米NVIDIAは10月8日(現地時間)、アメリカ・サンフランシスコで世界中からメディアを集めた独自イベント、その名も「Editor's Day」を開催し、RTX Sparkに関する製品発表会を行いました。RTX Sparkとは要するにNVIDIA GB10、いわゆるDGX SparkのノートPC向けモデルとも説明できる製品で、グローバルでは10月16日から各社パートナー経由で搭載ノートPCの発売が予定されています。

  • NVIDIA RTX Spark搭載ノートPCを眺めにサンフランシスコまで行ってきた。64GBモデルの実機も体験

    NVIDIA RTX Spark搭載ノートPCを眺めにサンフランシスコまで行ってきた。64GBモデルの実機も体験

今回サンフランシスコでの現地取材に招待されたので、マイナビニュースも参加してきました。忙しい方向けにまとめておくと、かつてWindowsノートPCに存在し得なかった大容量ユニファイドメモリによってローカルAIの動作がモバイル環境でも現実的に。AI一辺倒かと思いきやゲームへの対応にも本腰が入れられており、RTX Sparkをゲーム、クリエイティブ制作、ローカルAIに対応する統合プラットフォームとして訴求していくことが強調されていました。

取材協力:NVIDIA

6,144 CUDAコアのBlackwell GPU、64GB / 128GBメモリ搭載のRTX Spark

今回NVIDIAが満を持して送り出すRTX Sparkについておさらいしておくと、RTX Sparkは20コアのNVIDIA Grace CPUと、6,144基のCUDAコアを備えたBlackwell GPUを組み合わせた統合プロセッサです。

CPUとGPUはNVLink-C2Cによる接続で双方向に600GB/sの帯域を備え、共通のメモリにアクセスするユニファイドメモリ方式を採用したことで、大容量メモリをCPUとGPUの両方で生かすことができる点も特徴。CPUがArmベースなので、x86版しかないアプリケーションはWindowsのPrismエミュレーションを経由して動作します。

  • RTX Sparkチップ。パッケージ内に20コアのCPUと6,144個のCUDAコアが詰め込まれている

    RTX Sparkチップ。パッケージ内に20コアのCPUと6,144個のCUDAコアが詰め込まれている

  • GPU側タイルの模式図。第5世代Tensorコアを統合してNVFP4精度で1PFLOPSの推論性能を実現

    GPU側タイルの模式図。第5世代Tensorコアを統合してNVFP4精度で1PFLOPSの推論性能を実現

  • NVLink-C2Cを挟んだ反対側にCPUとメモリインタフェースを搭載。CPUは10個の高性能コア「Arm Cortex-X925」と10個の高効率コア「Cortex-A725」を組み合わせています

    NVLink-C2Cを挟んだ反対側にCPUとメモリインタフェースを搭載。CPUは10個の高性能コア「Arm Cortex-X925」と10個の高効率コア「Cortex-A725」を組み合わせています

  • 同世代であるBlackwell GPUをディスクリート搭載する製品との比較でも圧倒的な高効率。これによってノートPCへの搭載を実現し、バッテリー動作するデバイスとして完成しています

    同世代であるBlackwell GPUをディスクリート搭載する製品との比較でも圧倒的な高効率。これによってノートPCへの搭載を実現し、バッテリー動作するデバイスとして完成しています

  • Windows搭載デバイスとしてはかつてない性能に

    Windows搭載デバイスとしてはかつてない性能に

  • Hermes Agentでは125BパラメータものMoEモデルをローカルで利用可能

    Hermes Agentでは125BパラメータものMoEモデルをローカルで利用可能

  • RTX Spark向けNVIDIA公式モデルとして「Nemotron 3.5 Bolt 74B」を10月15日からリリースします

    RTX Spark向けNVIDIA公式モデルとして「Nemotron 3.5 Bolt 74B」を10月15日からリリースします

CPUは高性能で高効率、GPUは大規模かつ高性能で、メモリは大容量かつ省電力。発表会を通してNVIDIAはRTX SparkによってArm版Windows PCの用途を拡大し、さらにローカルAIエージェントを一般的なPCの重要なワークロードとして位置付けようとしていると印象に残ったプレゼンテーションでした。

NVIDIA Editor's Day概観。AIだけじゃない、ゲームもしっかり遊べる

AIに関して重点的に解説されたEditor's Dayでしたが、それだけではなかった点が個人的にはやや意外。ゲームやクリエイティブ用途についても、NVIDIAが積極的に取り組む姿勢を示していました。先行するDGX SparkはLinux環境の推論デバイスだったのでほぼゲームについては触れられていませんでしたが、Windowsを採用するにあたって本腰でのゲーム対応が強調されています。

