内田洋行とインテルは協業を発表、「教育IoT」によって教育のデータ活用により「アクティブ・ラーニング」「アダプティブ・ラーニング」の実現に向けたさまざまな取り組みをすることについての覚え書きを交わした。

固い握手を交わすインテル代表取締役社長の江田麻季子氏(左)と内田洋行代表取締役社長の大久保昇氏(右)

アクティブ・ラーニングは能動的学習、アダプティブ・ラーニングは学びの個別化とされている。文科省の「21世紀型スキル」習得のための教育改革の一環だ。一連の具体案のなかで直近で話題になったものとしては、小中等教育における「プログラミング教育の必修化」などがある。

模索のための覚え書き

教育の専門家ではないので、これらの是非に対してコメントする立場にはないが、誰が何をどう教えるのかという点では、これから解決していかなければならない問題は山積みだ。だからこそ、今回の協業内容も究めて抽象的でわかりにくいものになっている。

早い話が、両者は、教育の分野におけるICT活用を一緒に考え、今後のIoTテクノロジーをそこに応用していくために、さまざまな取り組みをしていこうと合意したわけだ。そして、この2社がリードし、いわゆるICTプラットフォームに、ある種のエコシステムを構築し、そこでのビジネスが機能できるようにしていくということだ。ただ、現時点での取り組みとして、具体的なものはまだなく、悩みを共にする模索のための覚え書きといってもよさそうだ。それだけ、この分野は取り組みが難しい。

両社は2008年~10年にかけて「1人1台のPC活用」をテーマとして実証研究を共同で進めたことがあり、2015年にはアクティブ・ラーニングの教員研修プログラムの展開で協業をスタートしている。今回の協業は、その延長線上にあるものと考えてもいいだろう。

忙しい現場に押し寄せるエコシステムの波

かつて、インテルはプロセッサのメーカーから転身し、インターネットを構成する要素のビルディングブロックを提供する企業へとシフトした。そういう意味では、教育現場におけるICT活用は、そのビルディングブロックのひとつとして考えてもよさそうだ。

懸念は、忙しい教育の現場が、変わることの本質をうまくとらえることができるかどうかだ。そしてとらえることができたとしても、そのためのスキルを身につける余裕があるかどうか。教えることの専門家ではあっても、教えられることの専門家でない教師が、この新しい波にうまく呼応できるのか。仮にそれがうまくいったとしても、システム全体がうまく動き始めたように見える頃には、子どもたちがBYOD、つまり、自分のデバイスを毎日持ち歩くという状況になっているかもしれない。そうなると、何をどうやっていいのかわからなくなるのは、教える側だ。そこがはかない。

優れたビジョンがあって、それを取り巻くエコシステムが形成され、専門的なSierが育ち、現場からの要望を取り入れたシステムを作り、子どもたちにそれが受け入れられ、次の日本を担っていく人材に育てばいい。個人的には高校1年の物理でニュートン力学を習い、高校3年になってから微積分を習った世代である。大人になってから「一緒に教えろ」と腹をたてた。そうならないことを切に願いたい。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)