半導体製造・生産に特化したユニークな国際会議「半導体生産国際シンポジウム(International Symposium on Semiconductor Manufacturing;ISSM 2016)」が2016年12月12日~13日にかけて開催された。主催は、米国電気電子技術者協会(IEEE)、国際半導体装置材料協会(SEMI)、日本半導体製造装置協会(SEAJ)などで、応用物理学会が後援している。

ISSMは「半導体製造のノウハウをサイエンスに」を基本スタンスに、1992年以来、毎年、半導体生産技術者の議論・交流を通じて、新たな半導体生産技術の芽を育てると共に、半導体生産技術を"科学する"新しい流れを作り出してきた。

今回は基調講演7件、チュートリアル(教育的講演)2件、9カ国33機関から寄せられた一般講演53件(「3分ショートプレゼンテ―ション+ポスター」発表9件を含む)の合計62件で構成された。参加者は、日本を含めて10カ国212名であった。

図1 ISSM 2016の会場の様子 (提供:ISSM)

基調講演では、「ミニマルファブ」(産業総合研究所)、「自動運転に向けた車載半導体」(トヨタ自動車および日産自動車)、「インダストリー4.0を採用したスマート半導体工場」(Infineon Technologies)、「2020年代の超微細技術」(TSMC)、「200mmファブの活用」(amsほか)といったホットなテーマが取り上げられた。

図2 東芝の久保哲也氏 (提供:ISSM)

チュートリアル・セッションでは、まず「日々変化する半導体製造の生産管理システム」と題して、東芝ストレージ&デバイスソリューション社 IT推進部の久保哲也氏(図2)が講演を行った。NAND型フラッシュメモリは、微細化と生産規模の拡大による継続的なコスト削減により、低価格化を果たし、市場を拡大してきており、同氏は、この生産規模拡大を支えてきたのは、数千の最先端半導体設備と数万ものロットの流し化を実現する自動化システムであるとし、その基本と発展の変遷についての解説を行った。また、近年はビッグデータの活用、機械学習(マシン・ラーニング)の取り組みも始まっているとのことで、「半導体量産工場での生産性を継続して上げていくためには、(1)自動化のさらなる改善やマシン・ラーニングの適用範囲の拡大により、生産ロスの最小化に向けた継続的な活動、(2)IoTを活用した全データの高速収集・活用やそのための人材の育成、データ形式の標準化、セキュリティ対策などが必要である」と強調していた。

図3 東京大学大学院工学研究科の高木信一教授 (提供:ISSM)

次いで登壇したのは東京大学大学院工学研究科の高木信一教授(図3)で、「半導体のバンドダイアグラム」について講演を行った。近年の半導体技術においては、さまざまな半導体材料のデバイス適用が検討されており、そのサイズもナノオーダーのものが多用されるようになってきている。ここで、半導体材料のバンドダイアグラムは、その物性を理解する上での基礎であるとのことで、高木氏は、典型的な半導体材料に対して、このバンドダイアグラムの物理的な意味の基礎的な理解およびバンドギャップや有効質量などの基礎的な物理量とバンドダイアグラムの関係について解説を行ったほか、ナノメーターサイズの材料の物性を理解する上で重要となる、量子サイズ効果がバンド構造に与える影響についての説明も行った。