7期連続でTop500の1位を独占したBlueGene/Lに替わって2008年6月のTop500で1位の座に就いたのはLos Alamos国立研究所の「Roadrunner」である。

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    Los Alamos国立研究所の「Roadrunner」 (出所:Top500 Webサイト)

Roadrunnerは、次の写真に写っている鳥で、砂漠に暮らしている。この写真もトカゲか何かを捕まえて咥えている状態が写っている。飛ぶこともできるようであるが、足が速く砂漠を疾走する鳥である。筆者は、全米で最も暑いと言われるデスバレーに行ったときに駐車場で、一度、野生のRoadrunnerが歩いているのを見たことがある。

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    図1 Roadrunner(出所:National Audubon Society)

ソニーは1994年12月に初代のPlayStation(PS)を発売したが、PlayStation 3(PS3:2006年11月発売の3世代目)を開発するにあたり、「Cell Broadband Engine(Cell BE)」という野心的なチップを開発した。このエンジンチップを設計したのは、ソニー、東芝、IBMのエンジニアの混成チームである。

このCell BEプロセサは8個のSynergistic Processing Elements(SPE)と呼ぶ演算ユニットを持っている。SPEは32bitの単精度の浮動小数点演算を行う4要素のベクトル演算器と、256KBのローカルメモリとDMAエンジンを備えていた。そのため、32bitの単精度浮動小数点演算では100GFlopsクラスの高い演算性能を持ち、それを支えるために高速DRAMテクノロジを開発していたRAMBUS社のFlexIOプロセサバス・テクノロジとXDRメモリテクノロジをライセンスして使用した。XDR DRAMを使えば100GB/sのメモリバンド幅が実現できると言われ、当時の他のDRAMテクノロジの少なくとも3~4倍かそれ以上の性能が得られるということであった。

そして、8個のSPEはチップインタコネクト(EIB)に接続され、EIB経由でLinuxOSを動かすPowerPCのPPE、メモリ、PCIeに接続されている。

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    図2 PlayStation 3のエンジンとして開発されたCell Broadband Engine。ソニー、東芝、IBMのエンジニアで開発された。32bitの単精度浮動小数点演算では、高い性能を持っているが倍精度の浮動小数点演算の性能は低く、Roadrunnerスパコン用には強化が必要だった

IBMがBlueGene/Lの次のスパコンを開発するに当たって、このCell BEをベースに使った。

(次回は2月12日の掲載予定です)