「デザイン家電」とか、「デザインステーショナリー」といったカテゴリーが登場してくるずっと前から、お洒落な人の机の上にはこのブランドの電卓が置かれていた。ただ、電卓を叩いているだけで、無条件に仕事ができるように思えたものだ。

そのブランドとは、1991年に誕生したフランスの「LEXON(レクソン)」。意外に新しいブランドという印象だが、わずか20年弱の間に、外部のデザイナーたちとともに世に送り出してきた電卓、時計、ラジオ、バッグなどのプロダクトのラインナップのデザイン濃度は高い。ちなみに、その外部デザイナーには、プロダクトから空間デザインまで幅広く手がける加藤孝志や、今春デンマークの名門家具メーカーFritz Hansenから「RIN Chair」を発表した紺野弘通といった日本人デザイナーも名を連ねる。

その洗練されたデザインは、決して自己主張することはないが、ただ置かれているだけで、プロダクトしての確かな存在感を誇っている

電卓ひとつをとってみても、デザインの変遷は興味深い。ブランドデビューの翌年の1992年、Hervé Houplainによりデザインされた「FUTURA」は、長方形で平面的というそれまでのステレオタイプの電卓に、曲線美を採り入れた。2年後の1994年、Marc Berthierがデザインを手がけた「ZERO CALCULATOR」は、曲線をさらに強調する円いキー、ディスプレイを直立させた立体的なフォルムが画期的だった。1999年のFrédéric Lintzの「FLASH CALCULATOR」では、ボタンや平面的なイメージはスクウェアに、横から見たときのフォルムは流線形にと、フューチャリスティックな印象のデザインへと進化する。ところが、2005年のTheo Williamsデザインの「ELA DESKTOP」では、部分的に曲線の意匠を採り入れつつも、原点回帰を思わせるスクウェアフォルムに落ち着いている。

究極なモダンフォルムでありながら、アンティークな雰囲気のインテリアとも相性がいい

そして、今日紹介するのが2009年に発表された「MAZZ(マーズ)」(LC68)。これまでのLEXONの電卓の歴史を一旦リセットするかのように、無駄な装飾の一切を削ぎ落としたデザインだ。デザインを構成する要素は、スクウェアのみ。キーに描かれる数字やアルファベットのタイポグラフィに至っても、それは踏襲されている。ただ、ソフィスティケートされた意匠でありつつも、大きく配されたキー、タッチしやすいキーピッチなど、日々使うものとして重要な使い勝手は確保されている。

フォルムからキーのタイポグラフィに至るまで、スクウェアのモチーフが徹底されている。大きく配されたキーのおかげで操作性に優れている。サイズは7.3(W)×7.3(H)×1.2(D)cm

デザインを手がけたのは、加藤、紺野に続く、3人目の日本人デザイナー那須雅人。弱冠30歳という若さながら、世界的ブランドのデザイナーに大抜擢。那須の才能もさることながら、若き才能を見出すLEXONの目には敬服させられる。

カラーは、アルミニウムとガンメタルの2色

机の片隅に置いておくだけで、商談先でバッグからさりげなく取り出すだけで、周囲の見る目が変わってくる……。そんなデザインコンシャスな電卓だ。

LEXONの電卓ラインナップ

LEXONでは、「LC68 MAZZ」以外にも、ディスプレイがスライドで出し入れできるポケットタイプの「LC66 JET」、大型横広の卓上用の「LC67 BOXIT」、卵のようにやわらかい女性的なフォルムの「LC64 GALAXY」といった多数の電卓ラインナップを揃えている。サイズもカラーも豊富なので、自分用はもちろん、プレゼント用としても最適な1台が見つかることだろう。また、せっかく電卓にこだわるなら、他のステーショナリーにもこだわりたい。たとえば、手帳やノートは、ゴッホ、ピカソ、ヘミングウェイ、チャトウィンらの芸術家や思想家に愛されてきた「MOLESKINE」などはいかが?