Samsungから、最新のハイエンドスマートフォン「Galaxy S26シリーズ」が発売された。今回、初めてグローバルの発売と同時という「一次販売国」になったのも大きな特徴だが、Galaxy S26にはどんな特徴があるのか。サムスン電子社長兼COOであるチェ・ウォジュン(Woo-Joon Choi)氏が来日し、報道関係者のインタビューに応じた。

  • サムスン電子社長兼COOのWoo-Joon Choi氏

    サムスン電子社長兼COOのWoo-Joon Choi氏

5年の開発が結実したプライバシーディスプレイ、パネルは外販する方針

Choi氏はまず、グローバルでの予約状況について触れた。すでに、前回のGalaxy S25シリーズよりも好調で、特に最上位のGalaxy S26 Ultraが予約数の7割以上を占めていて、全体を牽引しているという。日本でも、Ultraの予約比率が前回よりも高まっているそうだ。

日本に関しては、「多くのユーザーが最新技術を搭載した製品を誰よりも早く使いたいというニーズがある」(Choi氏)ことから、それに応えるために一次販売国に含めたという。それでありながら、おサイフケータイやデジタル庁のスマホ用電子証明書など、日本独自の仕様に対応した点はさすがといえる。

間に合わなかった機能としては、Androidスマートフォン同士のファイル交換の仕組みである「QuickShare」と、Apple製品同士の「AirDrop」の相互交換への対応が挙げられそうだ。すでにPixelとiPhone間でのファイル交換はできるが、S26シリーズではアップデートでこれに対応する予定だという。

そのGalaxy S26シリーズのハードウェア面での最大の特徴は、世界初のプライバシーディスプレイを搭載した点だろう。「いつでもどこでも、安心して使ってもらえるようにした」とChoi氏はアピールする。

  • Choi氏によるプライバシーディスプレイのデモ。この角度だと、まだ通知の内容が見えている

    Choi氏によるプライバシーディスプレイのデモ。この角度だと、まだ通知の内容が見えている

  • この角度だと通知が見えなくなった。このように「通知だけ」「特定のアプリだけ」といった設定もできるのが、プライバシーディスプレイの特徴だ

    この角度だと通知が見えなくなった。このように「通知だけ」「特定のアプリだけ」といった設定もできるのが、プライバシーディスプレイの特徴だ

製造自体はグループのSamsung Displayが担当しているが、実はもともとのきっかけはChoi氏が率いるモバイル事業部のアイデアだったという。

モバイル事業部で消費者のペインポイントをチェックしている中で生まれたアイデアで、そこから現実に実現できるかどうかを研究していった。結果として、十分に実現可能だと判断して、開発パートナーとともに正式なプロジェクトとして稼働させたとChoi氏は話す。

その後も、プライバシーディスプレイをオフにしたときに、既存のディスプレイより表示が劣ることがないように、さまざまな課題を乗り越えていった。また、通知領域だけ、任意のアプリだけといった使い勝手を実現するために、ソフトウェア構造やアルゴリズムの開発にも注力して実現したという。

「プライバシーディスプレイのアイデアが最初に登場してから、今回の商用化に至るまで、5年ほどの時間がかかった」とChoi氏は振り返る。

ハードウェア自体はSamsung Displayが外販もする予定で、Choi氏もこうしたディスプレイが多くの消費者に対して提供されることが業界としてはよい方向だと指摘する。Choi氏は差別化の観点から、消費者からのフィードバックをモニタリングし、さらなる技術の進展に向けて取り組んでいく方針を示している。

ちなみに今後、他の端末への展開については「ユーザーの反応を見て普及を検討する」とした。

エージェンティックAIフォンからAI OSへ

もう1つの大きな特徴として挙げられるのが、Galaxy S26シリーズが「エージェンティックAIフォン」であるという点。米国サンフランシスコで開催された発表会「Galaxy Unpacked」でも、Choi氏は「エージェンティックAIフォン」としてGalaxy S26シリーズを紹介していた。

  • Galaxy Unpackedにおいて「エージェンティックAIフォン」を紹介するChoi氏

    Galaxy Unpackedにおいて「エージェンティックAIフォン」を紹介するChoi氏

Galaxy S26は、AIに関する複数の新機能が搭載されているが、これによってユーザーの利便性向上だけでなく、「誰でも手軽にAIの恩恵が受けられるようなエージェンティックAIフォンの方向性を示した」とChoi氏は話す。

Samsungのグローバルの調査の中で、日本のモバイルユーザーの71%が「AIには実用する価値がある」と回答しているが、97%は「AIが難しくて十分に活用できないかもしれない」と答えたという。

AIに関して期待は高まっているものの、実際にAIを使いやすいという体験にまでは至っていないということで、「そのギャップを埋めることを重要視している」とChoi氏は言う。

