第18回 iPad miniを最強原稿ツールにしたい!

6月は筆者にとっては「台湾の6月」。どんなに仕事が山積みでも、どんなに家族が泣いて頼んでも、6月は台湾に行くことになっている(関係者の皆様、すいません)。しかし今年は台湾に行くにあたっていろいろと考えたわけである。

旅行に行って何より困るのは荷物の重さ。いつも台湾は1週間の長い旅行なので、それに比して荷物も多くなる。さらに撮影旅行も兼ねているので、カメラセットが一式ある。10-300mmで、合計4本のレンズ、サブカメラにミラーレスとなると、それだけでかなりの重量。でもMacを持って行かないわけには……。そこでふと、iPadで仕事できんじゃね? と考えたわけである。iPad miniならMacBookの1/4の重さ。入力環境さえ整えば、原稿書きと画像処理ぐらいは十分こなせるんじゃなかろーか。まぁそんな経緯で、iPad miniを原稿ツールとして使うためのセットを考え始めたのだった。

iPad miniを原稿ツールとして使うのに必要なものは以下の通り。

1.快適な入力環境

何よりも優先すべきはコレ。結局iPad miniで文章を書くときの一番のポイントはタッチパネルキーボードの精度によると言えよう。これを改善すれば原稿執筆環境は劇的に向上するはず。そう考えてアキバを回って手に入れたのがこのElecomのBluetoothキーボード。プラスチック製で200gと軽量ながら、独立キーでピッチも広くミスタッチがしにくい。これなら文章入力がはかどるはず、ということで購入。

ElecomのTP-FB052。軽量ながら独立キー、200gの軽さはなかなかだ

2.快適な日本語環境

次に考えたいのは快適な日本語入力環境だ。予測入力でそれなりに賢いとは言え、やはりiOSのIMEはベストな選択とは言えない。できることなら自分がMacでも使っているものと同じ辞書を使いたい。そんな望みが叶えられるのが『ATOK Pad』だ。このアプリは普通は切り替えることができないiOSの日本語環境を、アプリ内だけATOKに置き換えるもの。ATOK Padのメモを使えばATOKで入力が可能になる。またATOKにはデスクトップで使っている辞書に登録された内容をクラウドを使ってシンクできる「ATOK Sync」機能がある。これを使えば、デスクトップの辞書と同じ単語をiOS上でも利用可能だ。

ATOK Padではアプリ内のメモパッド使用時だけ入力環境をATOKに指定できる。Evernoteにフォルダを作ってメモを保存してシンクもできる

ATOK Syncを使うとクラウドを通して他の環境の辞書を同期できるので、デスクトップと同じ辞書を使える

3.写真もiPad内で加工したい

もうひとつ取材先で必要になるのは撮影した写真の取り込みと加工だ。ネット環境のあるところで、iPhoneで撮影した写真はフォトストリームでiPad miniにも入ってくるが、一眼で撮影したデータはどうしよう?

一番簡単なのはLightningのSDカードリーダーを接続して取り込むこと。データは写真アプリの中に取り込むことができる。もうひとつはEye-Fiカードを使うこと。こちらならWi-Fi接続でiPadだけでなくiPhoneの中にも取り込むことができる(SDカードリーダーはiPhoneでは機能しない)。このとき注意する点は、どちらも撮影時に必ずJPEGで保存すること。RAWデータはiPadでは扱えないからだ。一眼で撮影するときは、RAWデータとJPEGデータを両方保存するモードがあるのでこれを利用しよう。

SDカードリーダーを使って写真アプリの中に取り込み。一覧から選択して取り込むことができる

Eye-Fiカードの場合は撮影したデータはすべてiPad miniの中に転送される。必要のないものは消すようにしよう

写真の加工には『iPhoto』か『Adobe Lightroom』を使うのが良いだろう。LightroomはAdobe C.C(Creative Cloud)のアカウントが必要になるが、加工のフィルターがデスクトップと同じだったり、加工情報をデスクトップと共有できるので、あとからデスクトップで再調整したりオリジナルに戻したりできる。

iPhotoはiPadを購入すると無料でダウンロードできる。追加費用が必要なく、かなり細かな加工も可能だ

LightroomはAdobe CCアカウントを持っていれば無料で利用できる。フィルター類がデスクトップ版と共有で、デスクトップで加工した内容がiPadで反映されるのも便利

これで「ぼくのかんがえたさいきょうげんこうさくせいつーる」が整った。さてその結果やいかに?

……まずダメだったのは実はキーボード。iPad専用じゃないこともあるのだが、普段使ってるキーボードとは配列が違いすぎててどうにも「快適な入力」にならないのだ(泣)。キータッチやピッチは確かに優秀なんだけど、やっぱり専用品じゃないってのがネックだったか……。これならAppleのBluetoothキーボードにすれば良かった。

キーボード入力はこんな感じ。エンターキーが少し小さいとか「」キーがわからないとかいろいろ問題が……

ATOK Padは快適。確かにこのアプリなら、Macで使っているのと同じ辞書を利用できる。ただ問題はメモの機能が足りない点。普段デスクトップで使っているエディタと同じようなレベルで動いてくれるといいのに。またシンクできるのがEvernoteで、Dropbox内のファイルを直接開いたり、書いたものをそちらに保存することはできない。そこもちょっとマイナス。

ATOK Padでキーボードを使うと変換候補がインラインで表示されるようになり、MacやPCと同じような入力が可能なのは便利だ

写真の加工はLightroomで快適に行うことができた。原稿のアップ前にMacBookでも確認して、足りない部分を追加するなどもできる。Adobe CCアカウントがあれば使わないのは損だと言えそうだ。

ということでこの原稿程度の執筆環境としてのiPadは「それなりに快適」という評価。重いカメラバッグの中に投げ込んで持って行けるレベルにはなっているようだ。あとは良いキーボードともうちょっと良いエディタになってくれるといいな。もう少し探求を続けてみるつもりだ。