ダイヤルに使われる立体模様「型打ち」
デザイナーは松本卓也氏。
松本氏「“型打ち”と呼ばれる、ダイヤルの表面に細かい凹凸模様を加工する技術。それにこだわった作品です。
ダイヤルの素材は真鍮で、これに模様型をプレスで強く押し付けて、模様を転写しています。
今回、肉眼ではとらえきれない型打ちの限界に挑戦しています。どうせなら模様のテーマも凝ったものを考えたいなと思いまして、時間の流れをテーマにした模様を採用しました。四季の移ろいに植物をあしらって、ダイヤル全体で時間の流れを感じていただける作品に仕上げました」
松本氏「ダイヤルが大きく4つのブロックに分かれていて、右上から春、夏、秋、冬。春は、小川のきらめきと水の揺らぎを表現した波模様、夏は太陽の強い日差し、降り注ぐ日光を放射状のパターンで表現しています」
松本氏「秋は夜空に輝く星をイメージして、冬は雪の結晶で模様を作っています。また、12カ所のインデックスは、時の流れの中で成長していく花をイメージしていて、花びらが数字になっているのもデザインの特徴です。数字は約百年前のセイコーの腕時計に使われていた書体を新しくアレンジして、再構成しました」
松本氏「会場ではルーペをご用意しているので、大きく見ていただきたいのですが、凹凸の高低差は0.07ミリしかありません。非常に細かい立体的な造形によって、光の当たり方で陰影や反射が変化して、ダイヤル全体の表情が変化します。
この細かなダイヤルをぜひ拡大して見ていただきたいという思いも込めて、時針はルーペの形。時計のケースはセイコーで初めて腕時計として発売されたローレルのデザインをベースにして、クラシックな時計の雰囲気を演出しました」
伝統のムーブメントに新しい操作感「手巻き」
デザイナーは伊東絢人氏。
伊東氏「手巻き操作に注目した腕時計です。機械式時計の主流は断然自動巻き時計でして、日々歩いたりとか、手を動かすとか、そういう中で勝手に回転錘が回って、ネジが巻かれていきます。
でも、その機能が付いてない手巻き時計は、自分の手で巻かないと動いてもくれない。だからこそ愛着が湧く。物を所有している喜び、楽しさみたいなのがあると思います。
一番の特徴は、回転ベゼルとりゅうずが噛み合っている構造です。りゅうずを回して動くという仕組みは一般的な手巻き時計と変わりませんが、操作としては、回転ベゼルを回すと、りゅうずが連動して巻かれるという、ダイナミックな操作になるところです。なお、りゅうずを引くことで、時刻合わせも同様に、回転ベズルを回して、操作できます」
伊東氏「現在組み込んでいるムーブメントは最大41時間、つまり2日間放置していると止まってしまいます。そこで、巻くという行為をより愛着が湧く形で提供しようと思って作っています」
時計のダイヤルのほぼ半分がパワーリザーブインジケーター。この作品は手巻きにこだわりすぎた時計なので、いっそここまでやってみました。コンセプトを強調するためのデザインですね」
伊東氏「メインダイヤルの一部がパワーリザーブインジケーターというデザイン自体は、実はセイコー量産品にはあります。今もプレザージュなど一部のモデルでは使われているのですが、わざわざ針を偏心させてまでパワーリザーブの針を一番長くするという構造は初めて。
パワーリザーブ表示を大きく示すことは、“巻かなきゃ”という意識を高めるためでもあります。巻いてくれなきゃ止まっちゃうよ、という時計からのアピールです」








