1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」。被災した方々には、心からお見舞い申し上げる。
あの地震から、すでに10日間が過ぎようとしている。一日も早く復旧、復興してほしいと祈っている。
交通ネットワークと密接につながる通信ネットワーク
被災各地は道路や鉄道、そして空港などの物理的なインフラが遮断されることで孤立してしまう。また、物理的な交通ネットワークと同様に重要な情報ネットワークも早急な復旧が待たれる。
地デジの放送設備の燃料が補給できずに非常用バッテリーを使って電波を発射していた中継局なども、そのバッテリー切れが起こって放送が停波してしまった。こちらはこちらで物理的な交通ネットワークが復旧しないとバッテリーの交換もできない。その結果、情報ネットワークが復旧しない。
さらにややこしいのは、停電が続くことで機能しなくなっているインフラの多くは、非常用バッテリーでなんとか稼働しているのだが、そのバッテリーが切れたらおしまいだということだ。だから、電源ネットワークは、あらゆるネットワークを支えるインフラとしても重要だ。
キャリア各社が回線復旧の試み、衛星通信が活躍
モバイルネットワークはどうかというと、まず、ドコモとKDDIが共同で、1月6日に船上基地局の運用を開始した(発表PDF)。 NTTとKDDIが2020年に締結した、社会課題の解決に取り組む社会貢献連携協定の一環として、災害時の物資運搬などによる相互協力を実施するものだ。
具体的には、NTTドコモグループ NTTワールドエンジニアリングマリンが運用する海底ケーブル敷設船 「きずな」にNTTドコモとKDDIの携帯電話基地局の設備を設置し、衛星アンテナで受信した電波を船上から発信、陸路が絶たれて復旧が困難な石川県輪島市の一部沿岸エリアのネットワーク復旧を図るという。
また、KDDIが設置した船上基地局は、バックホール回線として「Starlink」を活用している。船上基地局のバックホール回線に「Starlink」を活用するのは国内初となるそうだ。
その一方で、同日、ソフトバンクは通信ネットワークの復旧に向けた取り組みの一つとして、石川県輪島市門前町の一部エリアで「有線給電ドローン無線中継システム」の運用を開始した(システムの詳細)。こちらは、ドローンを上空に停留飛行させることで、半径数kmのサービスエリアを確保するというものだ。
装置は小型化・軽量化され、一式を1台のワンボックスカーで運搬でき、設置準備も容易で、現地到着後30分以内に利用を開始し、ユーザーが通信できるようになるという。ドローンと無線中継装置(子機)に必要な電力は、地上から有線給電されるので、連続100時間(4日間)以上の利用ができる。
ちなみにこのシステムは、2020年6月22日の電波法関係審査基準の改正によって、ドローンに無線中継システムを搭載可能になったことで実現、2020年7月に運用が開始されていた。
テクノロジーの進化によって生まれた新しい当たり前
テクノロジーの進化によって生まれた新しい当たり前が、今回のような災害の復旧に貢献する。先手先手で新しい技術を組み合わせて、過去には不可能だった復旧運用を可能にしていけるというのは素晴らしいことだと思う。
モバイルネットワークについては、それがつながるだけで、音声はもちろんデータ通信もできるし、ラジオ放送での生活情報の受信が可能だ。ライフラインとしてかなり重要な位置づけだが、これまた電気がなければ使えないのがつらいところだ。
備えあれば憂いなしだが、本当はその備えが活躍する機会がないのがいちばんいい。ただ、そういうわけにはいかない。だからこそ、何があっても対応できる適応力を身につけることが重要だ。