10月初旬は、毎年ノーベル各賞の発表があります。受賞式は12月ですが、一番盛り上がるのは、10月でございますな。報道各社も科学記者のエースを配置して張り切るわけですが、ここでもゆるゆると予想方法そのほか、まとめて楽しみましょー。

2018年9月は、想像以上に宇宙ネタ満載でございましたねー。何もなくてもお月見があるし、金星もよく見えているのですが(このへん、過去に掲載した - 宇宙どうでしょう - を見てね)。

22日には、はやぶさ2から分離した小惑星ローバ「ミネルバ2」が小惑星リュウグウに着陸成功! しかも移動にも成功して胸アツな写真を送ってきましたね。はやぶさ2も見えるのが宇宙感覚スゴイです(JAXAのWebサイトはこちら)。

また、宇宙に関心が薄い人の耳目をも集めたのは、ファッション通販ZOZOTOWN運営会社の社長、前澤氏が、実現すれば人類初となる月周回旅行の「イスを手に入れた」ということでした。17日(米国現地時間)に発表されたそれは、米国スペースX社が巨大宇宙船BFR(ビッグ・ファルコン・ロケット:ファルコンは同社のロケットのシリーズ名)を建造して、6~8人の同乗者とともに月に向かうということです。まだテスト飛行もしていないBFRですが、同社のモーレツな開発速度(たとえば鳥嶋さんの記事に詳しい)を見ると、マジなのではという気になってまいります。

さてさて、華々しい宇宙探査・開発ネタですが、もちろんこういう夢が実現するには、さまざまな基礎科学が必要なのでございます。地味な発見が100年を経て意味をもったりするのが基礎科学。ふだんはニュースになっても、前澤社長のように一般の耳目を集めることはないのですが、ノーベル賞の時だけは別です。それも、日本人が受賞するとということになりますな。

ノーベル賞とは?

ノーベル賞は、広く知られているように、ダイナマイトの発明と事業で巨大な利益をえたスウェーデン人、アルフレッド・ノーベルの遺言で、20世紀の最初の年、1901年にはじまった賞ですな。

人類に最大の貢献をした人物に授与するということになっております。当初、物理学、化学、生理学・医学(医学生理学とも)、文学、平和の5賞があり、1968年に経済学賞が加わりました。最初の平和賞は、赤十字を作ったアンリ・デュナンですな。また、物理、化学、生理学・医学の3つは自然科学3賞といわれ、とりわけ権威も高くなっております。

  • ノーベル賞メダルのレプリカ

    ノーベル賞メダル(レプリカ)

まあ、賞金がざっくり1億円と高額なのも当初から話題でございました。日本人が受賞すると話題にあります。ただ、2017年の「日本出身」のカズオ・イシグロさん(文学賞)を入れるのかとか、米国籍になった南部陽一郎さんや中村修二さん(いずれも物理学賞)をどうするのかとか、ありますが。総務省のWebページには、文学2人(カズオ・イシグロさんは含まれていない)とか、物理学賞11人(南部さんと中村さんは入っている)ということになっていますな。

このノーベル賞については、毎年、だれが受賞するかが話題になりますな。マイナビニュースでも日本科学未来館の科学コミュニケーターブログの転載という形で、受賞者の予想がされています。いやー、勉強になりますねー。授賞式はノーベルの命日である12月10日に行われますが、受賞者の発表はおおむね2か月前で、今年はノーベル財団のWebサイトによると次のようになっています。10月1、2、3日の午後7時前(日本時)ってことですな。

  • 生理学・医学賞 :10月1日(月)11時30分以降(現地・日本では18時30分注)
  • 物理学賞    :10月2日(火)11時45分以降(現地・日本では18時45分)
  • 化学賞     :10月3日(水)11時45分以降(現地・日本では18時45分)

注:スウェーデンとの時差は、7時間(現地サマータイム中)。今年は10月28日午前3時(現地)までサマータイム期間。

さて、ノーベル賞ですが、予想の仕方について、かつて書いております。(例年のノーベル賞予想ごっこ)。この記事のときと、ちょっと変わったのが、「近い将来ノーベル賞を受賞する可能性の高い研究者」を発表しているトムソン・ロイター引用栄誉賞が事業譲渡にともない、現在はクラリベイト・アナリティクス引用栄誉賞になったことです。「今年の予想じゃないよー」と強調されています。

執筆時点では日本語のWebサイトは2017年のデータですが、2018年までの情報をウィキペディア(速い)で見てみますとを見てみますと…

日本人では、化学賞に横浜党員大学特任教授の宮坂力さん(塗れる太陽電池の発明)、崇城大学(熊本県)の前田浩さん国立がんセンターの松村保広さん(でかい分子の抗がん剤が効果的という研究)があがっていますね。

また、生理学・医学賞では、京都大学の金久實さん(遺伝子研究のための基幹データベースKEGGの開発)があがっています。生理学・医学賞で医学的発見ではなく、それをうながすコンピュータデータベースの開発がノーベル賞とるかも、ということですね。すごい雑な「例え」をいうと、映像賞で映画そのものでなくYouTubeの開発者が候補になるような感じです(あくまでも例えです)。まあ、研究のプラットフォームが評価されたということですね。

物理学賞は、2014年に東京大学の十倉好紀さんが、電気と磁気の2つを互いに独立させて変化(プラマイと、NS)させられるマルチフェロイックという物質の発見で候補にあがっています。ただ、十倉さんは高温超電導物質の研究でも新型の超電動物質を発見し、十倉ルールというのを提唱するなど、高い評価を受けている人です。いつ受賞してもおかしくない人なんですね。今年はどうでございましょう。

なお、ノーベル賞の受賞に関してのネタ知識はこちらに書いてあります。権威ある賞がいいのは、そうそう変わることじゃないということです。

ただ、今年については、ノーベル文学賞がスキャンダルで発表中止なんですよね(BBCのニュース参照)。今年のぶんは来年に2年まとめて発表なんだそうですが。なんだかなー。と思います。これまた権威についてまわるということなら悲しいことでして、なんとか立て直してほしいですなー。

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。