シャープは9月1日、都内で記者説明会を開催し、家電と連携した統合AIサービス「NIAH(ニア)」を発表した。スマートフォン向けアプリを通じて、エアコンや洗濯機、冷蔵庫、調理家電、空気清浄機など、さまざまな家電と連携し、利用状況に応じた提案を行うほか、家電の活用も支援するという。

シャープ、AIサービス事業を本格展開 - 家電データ活用を加速

最初に登壇した、シャープ 常務執行役員 Co-COO 兼 スマートライフビジネスグループ長の菅原靖文氏は「当社では2008年から家電にココロをプラスし、愛着をもたらす取り組みを推進し、2015年からAIoT事業を本格的にスタートした。2019年にスマートホームアプリケーション『COCORO HOME』をリリースし、他社機器・サービスとの連携を開始したほか、2024年にはAIoT家電の累計出荷台数が1000万台を突破、会員も1000万に達している。また、社会実装を目指して地方自治体との連携も進めている」と述べた。

  • シャープ 常務執行役員 Co-COO 兼 スマートライフビジネスグループ長の菅原靖文氏

    シャープ 常務執行役員 Co-COO 兼 スマートライフビジネスグループ長の菅原靖文氏

こうした実績を背景に2025年以降、同社はスマートライフAIサービスとして従来は困難だった機器間連携を開始し、個々の家電に特化した生成AI対応製品の投入や、クラウドに蓄積された顧客データを家電横断で融合し、分析を高度化させている。

菅原氏は「生成AIでは、操作方法などコールセンターへの問合せが30%減少したことに加え、レシピ検索といった調理関連のダウンロード数は非利用者の2.5倍に増加した。さらに、データ基盤を活用してオーブン・電子レンジ『ヘルシオ』の旧機種ユーザー向けの新機能の提供で6000人以上が利用した。加えて、コミュニケーションでは雑談機能でユーザーとの距離が縮まり、AIサービスの継続利用が促進されている」と、その効果を示した。

こうした検証結果をふまえ、同社ではAIサービス事業の本格スタートを決定。同氏は「これまでは機器単位のサービスや利用データに応じたパーソナライズを中心とし、製品本体への愛着、リピーターを獲得していた。現在、家電出荷台数の約4割にIoTを搭載し、テレビでは約8割に達し、IoTが市民権を得るスタートラインに到達した。AIoTは他社競争環境で勝ち残るための“勝ち筋”であると認識している。今後は製品横断のサービスとパーソナライズを進化させ、当社への愛着、アップセルとクロスセルを実現し、テレビやスマートフォンなどグループのシナジーを発揮していく」と力を込めた。

  • シャープではAIサービス事業の本格展開を決定した

    シャープではAIサービス事業の本格展開を決定した

統合AIサービス「NIAH」とは?開発背景と狙い

続いて、シャープ スマートライフビジネスグループ Smart Life事業統轄部 統轄部長の長沢忠郎氏が9月30日に提供を開始する、統合AIサービスのNIAHの説明に立った。

NIAHを開発した背景について、長沢氏は「ライフスタイルの多様化で家電が進化し、調理家電には2000種類以上のレシピ、洗濯機には60種類以上のコースを搭載するなど機能を拡充してきた一方で、ユーザーにその価値を十分伝えきれないという課題があった。そのため、豊富な機能・価値を分かりやすく届けることが家電業界の新たなテーマとなっている。家電が多機能・高機能化するほど使い方が分かりにくくなり、かえってユーザーに負担をかけている。そのため、AI技術を活用し、多様なニーズへの対応と、分かりやすいUIの両立を図ることを目指した」と説く。

  • シャープ スマートライフビジネスグループ Smart Life事業統轄部 統轄部長の長沢忠郎氏

    シャープ スマートライフビジネスグループ Smart Life事業統轄部 統轄部長の長沢忠郎氏

これらを両立させるためには、暮らしを深く理解することと、生成AI技術を活用した対話型UIが必要な要素だと長沢氏は指摘する。家電・サービスと連携してユーザーの同意もと、家電の使われ方や対話から暮らしを理解すると同時に、機能名を覚えずとも言葉で意図を伝えてAIが理解し、適切な機能・操作へ誘導することが必要とのことだ。

NIAHが実現するAIによる家電連携、暮らしに合わせた提案を提供

NIAHは複数の家電やサービスと連携し、ユーザーの暮らしを理解し、家事や家電に関する質問や相談に応じることに加え、必要に応じて家電の設定までサポート。また、日々の予定や家事の段取りもタスクとして一元管理し、必要なタイミングで通知することで、家事負担の軽減にも貢献するという。

  • 「NIAH」の概要

    「NIAH」の概要

たとえば「ダウンジャケットを洗える?」と尋ねると、一般的な知識とともに、所有している洗濯機の機種・搭載機能をふまえて、適切なコースの選択から設定までを案内する。アプリを通じて、ユーザーとの対話を重ねながら、暮らしや習慣を理解し、ユーザーと家電・サービスをつなぐ、家族のような存在になることを目指すとのこと。

