UQコミュニケーションズは先週23日、プレス向けイベント「UQコミュニケーションサロン」を開催。新生UQ Mobileとしてのスタートを切った昨年秋から現在までを振り返り、今後の方向性について語った。

「UQコミュニケーションサロン」で登壇した、UQコミュニケーションズ代表取締役社長の野坂章雄氏

MNOでもあり、MVNOでもある

WiMAXでお馴染みのUQコミュニケーションズが、KDDIのMVNO事業「KDDIバリューイネイブラー(KVE)」の事業開始にあたり「UQ」のブランドを提供したのは2014年末のことだった。これによって、両者はそれぞれ別の企業でありながら「UQ WiMAX」と「UQ mobile」で「UQ」という同じブランドを使うようになった。

だが、それが続いたのは1年間弱で、2015年10月にKVEはUQコミュニケーションズと合併し、存続会社としてUQコミュニケーションズが、従来からのUQ WiMAXと、auのネットワークを使ったMVNO事業としてのUQ mobileの双方を運営していくことになったのだ。現在のUQコミュニケーションズは、MNOとしてUQ WiMAXを運用する通信事業者であると同時に、KDDIのMVNOとしてUQ Mobileを擁する企業となっている。

MNOとしてのUQを考えたとき、その出自として、自らが免許を受けているLTEのBAND41をWiMAX2+という名称で運用するとともに、KDDIにそのネットワークを提供している。KDDIはUQのMVNOとして、借りたWiMAXネットワークをauのネットワークと統合して使っている。

さらにUQはauから4G LTEを借りてWiMAXと統合して提供するMVNOでもある。一方で、UQ mobileは、UQ WiMAXを含むauのネットワークを借りるMVNOだ。つまり、UQはWiMAXをauに貸し、貸したWiMAXをauから借りている。こうして書いているだけでもややこしい。

推しは「バランスの良さ」だが……

UQは、データ通信に特化したWiMAXを堅実に維持し、年内には国内最速の440Mbpsを実現することを目標に事業を進める一方で、UQ mobileブランドのMVNO事業は、安さを強調するわけでもなく、「価格以上の価値を提供するプレミアムなコストパフォーマンスでバランスのとれた事業者になりたい」としている(UQコミュニケーションズ代表取締役社長の野坂章雄氏)。

ちなみに、UQ mobileを契約することで貸与されるVoLTE対応のSIMカードは、auのVoLTE端末に装着してもSIMロックを解除していなければ使えない。また、UQ WiMAXを契約することで貸与されるSIMカードは、LTEバンド41をサポートしているSIMフリー端末に装着しても使えない。ドコモのMVNO事業者が提供するSIMが、どのドコモ端末でも使えるのとは対照的だ。

UQコミュニケーションズの説明では、これは、KDDIがMVNO事業者であるUQ等各社にSIMを貸与する際に、そのカードがKDDIのものではないという情報を書き込んでいるからだという。つまり、MVNOであってKDDIではないのだから、そのSIMを使うには端末のSIMロックを解除するのが当たり前という考え方のようだ。バーチャルであっても別の事業者だというのは事実として正しいだけに厄介だ。

また、UQの発行するWiMAX契約のSIMを、同社から提供する端末以外で使えるようにすることも「今のところは考えていない」(野坂社長)としている。WiMAX 2+が使っているTD-LTE バンド41は、iPhone、iPadや、各種のAndroidスマートフォン、タブレットでサポートされていることが多いだけに、たとえSIMロックが解除されている端末であっても使えないというのは残念だ。総務省はSIMロック解除を推進したが、SIMが端末を選ぶ使い方までは頭がまわらなかったようで、いったい何のための有識者会議なのかと思ったりもする。

負のスパイラルからの脱出を

こうした状況が続く限り、auのネットワークを使ったMVNOビジネスは、きわめてややこしいものとなり、参入事業者も増えていくことはないだろう。そうなると、auのネットワークに対応したVoLTE対応SIMフリー端末も出てきにくい。まさに負のスパイラルだ。今後のUQコミュニケーションズには、このややこしい状況に、なんとか突破口を拓くことを望みたい。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)