MacでもWindowsでもスマートフォンでもよく見かける「PDF」。読むばかりで作ったことはない、という人のほうが多いかもしれません。しかし、MacとPDFの相性はバツグン。その少し上級な使いこなし術を紹介します。

PDFを使う理由

知人からワープロ文書が送られてきたけれど、Macに付属の「Pages」で開いたら画像の位置がおかしいし、見出しに奇妙な記号が使われている……訊ねても問題ないと言われるし、Macの設定がおかしいの? などという質問を受けることがあります。そういった場合、文書を作成した側が文書を「PDF」に書き出せば、作成元アプリ(バージョン)の違いやパソコン/スマートフォンに入っているフォントの違いによる"作成者の意図しない表示"を防げます。

PDF(Portable Document Format)は、ディスプレイで見たままの情報をファイル化する文書フォーマットです。Adobe Acrobat DCなどのPDFビューアアプリを用意すれば、どのようなパソコン/スマートフォンを利用していても、作成時のデザインを崩すことなく再現できます。先ほどの質問者も、文書をPDFに書き出したものを送ってもらえば、問題は発生しなかったことでしょう。

いまやPDFの規格は国際標準化機構(ISO)に認定され、多くの国々で公文書にも採用されています。PDF編集アプリを利用すればテキストや画像の追記も可能なため、企業のグループワークでも当たり前のように利用されています。

そしてこのPDF、実はMacとの相性バツグンです。「Mac OS X」として登場して以来、システム(macOS)のグラフィックエンジン「Quartz(クオーツ)」にはPDFの技術が取り入れられ、画面描画や印刷に利用されてきました。標準装備の画像アプリ「プレビュー」はPDF編集機能を備えるなど、PDFに関するかなりの処理がアプリの追加購入なしに可能なところもポイントです。

  • PDFは閲覧するだけでなく、文字や図形を書き足すこともできます

  • Macで書き出したPDFの情報を「プレビュー」で確認すると、システムの機能(Quartz PDFContext)が使用されたことがわかります

  • 目的地の地図を書き出す

詳細かつ正確な地図を表示できる「マップ」アプリも、地図をPDFとして出力できます。自宅への道順をひとに教えたいとき、自宅付近の地図をPDFとして出力し、それを「プレビュー」アプリを使い矢印など書き足せば、立派な道案内図になります。

なお、マップのスクリーンショットを撮影し画像編集ソフトで加工する方法もありますが、それはあまり賢い方法ではありません。「マップ」アプリでPDFに書き出すと、そのときの縮尺率に応じてスケールバー(地図上の距離のめやすとなる物差し)が表示されるため、わかりやすさが増します。具体的な距離が添えられていれば、目的地まで徒歩何分で到着するかは一目瞭然でしょう。

  • 表示した「マップ」になにか書き足したい! という場合はPDFに出力します

  • PDFで出力すると、左下にスケールバーが追加されます

  • 「PDFとして書き出す」と「印刷ダイアログ」の違い

もともとmacOSのPDF作成機能は、「紙に出力(印刷)する代わりにPDFとして出力する」という位置付けだったため、印刷ダイアログに一種のオプションとして用意されていました。しかし、OS X Mavericks(v10.9)からは、アプリのファイルメニューに用意された「PDFとして書き出す」を選択すると、印刷ダイアログを使わずPDFを作成できます。急いでPDFを作成したいときには便利な機能といえるでしょう。

両者の違いは、用紙の余白など設定に差があることを除けばほとんどありません。ただし、印刷ダイアログから出力するときには、タイトルや作成者などの情報をくわえたり、PDFを開くときにパスワードを要求する設定にしたりといった+αの機能を利用できます。「カレンダー」のように「PDFとして書き出す」メニューが用意されていないアプリでも、印刷ダイアログさえ表示できればPDF出力することは可能です。

  • Safariやメールなど、多くのアプリのファイルメニューに「PDFとして書き出す」が用意されています

  • 「カレンダー」のように「PDFとして書き出す」メニューが用意されていないアプリでも、印刷ダイアログからPDF出力することは可能です

  • 読めるけどコピーできないPDF

前述したとおり、現在のmacOSには大きく2とおりのPDF出力方法があります。そのうち印刷ダイアログから出力する方法は、「開くときにパスワードを要求するPDF」や「印刷するときにパスワードを要求するPDF」を作成できます。「PDFとして書き出す」ではこのような設定ができないため、一定の利用制限をくわえたPDFを作成する場合は印刷ダイアログから作業しましょう。

なかでもユニークな機能は、「コピー禁止」です。出力時のセキュリティオプションとして「テキストやイメージなどのコンテンツをコピーするときにパスワードを要求」を有効にすると、そのPDFはどのアプリで開こうとも(コピーを禁止した)セキュリティ権限を変更しないかぎり、文字や画像をコピーして他のアプリへペーストすることはできなくなります。

パスワードによる保護は、PDFビューアとしてmacOSに付属の「プレビュー」を利用する場合、インスペクタの「暗号」タブにパスワードを入力すると解除できます。しかし、このようにセキュリティ権限変更昨日を備えたPDFビューアは意外に少なく、Mac/Windowsを問わず利用者が多いAdobe Acrobat Reader DCでも対応していません。この場合、単なるコピー禁止機能となるので注意しましょう。

  • テキストや画像のコピーを禁じたPDFを作成できます

  • 「プレビュー」でPDFを開けば、インスペクタの「暗号」タブにパスワードを入力すればコピー禁止を解除できます