バリュートレードがAVIOTブランドの左右独立型イヤホン「TE-D01b」を11月上旬に販売開始することを発表した。クラウドファウンディングのGREEN FUNDINGで資金募集をしていた製品で、クアルコムの最新チップQCC3026を搭載しているのが最たる特徴だ。このチップを搭載したイヤホンとしては日本初となるそうだ。

  • バリュートレードの自社ブランド「AVIOT」の新製品「TE-D01b」

質を求める日本人ならではのこだわり

今、左右独立型イヤホンは登場後約2年が経過、第一世代の製品が一通り普及し、すでにコモディティ的な存在になりつつある。ケーブルがないということが、ここまで便利で心地がいいものなのかを痛感する新しいカテゴリの製品群だ。

ところが音がいまひとつだったり、取説が付属しなかったり、使い方がよくわからないような粗悪な製品も出てきているとバリュートレードはいう。さらに、市場がグローバル化していく中で、どこの国で販売される製品でも同じ品質を保つことが求められているとも。日本人は質を重視するが、それにあらがうような製品も目立つという。だからこそ質を求める日本人ならではのこだわりを追及したというのが、この製品のコンセプトだ。

また、左右独立型のイヤホンは、電波を使うため、どうしても周辺の電波状況に左右される。今の日本においては防犯カメラなどが多数設置されている駅などが劣悪な電波環境で、2.4GHz付近の電波が安定した通信を阻害しているそうだ。スマホと左イヤホン、左イヤホンと右イヤホンと、複雑に電波が飛び交う左右独立型イヤホンでは、どうしても音の途切れが起こってしまい、せっかく音楽を聴いて心地よくなっている気分に大きなストレスを与えてしまう。

新チップは従来よりも大幅に受信感度が向上、また、アンテナ配置の見直しによる改善がほどこされ、まさに第二世代の左右独立型イヤホンの名にふさわしいできばえになっているはずだという。

  • TE-D01bのNavyカラー

親機子機を切り替えて電池長持ち

左右独立型イヤホンはスマホから片側イヤホンに左右の音声データを送り、それを受信したイヤホンがもう片側のイヤホンに音声データを送る仕組みで実現されている。左右どちらかが親となり、もう片方が子となる。

新チップでは、電波状況に応じて親子関係を切り替える。たとえばスマホが右のポケットに入っていれば、まずは、右のイヤホンにデータを送り、右のイヤホンが左のイヤホンに左のデータを送るのだが、立ち方、座り方、歩き方などでダイナミックに親側イヤホンを切り替えるという。

これによって送受信を引き受ける親イヤホンと、受信だけの子イヤホンのバッテリ消費量も同程度になって、子イヤホンにはバッテリがたくさん残っているのに、親イヤホンのバッテリ切れで使えなくなるという事態も回避できるのだそうだ。

こうして音の跡切れにくさを手に入れた上で、日本人のための音を追及したともいう。日本語の特徴として母音節が多様されることをあげ、それをきっちりと聞き取れるようにするための周波数特性を持たせたという。つまり、このイヤホンでは、日本語の曲がキレイに聞こえるという音作りが楽しめる。

今のイヤホン市場はアメリカと中国にあわせた音響設計がなされたものが多く、低域はドンドンと人工的、中高域の一部はシャープに聞こえるような音作りが一般的で、必ずしもそれは日本人が楽しめる音にはなっていないと同社は考えている。市場が日本の2倍から3倍ある以上は仕方がないことだとしながらも、この製品はできるだけ母音節がきれいに聞こえるように作ったという。

鍵は845、封印されている新機能も

しかもクアルコムの最新チップQCC3026にはもうひとつの機能が封印されている。それは左右独立型イヤホンに対して、左右の信号(ステレオ信号)を左イヤホン、右イヤホンそれぞれで受け取る機能だ。これならイヤホンは受信に専念できるため、飛躍的なバッテリの持ちが期待できる。また、左右の耳につけたイヤホン同士が、接続した端末と通信するために、電波が人間の頭をまたぐ必要がなく、接続の安定性はさらに向上する。スマホ側にSnapdragon 845以降を搭載しているAndroidスマートフォンだけで実現できる機能だ。

845搭載のスマホは最新機種にいくつかあるが、この機能を実装するかどうかはAndroidそのもの、そして、スマホのメーカーが選択することになる。

残念ながら、現時点で対応スマホは日本国内にはなく、この機能は封印されているといってもいい。だが、来年以降に発売されるスマホや、現行製品のアップデートなどで、この機能が有効になる可能性は高い。機能が封印されているというのはそういうことだ。そうすれば、今年買ったイヤホンが、そのままなのに新しく生まれ変わるというわけだ。各社はぜひ、この機能の実装を積極的に検討してほしいものだ。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)