特に筆者がゲームへのコミットメントとして大したものだと感じたのは、各種競技ゲームタイトルのRTX Spark対応が掲げられた点です。ゲームといえば昨今多様化するプラットフォームにあわせてクロスプラットフォーム展開されるものも増えてきており、OSやCPUのアーキテクチャを跨いで対応するゲームも少なくありません。

そんなゲームの中でも、主にWindows x86環境だけを志向して提供されてきたのがeスポーツ関連タイトルです。これはハードウェアに強く依存して低レベルなレイヤーで動作するアンチチートシステムが必ずセットで必要になるためで、アンチチートが対応しないためにLinuxやArmデバイスでの展開はほぼ、あるいはまったく行われてきませんでした。

にもかかわらず今回のNVIDIA RTX Sparkの投入にあたって、各社主要タイトルに導入されているアンチチートシステムがRTX Spark環境への対応について前向きな考えを表明しています。NVIDIAがRTX Sparkでゲームを遊べるようにするぞ、という強い意思でゲーム会社に働きかけたことで、従来のWindows on Arm環境でゲームを遊ぶ際に存在していた大きなハードルが着実に取り払われつつあると感じました。

  • 各種eスポーツタイトルがRTX Sparkで遊べるようになると主張

    各種eスポーツタイトルがRTX Sparkで遊べるようになると主張

  • 一方、NVIDIAが初日からのRTX Spark対応を掲げるゲームタイトル。画像はNVIDIA公式ブログから

    一方、NVIDIAが初日からのRTX Spark対応を掲げるゲームタイトル。画像はNVIDIA公式ブログから

ちなみに、発表されたあらゆるタイトルが初日から遊べるわけではない模様。主要なものではEA Javelin Anticheat採用ゲームは2027年初頭、『PUBG: BATTLEGROUNDS』は2027年上半期対応予定、Riot Vanguard採用ゲームは今後対応予定との発表にとどまっています。初日から遊べそうなタイトルはNVIDIA公式ブログにまとめられています(外部サイト)。

RTX Spark実機に触る。64GBでできることが多いだけに、欲しくなる128GB

今回発表に先駆けて、NVIDIA RTX Sparkを搭載するクリエイター向けノートPC「ASUS ProArt P16(H7607BA)」に触れることができました。RTX Spark N1Xの上位構成である20コアCPU/6,144 CUDAコアGPU仕様ですが、メモリは128GBではなく64GBを搭載。16型有機EL(最大3,840×2,400ドット、120Hz、タッチ対応)パネルを搭載し、アルミニウム製の本体は厚さ12.9~15.9mm、約1.77kgと性能にしてみれば薄型・軽量です。

  • IntelもAMDも搭載していません。シールはNVIDIAのみ

    IntelもAMDも搭載していません。シールはNVIDIAのみ

  • 底面の吸気エリアが巨大

    底面の吸気エリアが巨大

  • 付属のUSB-C ACアダプタは140Wでコンパクト

    付属のUSB-C ACアダプタは140Wでコンパクト

詳細な性能評価は今後行うとして、レビュワーズガイドを眺めながらゲームやAIの性能をかんたんに計測してみました。ユニファイドメモリ仕様のPCを扱うのは今回が初めてだったこともあってよくわからず、AIを使うにあたってASUSの独自ユーティリティから明示的に48GBをGPU側に割り当てました。電源はPerformanceモードに設定して実施しています。

  • 7-zip 26.03 Arm版

    7-zip 26.03 Arm版

  • 3DMark Arm

    3DMark Arm

  • llama.cpp ARM64 CUDA/Q4_K_M/512 トークン生成

    llama.cpp ARM64 CUDA/Q4_K_M/512 トークン生成

  • llama.cpp ARM64 CUDA / 短文プロンプト (46~67 tokens)

    llama.cpp ARM64 CUDA / 短文プロンプト (46~67 tokens)

Arm用llama.cppとCUDA 13.4を組み合わせて70B~80B級のモデルをローカルに読み込み、CUDAで実際に推論を実行できました。Dense型の3モデルでは6.47~15.28 tokens/sだった一方、MoE型のQwen3-Coder-Nextでは76.54 tokens/sを記録しました。大規模なローカルAIでもモデルによっては実用的なバランスであることが確認できたと思います。

ただ試用にあたって用いるモデルを考える中で、やはり64GBモデルでは多少の制約感を感じざるを得ませんでした。CPUにもいくらかメモリが必要なことを踏まえると規格外に巨大なモデルを読み込めるわけではなく、KVキャッシュやコンテキスト長によってはさらに余裕を見る必要があります。

もちろん今回試した64GBモデルでも70B~80B級のLLMをローカルで実行できる様子を見られましたが、Q4量子化版でも約76.5GBに達する「Qwen3.5-122B-A10B」のようなモデルは使えません。どこまでも大きい容量が欲しくなるというローカルAI道ではあるような気はしますが、128GBで使えるひと回り大きなモデルあたりなら、もうふた回り大きな満足感が得られそうに思います。