5月9日から5月11日まで、東京・台場の東京ビッグサイトにて開催されている「2018 Japan IT Week 春」においてキヤノンITソリューションズは、同社が提供する車載制御システムソリューションや、品質検証サービスなどの展示を行っている。

AUTOSAR仕様の国産ソフトウェアプラットフォーム「Julinar」

車載制御システムソリューションにおいて注目すべきは、同社がパートナー企業として出資・開発支援を実施している、名古屋大学発ベンチャーAPTJが提供する「Julinar ソフトウェアプラットフォーム(SPF)」(AUTOSAR仕様)だ。

  • キヤノンITS 展示ブースの様子

    キヤノンITソリューションズの展示ブースの様子

Julinarは、名古屋大学で長年にわたり研究されてきたリアルタイムOS技術(このリアルタイムOS技術は、JAXAの「H-IIBロケット」にも採用実績がある)が活かされているSPFだ。

同社の技術説明員は、「自動運転技術の向上によって、制御ソフトウェアの大規模化・複雑化が進むと同時に、より厳しい品質確保が求められている。アクセルを踏むという行為1つでもソフトウェアが動いているにも関わらず、A社はある部分にαというソフト、B社はβというソフト、C社はγというソフトを車に搭載する……という状況になると、より複雑化が進んでしまう。そこで、それらのソフトウェアをインテグレーション(統合)するために、車載制御システムソリューションが必要となる」と説明する。

具体的に、Julinarのサポートサービスとしては、AUTOSARに関わるコンサルティング、技術者のトレーニング、インテグレーション支援、SPFのポーティングやカスタマイズ、開発環境の構築支援や開発支援ツールの開発、アプリケーション開発支援、機能安全対応支援などを予定しているとのこと。

なおすでにJulinarは、2017年11月より先行販売が開始されており、2018年9月より正式販売を開始する予定だという。

組み込み用ソフトウェアの設計から評価までをワンストップでサポート

また、ブース内では同社が行っている品質検証サービスの紹介もなされている。「開発会社による、開発現場に向けた検証」と説明されていたが、もともとは同社の組み込み機器用のソフトウェア開発で行っていた、品質検証部隊が独立してできたサービスであるという。

そのため、これまではキヤノングループ製品(カメラを始めとしたコンシューマ機器や、プロジェクタなどの業務用映像機器のほか、産業機器、ビジネス機器、医療機器領域など)の品質検証が主だったそう。

  • キヤノンITS 品質検証サービスのデモンストレーション
  • キヤノンITS 品質検証サービスのデモンストレーション
  • キヤノンITS 品質検証サービスのデモンストレーション
  • プリンタの品質検証のデモンストレーションの様子。あらかじめ設定しておいた評価項目に沿って自動でテストが行われ、分析結果を確認することができる様子が見られた

しかし、すでにキヤノングループ外の製品においてもサービスを開始しており、例えば自動車メーカー向けに故障診断ソフトの評価を行ったり、半導体メーカー向けに半導体製造装置ソフトの評価を行ったりしているとのことだ。

同社の技術説明員は「品質検証だけではなく、組み込み用ソフトウェアの開発も行っている当社ならではの強みとして、製品の開発、さらには設計段階からのサポートをできる点が挙げられる。第三者検証サービス専門企業とは異なり、組み込み用ソフトウェアの設計から品質評価に至るまで、ワンストップで"コンサルティング"出来るため、このサービスをより広げていきたい」などと語った。