南へ旅行すると、南十字星など本州では見えない南半球の星や天体が観察できます。今回は空前の10連休も近いということで、南へ旅行するならぜひ見ておきたい星や天体についてまとめました。基本道具ナシ、知識ナシが前提です。なお5月ではなく10月ごろがいいものなどもありますので、10連休は休めないよー! という方も(私もそうですが)いつかのご参考まで。

沖縄、台湾、東南アジア、オーストラリア。南への旅行は安いLCCも多数利用でき、時差も少なくとってもカジュアルでございますね。そして、リゾートなどでは星空を見上げる機会も結構あります。特に南十字星のように日本では見られない、または見にくい南半球の星を見るチャンスもばっちりです。ということで、今回は南へ旅行するなら見るべき星などを、時期別にご紹介いたしますねー。

なお、ご案内にあたって次のようにいたしますねー

  • 観察時刻:現地時の夜8~10時を想定(日が沈んでから2時間後くらい)
  • 場所:都会(台北、シンガポールやシドニーなど)、リゾート(ホテル+ビーチ的なイメージ)
  • 道具:特にナシ
  • 知識:オリオン座はなんとかわかるくらいのイメージで

それから星の見え方の図=星図(せいず)ですが、ASTROARTS社のステラナビゲーター10を使っています。

南半球の星ってどれくらい見えないの?

実は、日本…えー東京都区部(北緯36度)からでも南半球の星の大半は見えます。見えないのは地球でいえば南緯54度(赤緯-54度といいます)より南極点よりの星空です。

割合でいいますと地球から見える星の10%未満に過ぎないのですねこれが。ただ、この10%の中に入っているのが1等星21個のうち5個です。なんと4分の1が見えない。また全部で88ある星座のうち南十字星(みなみじゅうじ座)を含む12星座が東京から見えません。そして、宇宙戦艦ヤマトが飛んでいった大マゼラン銀河と小マゼラン銀河も見えないのでございます。

さて、そんな見えないものが見えるのが、南への旅行の楽しみなのでございます。

4月~6月 南十字星のベストシーズン

日本の春から初夏は、南十字星のベストシーズンです。南十字星は日本でも西表島まで行けば全体が見えます。ということは西表島よりさらに南の台湾ならOKということなんですね。

ただ、見えるのは南の地平線スレスレでしてチョコットでて引っ込んじゃいます。で、見え方は下のような感じですね。チャンスは4月1日なら深夜0時、5月1日で夜10時、6月1日で夜8時で、その前後まー1時間ってとこです。

  • 台湾で見る南十字星

え? わからん? 南の地平線近くですよー、ズームしてみますね。

  • 台湾で見る南十字星

どうでしょー? ところで、十字架の左に2つ星がありますね。これは、左からケンタウルス座のアルファ星とベータ星です。ケンタウルス座のアルファ星というと太陽系のすぐとなりの恒星系ということでSFなどにはよく登場しますな。2つとも1等星でみなみじゅうじ座も明るい2つが1等星なので、狭いところに4つ1等星がくっついている。日本じゃ見られない派手な場所なんですね。こんなのは他にはありません。1つの星座に2つ1等星があるのはあとオリオン座だけですが、こんなに近寄っていません。

ちなみに、これは都会で見る感じです。南がひらけている、ハワイのワイキキビーチだと。こんな感じ。実はワタクシもワイキキで星を見たことがあるんですが、オーシャンビューの部屋から結構よく見えますよー。なお、左上の方に見えている、横に3つ星がならび下に赤い星があるのはさそり座でございます。あと、上の方にある青くてあかるい星はおとめ座のスピカという星ですな。

  • ハワイの星空

ところで台湾やハワイだと、まあ水平線ぎりぎりって感じなのですが、さらに南下して赤道のシンガポール、これはまあ都会ですがだとどうかというと。

  • シンガポールの星空

おー、かなり高いところに見えますね。っていうか、ケンタウルス座とみなみじゅうじ座の4つの1等星がよく目立つのでございます。街の真ん中からみても、あー、明るい星があるなーという感じでございますな。

さらにオーストラリアのシドニーまで行くと、もう頭の真上近くになります。かえって見つけにくいかもしれませんな。

7月~9月 頭の真上の天の川を見る

さて、今度は都会から離れたリゾートオンリー、しかもできるだけ南下してみたいものがあります。それは天の川でございます。南下しても都会のシンガポールだと空が明るくてイマイチなので、タイのプーケットとかインドネシアのバリあたり、できればオーストラリアのケアンズまで行きたいですね。

天の川は濃いところがありまして、それは日本だと空の低いところなんですね。ところが南に行くと、これが真上にドーンと見えるのでございます。ケアンズだとこんな感じ。今年は天の川の中に明るい木星も真上に見え、そりゃーゴージャスです。あー、ケアンズ行きたいなあ。

  • ケアンズの天の川

12月~2月 都会では青い星アケルナル。リゾートなら大マゼラン銀河と小マゼラン銀河をチェック

さて、最後でございます。1月に星を見るというとえーって感じですが、赤道付近は問題ないし、ハワイではまあ泳げるし、南半球は逆に夏! でございます。

この時期は日本から見えない第5の1等星、エリダヌス座のアケルナルがよく見えるのです。こちらは都会でもOK。他にも東の空には日本でもよく見えるオリオン座なども加わり、すごくゴージャスな星空になっております。

また、リゾートでは雲のきれっぱしのような大マゼラン銀河、小マゼラン銀河も見えるのでございます。これも日本では全く見えないのですよ。1987年には大マゼラン銀河で超新星爆発が400年ぶりに肉眼で観察できました。今はもう見えないのですが、天文学に興味を持っている人ならちょっとチェックしたいところですね。

ということで、ケアンズ(リゾート)の星空を見てみましょー。十字のマークが入っているのがアケルナル。その下の小さな雲のようなのが小マゼラン銀河、その左が大マゼラン銀河、その上に明るく見えているのは日本では地平線スレスレにしか見えない、りゅうこつ座のカノープスです。

  • ケアンズの星空

あと、同じ時期でちょいと夜更かしするとこんな感じ。オリオン座なども加わり、ゴージャスでしょー。まあ同じ時期の日本の星空もゴージャスなんですが、アケルナルと大小のマゼラン銀河というボーナスが付いた形になっています。

  • ケアンズの星空

いかがでしょうか? 日本も星の四季で、夏の大三角だ、冬のオリオン座だといった楽しみがあるのですが、南の方は日本で見られない星もふくめて、なかなか時期ごとによいものがあるのでございます。そんなことをチョイとしりつつ、お出かけになると特した気分に、たぶんなる、と思いますよー。

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。