  • 「NIAH」のUI。家電や家事に関する困りごとと解決するという

    「NIAH」のUI。家電や家事に関する困りごとと解決するという

また、家電・サービス横断の一貫した提案では、ある家電で得た情報を他の家電と連携もできる。一例として、洗濯機で赤ちゃんの衣類を優しく洗うコースを提案し、調理家電では離乳食の余り食材で作れる大人向けレシピを提案。また、エアコンで赤ちゃんに風が直接当たらない運転モードを提案し、冷蔵庫で余り食材の保存方法の提案や、テレビでは子育てに役立つコンテンツを提案することなどが可能だという。これにより家電単体では実現できない横断的な提案が可能になることで、暮らしに寄り添う次のスマートライフを目指す方針だ。

長沢氏は「当社の家電に限らず、他社の家電、住宅、エネルギー、ヘルスケア、介護、防災など、多様な機器・サービスと連携可能なオープンなAIoTプラットフォームを構築していく。各社の優れた技術・サービスをつなぎ、暮らし全体の価値を共創し、その中心にNIAHを位置づける」と展望を示した。

  • シャープでは、オープンなAIoTプラットフォームを構築していく

    シャープでは、オープンなAIoTプラットフォームを構築していく

NIAH対応の空気清浄機を発売

第1弾として、NIAHのサービス開始時は、ヘルシオなどの調理家電、洗濯機、エアコン、空気清浄機、冷蔵庫の6カテゴリー・52機種に対応する。9月1日にはNIAHに対応したプラズマクラスター加湿空気清浄機2機種「KI-WX100/WX75」を発売。

  • プラズマクラスター加湿空気清浄機2機種「KI-WX100/WX75」の概要

    プラズマクラスター加湿空気清浄機2機種「KI-WX100/WX75」の概要

シャープ Smart Appliances & Solutions事業本部 プラズマクラスター・ヘルスケア事業部 国内PCI商品企画部 部長の花房浩章氏は「製品面の課題では購入後の不満として空気は見えにくく集じん効果が伝わりづらいことがトップに挙げられ、使用を休止するユーザーもいる。一方、市場の課題はコアターゲットである育児世帯が減少しているが、ペット(犬・猫)の飼育頭数は約1600万頭と堅調。効果の実感と子供からペットまで提案を拡大していくことが重要だ」との認識を示した。

  • シャープ Smart Appliances & Solutions事業本部 プラズマクラスター・ヘルスケア事業部 国内PCI商品企画部 部長の花房浩章氏

    シャープ Smart Appliances & Solutions事業本部 プラズマクラスター・ヘルスケア事業部 国内PCI商品企画部 部長の花房浩章氏

新機種ではNIAHが花粉やニオイ、ペットの飼育状況など、あらかじめ設定した暮らしの関心ごとや、空気清浄機の運転状況、ユーザーとの対話内容などをもとに、ユーザーの暮らしを理解。その内容に応じて、空気ケアのポイントや空気清浄機の働きを伝えるメッセージを生成し、1日3回、本体から音声で知らせる。

また、高い空気清浄性能を備え、「AI AUTO」モードでは室内の粒子数に応じて風量を細かく制御し、クリーンルーム規格「Class8レベル」の空気環境を目指して運転。

  • 生成AIを活用し、空気情報をフィードバックする

    生成AIを活用し、空気情報をフィードバックする

さらに「nanoHDフィルター」が0.003μmの微小粒子を1回の通過で99.9%以上捕集し、本体前面には「AIモニター」を搭載し、室内にただよう粒子数の変化を視覚的に確認できる。そのほか、「プラズマクラスターNEXT」を搭載し、浮遊イヌ・ネコ由来アレルギー物質の作用抑制効果を新たに実証した。電源コードには、苦み成分を配合し、ペットによる噛みつきなどのいたずらを抑制している。

今後の展望

NIAHは会話回数に応じて「フリー(30回/月)」の無料プラン、「ノーマル(300回/月)」「プレミアム(600回/月)」「ゴールド(1200回/月)」の3つの有料プランを用意した。

対象家電を所有しているユーザー向けに、サービス利用開始日から6カ月間の期間で「ノーマル」プランの無料トライアルも提供する。対応機種はシャープのサポートページで確認できる。

  • NIAHの料金プラン

    NIAHの料金プラン

利用方法はCOCORO HOMEアプリのNIAHボタンを押下してインストールし、起動すればSSO(シングルサインオン)で自動的にログインする。なお、COCORO HOMEのトーク機能は9月30日、ヘルシオに搭載されている生成AIを活用した音声対話サービス「クックトーク」は来年に統合をそれぞれ予定している。

最後に長沢氏は「日本企業の品質・ノウハウといった蓄積を、生成AIを通じて分かりやすく届けていく。NIAHをきっかけに『日本のものづくりが生成AIで暮らしの主役になる』ことが最終目標だ」と将来を見据えていた。