたらどうなるだろう?」という、純度100%の無邪気から起こっているケースも多い。

そこに「炎上したらどうしよう」などと危ぶむ想像力が1ミリでもあると、空気が湿り、風が止んでしまうため、火がついたとしても思ったほど燃え広がらない。

つまり、ツイートする前に「これは燃えるのでは?」と一瞬でも想像することが燃えないコツである。

ただ、想像した結果「何もつぶやけない」という結論に達し、空と飯とおキャット様の写真を上げるしかなくなってしまうと思うが、そこが「正解」である。全ての問いは「おキャット様」という唯一無二の「正解」へと繋がっているのだ。

だがそんな、一点も邪気もないある意味「光の炎上」があるのに対し、わざと燃やして私腹を肥やそうとする「闇の炎上」もある。いわゆる「炎上商法」であり、わざと炎上による拡散を狙い、知名度などを上げようとする行為だ。

ただ炎上商法もそう簡単ではない。「炎上上等!」などと言っているツイートが3RTでセルフ晒し者になっていることがザラな厳しい世界である。

しかし、炎上にも必勝パターンがあり、そこを押さえておけば大火事は無理でもボヤぐらいは起こせるかもしれない。

炎上の基礎はなんと言っても「クソでか主語」そして「断言」である。「○○なヤツは全員××」構文はその基礎を完璧に押さえている。

また、○○部分は男や女など性別、または個人の努力ではどうしようもないパーソナリティを絡ませると高得点である。

××部分は「馬鹿」や「貧乏」「足が臭い」など、直球の罵倒でも良いが、議論を巻き起こす系の炎上をしたいなら、○○、もしくはその対になるものに一方的に役割を押し付けるつぶやきを意識しよう。

父親の自炊を促す「おとう飯」に漂う「今更感」

  • 誰が作ったご飯でも関係なく、食には感謝…!

    誰が作ったご飯でも関係なく、食には感謝…!

そんなわけで先日、内閣府が男性の家事参加のために打ち出した「おとう飯(おとうはん)キャンペーン」がボヤを起こしたそうだ。

私のTLまで火が回ってきていないので炎上とまでは言えず、さらにこの企画自体は2017年に始まったことらしく、なぜ今更火がついたのかも若干謎なところがある。

では「おとう飯」とはどんなものか、というと、料理をしたことがない男性に「おとう飯なんだから、簡単でも見た目が悪くても美味ければいい」と言って、料理に対するハードルを下げ家事参加を促すキャンペーンだそうだ。

「おとう飯なんだから簡単でも雑でも良い」ということは、逆に言えば「おかあ飯は手が込んでいて丁寧じゃないとダメ」ということにもなる。

同じデリカシーに欠ける料理でも、作ったのが男なら「まあこんなもんやろ」と容認されるのに、女が作ったと知れたら「エラい元気のええご飯ドスなあ」と、急にイマジナリー京都人が暴れ出すのは差別的ではないかということだ。

だが、性別、さらに父親、母親という役割で括るという炎上要素をかなり押さえたキャンペーンにもかかわらず、批判一辺倒というわけではなく、本当に今まで料理をしたことがない世代の男にやる気を出させるなら、まずこのぐらい耳触りの良い言葉を使った方が良いのではないかという肯定的な意見もあったようだ。

ただ、否定にしろ肯定にしろ激怒というより、「今更」というテンションが感じられる。

すでに「料理しよう」などと言われるまでもなくしている男も多いだろうし、そもそも「家庭で料理をしよう」という提案自体が古く、「おとんもおかんも料理したくないならしなくていい」という時代に突入しているような気がする。

今の世の中、自炊をしなくても健康を保てる食事の調達方法はいくらでもある。それが経済的に可能で家庭が円満なら、無理に自炊をして「ここは旦那はんが作りはるん、理解があってよろしおすなあ」と、謎の京都人Xを召喚してしまう必要はない。

おとう飯もおかん飯も「親は料理をするもの」という、男女ではなく親に対する古い価値観の押し付けなので、男VS女という一番燃えやすい構図にはならなかったのかもしれない。

実際5年ぐらい昔の話なので、内閣府も今更湿気り切ったせんべい企画に火をつけられて困惑なのかもしれないが、男の家事参加云々は炎上業界でもそんなに旬の話題ではない、ということである。

炎上も毎回同じ燃料を燃やしているのでは見ているほうも飽きる。この業界でやっていきたいなら「今はこの話題が燃える」というマーケティングは不可欠だ。もしくは「初デートにサイザリヤ」など、何度でも新鮮に燃える永久機関を発見するしかない。

だが、それほどの情熱があるなら、普通に炎上ではないバズで儲けたほうが良いとは思う。