パナソニックの一体型LEDベースライト「iDシリーズ」が2012年12月10日の発売から10周年を迎えた。その累計出荷は、10周年を待たず、この11月に5,000万台を突破したと同社エレクトリックワークス社が発表した。

  • iDシリーズの説明でユニットを高々と掲げるパナソニック・エレクトリックワークス社の菅谷豊氏

    iDシリーズの説明でユニットを高々と掲げるパナソニック・エレクトリックワークス社の菅谷豊氏(プロフェッショナルライティングBU施設事業推進部ベース商品企画課)

一体型ベースライト「iDシリーズ」は、オフィス、工場、学校などの施設に導入されている照明器具で、発光部のLEDと制御器具が一体化した製品だ。

10年前の時点では、直管蛍光灯を直管LEDランプに置き換えるのが一般的だった施設用の照明設備だが、発光部を小型化できるLEDの特徴を活かした照明器具として、そのシンプルなデザインや施工性の高さから、このシリーズが新たな定番になったという。

60年をめどに進化するあかり

蛍光灯から直管型LEDランプへの置き換えが加速したのは、2011年の東日本大震災で節電のニーズが高まったころだ。

管の交換だけですむので、既設の蛍光灯器具をLED化するのが容易な反面、長期間使用した器具をそのまま使うことになるためにいろいろと注意が求められる。不適切な設置をしてしまった場合は重大事故につながる可能性もある。だからこそ、まるごと照明器具を交換することをパナソニックでは推奨している。

照明の業界はこれまで60年をめどに技術革新を経験してきた。古くはロウソクに始まり、1810年代にガス灯(普及)、1879年にエジソンの白熱灯、さらに1938年に蛍光灯、そして1996年に白色LEDといった具合だ。

そして今、国内照明器具の出荷ベースでのLED化率は100%に達し、今後は、新たな空間価値を提供する需要が掘り起こされようとしている。当面LEDの時代は続くだろう。計算でいくと次の革新は2060年頃で、まだずっと先だ。

オフィスに適したあかりを考える

iDシリーズを生産するパナソニックの新潟工場のオフィスエリアは、空間設計として環境に配慮した空間省エネと人に配慮した空間会的性の面からその体験を比較検討できるように、ゾーンにわけた照明環境を構築、空間設計の結果がどのようになるのかを体験できるようになっている。

今、オフィスにおける机上面の明るさは工業会で推奨されている照度値として、750ルクスに準じるように設計されることが多いそうだが、パソコン作業などが多くなっている今、これを500ルクスに下げるような議論が業界で起こっているという。

ちなみに一般家庭におけるテーブル面は150~300ルクス程度だという。数字では示せても、それが実際にどのようなイメージになるのかを体感するのは難しい。

  • 実際に業務中のオフィスをエリアに分けて、照明設備の違いを体感できるようになっている

LED照明器具は小型化が実現され、さらに照射方向/範囲を調整したり、調光も容易であるため、作業ごとに、明るさとしての環境を精度よく設計できる。だが、それこそ机上の空論になっていないかなど、やってみないとわからないことが多い。

さらには、オフィス全体を均一的に明るくするのではなく、メリハリを演出し、オフィスエリアを人にやさしく快適な空間にし、仕事の内容に応じた働く場にしていくことをめざすというのが、今のパナソニックの考え方だ。

1日12時間で10年もつLEDの寿命は長い

ただ、どの製品でもそうだが、一体型というのは消耗品を製品に埋め込むような面もある。スマートフォンなどもそうだが、内蔵バッテリーの寿命が製品寿命になってしまいがちだ。

スマホは高額なのでバッテリーを交換して使い続けるユーザーもいるが、今流行の数千円で入手可能な完全ワイヤレスイヤホンなどは、バッテリの寿命が製品のライフサイクルになってしまっている。そんな状況を見ていると、果たして照明器具が一体型でよいのかどうか。そのあたりの明確な解はまだない。

ただLEDは4万時間で75%の明るさになって寿命だとされている。週休2日で1日12時間なら10年間以上もつ計算だ。器具の絶縁部品などの寿命を考えると、そのくらいで器具ごと交換するのが理想なのだそうだ。

今、オフィス等では50%程度、直管型が使われているというが、パナソニックでは、それを2030年頃にはすべて一体型に置き換えたいとしている。