レノボ・ジャパンが、群馬県太田市のNEC群馬事業場でのサポート体制を公開した。1日修理の実現など、レノボ、そして、NECパーソナルコンピュータ製品の修理などを一手に引き受ける拠点を訪問し、その現場を見てきた。
機器を売ることも大事だが、そのサポートはもっと大事
NEC群馬事業場は、2002年7月から保守サービス拠点として稼働、故障診断の確かさや修理の確かさ、修理の速さ、修理価格および修理内容の分かりやすさを追求してきたという。さらに、2011年、NECパーソナルコンピュータとレノボとのジョイントベンチャーを経て、2016年夏には、国内におけるすべてのレノボ製パソコン・タブレット製品の修理を開始している。
レノボはそれまで、製品の修理を協力業者に委託していたが、その透明性、見える化の課題を解決するために、2016年に群馬に一本化することにしたという。
「機器を売ることも大事だが、そのあとのサポートはもっと大事だ」と、NECレノボ・ジャパングループ執行役員サービス事業本部長の小林大地氏はいう。壊れない、故障しない機械を売ることができればいいが、それがゼロにはなりえない。だからこそ、より短い時間で修理をして、速やかにユーザーの手元に戻す。ここはそのための拠点だ。
87,805平米の敷地面積は東京ドーム2個弱の広さで、そこに600名の従業員が勤務し、修理、カスタマイズ、キッティング、アセットマネジメントなどに携わる。ひとりで同時に3人のエンドユーザーとチャット対応するコールセンターも24時間体制で稼働する。
ちなみに、製品の修理にはエンドユーザー宅を訪問する出張修理もあるが、それについては現在も外部委託されている。ここに集まるのは、NEC、レノボ、モトローラ各社の製品で、引取修理サービスとしてエンドユーザーから直接送付されてくるものと、販売店の修理窓口を経由して送られてくるものだ。
個別のカスタムは好調、他社製品と一緒の管理を望む声も
NEC群馬事業場は、かつて、群馬日本電気として、米沢事業場同様、NECパソコンの開発生産事業を担っていた拠点だ。
それを事業転換して、修理サービスに事業転換、それまでの保有技術を活かしてCX(カスタマー・エクスペリエンス)向上を推進するべく挑戦を続けている。その背景には、巨大レノボの中に埋没しないようにという想いもあるようで、パーツセンター、修理センター、コールセンターなどの分野でグループをリードできるようにというコンセプトを貫く。
また、ここは、レノボCFS(カスタム・フルフィルメント・サービス)を請け負う拠点としても機能する。こちらは、2021年2月から稼働開始したセクションで、世界に14カ所ある拠点のうちのひとつだ。大企業などの個別要望に応じて納品前のパソコンをキッティング、カスタマイズする。
日本におけるこの事業は好調で、21年下半期にフロアサイズを2倍に拡張もした。グローバル拠点と連携しつつ、最近では、レノボ以外の他社製品もいっしょに管理したい顧客にも対応するようになってきている。
さらに、Windows Auto Pilotを使ったクラウドベースのキッティングなどで、いわゆるゼロタッチのデプロイメントなどにも対応、企業内オフィスですべてが完結するとは限らないハイブリッドワーク時代の柔軟な働き方をサポートする。
この拠点ではシステムボードの修理も行う。以前はOEMベンダーなど、海外の拠点に送付して修理していたものを、日本国内で修理が完結できるようにし、リードタイムや棚卸し、修理費用を削減することに成功している。
マザーボードは、たった一個のコンデンサーや抵抗がダメになっても正常に作動しなくなるが、多くの場合は修理の際にマザーボード全体を交換することになる。
マザーボードを良品に取り替えてエンドユーザーに届けられるが、故障箇所を修理したマザーボードは次の出番のために待機する。それによって修理コストは劇的に下がる。BGAパッケージの装着などの時短のために特別な機器を追加導入するなどで、修理に要する時間もどんどん短くなっている。
目の前にある唯一のパソコンだから素早く修理
ここ数年は、コロナ禍で、今まで使うことがあまりなかったパソコンの装備にも注目が集まるようになった。たとえば、以前は、ほとんどその存在すら気にされてこなかったウェブカメラや内蔵マイクなどがそうだ。
オンライン会議が浸透し、カメラが必要になって、そこで初めてこれらのデバイスが正常に機能していないことに気がついたりする。そこで修理が要請されるわけだ。
また、GIGAスクール特需で、短期間で驚異的な量の製品を納品したが、そのボリュームの増加による修理現場への影響も無視できない。学校の現場で使われ、不具合をおこした製品は、修理現場では想像もつかないほどの過酷な使われ方をしていたことがわかったりもして、改めて、子どもたちのハードな扱いへの対応を考えるともいう。
今、この拠点に届いた故障パソコンのほとんどはその日のうちに修理を完了し、エンドユーザーや販売店に向けて発送される。いわゆる1日修理だ。これは実に頼もしいが、実現するにはものすごいノウハウの蓄積が必要だ。
パソコンがなければ仕事にならない。ならば故障しても業務が止まらないように、予備機を用意しておこう。そういうのはカンタンだ。だが、それができるオフィス現場は少ない。まして、家庭で使われるような個人用のパソコンではそんなことができるはずもない。
ほとんどの場合、目の前のパソコンが唯一のパソコンだ。だからこそ、少しでも早く正常稼働する状態に修理してエンドユーザーの元に戻す。シンプルだが、それこそがこの拠点の目指す当たり前の姿だ。