NECのSX-1とSX-2
NECは1983年4月に第2世代のスパコンである「SX-1」と「SX-2」を発表した。なお、SX-2が大阪大学に出荷されたのは1985年で、これがSX-1/2シリーズスパコンとしての最初の出荷である。
SX-2は4本のベクタパイプラインを持ち、各パイプラインは乗算と加算を連続して実行できる。ベクタパイプラインのクロックは6nsであり、ピーク演算性能は1.33GFlopsとなるが、公称では1.3GFlopsと言っている。SX-2の出荷は、S-810の出荷から2年程度遅く、そのため、より高密度、より高速のCML LSIを使うことができ、また、水冷で配線遅延を減らしたりしたことがSX-2の性能に効いている。
なお、SX-1はベクタパイプラインが2本、クロックは7nsで、ピーク演算性能は570MFlopsとなっていた。
SX-1/2は1000gate、遅延時間250psのCML(Current Mode Logic)ロジックLSIと1Kbit、アクセス時間3.5nsのメモリLSIを使い、6nsのクロックサイクルを実現していた。
富士通のVP100/200や日立のS-810/820は空冷のマシンであったが、高発熱のCML LSIを高密度に詰め込んだSX-1/2は空冷では冷やしきれないので水冷方式を採用し、水冷のコールドプレートで冷却を行っていた。
また、SX-1/2のパッケージは36個のLSIを10cm角の多層セラミック配線基板に搭載していた。
日本の第2世代スパコンの性能をLivermoreループとLinpackで測定した結果をまとめたものがHockneyとJesshopeの共著のPARALLEL COMPUTERS 2(ISBN 0-85274-811-6)に掲載されている。
日本の第2世代スパコンの性能をまとめてみてわかるのは、例えばLinpackの結果をみても、実際に得られるFlops性能とピーク性能には大きな乖離がある。これはスパコンのマイクロアーキテクチャと問題の相性もあるが、ハードウェアが同じであってもプログラムの最適化によって、性能が大きく変わるからである。
なお、この結果は30年あまり昔のものであり、最近ではスパコンのLinpack性能は、ピーク演算性能の50%~90%程度の性能が得られるようになってきている。
(次回は7月19日の掲載予定です)