「AIを一部のための特権ではなく、誰もが毎日使う基本インフラとするために、3つの基準を設けている」とChoi氏。

  • Galaxy S26シリーズとGalaxy Buds4

    Galaxy S26シリーズとGalaxy Buds4

1つ目が「リーチ」で、これは「AIの大衆化」を指す。Galaxy S24シリーズのころ、同社は「2024年末までに世界2億台のデバイスにAIを搭載する」としていたが、これを達成。続いてS25シリーズが登場し、2025年末までに4億台のSamsungデバイスにAIを搭載して出荷した。2026年末は、これをさらに2倍に引き上げることが目標だという。

そのためにS26シリーズだけでなく、今後の低価格でバイスのAシリーズを含めたSamsungデバイスでAIに対応して、多くのユーザーがAIに手が届くようにする考えだ。

2つ目が「オープンネス」で、AIが特定の誰かにしか使いこなせない技術ではなく、リテラシーやITスキルと関係なく日常の中で活用できるようにすべき、というのがChoi氏の考え。ユーザーがやりたいことに対して、1つずつアプリを探してAIの使い方を学ぶのではなく、影からAIがサポートしてより日常を暮らしやすくする、というのが目標だとChoi氏は話す。

これを実現するエージェンティックAIが、スマートフォンの中で自然で一貫した連携ができるように、Googleと共同開発したのがAI OSだという。「近いうちに紹介する予定」とChoi氏は言う。これによって、OSレベルでユーザーの文脈をスマートフォンが理解し、連携して動作するエージェンティックAIの基盤を作り上げることを目指す。

そして3つ目が「コンフィデンス」で、AIをインフラにするためには信頼できる性能に加えて、プライバシーとセキュリティが基盤にならなければならないとChoi氏は強調する。ユーザーが安心して使えるように、端末のデータ保護、データ処理におけるユーザーの主導権を強化していくとしている。

Googleとの協業は、Galaxy S24から強化されているが、「最も中核となるポイントはAI」とChoi氏。当初は1つのサービス、1つのアプリといった形の協力だったが、AIフォンへのシフトの中で、プラットフォームやシステムレベルでAIの統合が重要になると考えて協業を深化させたという。

Choi氏は、AIの重要な進化の方向性として、「個人化」と「オートメーション」を挙げる。OSレベルで個人化のためのコンテキストエンジンやエージェント体験を実現するためのオートメーションエンジンなどが実現され、さまざまなアプリやサービスがAIの体験を高度化していくことで、プラットフォームがより競争力を高められる、というのがChoi氏の考えだ。

こうした方向性を初めて示したのがGalaxy S26シリーズで、「これから来るAI OSを初めてマーケットに披露する、非常に重要なマイルストーンを達成できた製品」だとChoi氏はアピールした。

Galaxy S26シリーズでは、AIエージェントの機能としてNow Nudge機能やUberで注文をするといったデモが紹介されているが、こうした「コンテキストの理解にもとづいて先回りした提案する」「タスクを自動的に実施して自動化する」といった機能を実現するのがAI OSだ。

S26をスタート地点として、AI OSの基盤を実現して開発者などに利用してもらい、プラットフォームとして拡大していくことが狙いだ。

個別のアプリやサービスで「先回りする」ような機能はあったが、個別で実装するのではなく、プラットフォームとしてOSレベルでAIを統合して提供するのがAI OSの特徴だ。スマートフォンのプラットフォーム内に散在した個人のデータなどを集約してPDE(Personal Data Engine)で処理してより良いコンテキストを作って高度化する、そんな世界を目指しているという。

ちなみに、S26では音声エージェントのBixbyもアップデートされ、バージョン4.0になっている。Choi氏によれば「アーキテクチャを一新し、大きな構造を改善した」とのことで、ユーザーの自然言語の問いかけに対して理解して返答できるように、「業界で最も競争力のあるLLMを適用した」という。日本語対応に関しては、日本語の追加学習を続けており、Samsung製品のサポートなどを提供できるように開発をしているそうだ。

AIを生かした機能としてはほかに、撮影画像に対してテキストベースで生成AIによる編集機能などが搭載されている。Samsungでは「単なる撮影体験ではなく、撮影と編集、そして共有に至るまで、エンドツーエンドの体験の高度化に注力している」とChoi氏は説明。この生成AIによる画像編集機能はその一環というわけだ。

Choi氏はそのカメラについて、ハードウェアとソフトウェアを融合させ、イメージセンサー、光学系、ISP(Image Signal Processor)、その上で動作するアルゴリズムといったカメラシステム全体に対して、パートナーと連携して、各レイヤーごとに最適化を図っているのだという。

「Galaxyのカメラが目指す最終的な目標は、一般の人もプロのように写真を撮影できるようにすること」とChoi氏は話している。

Choi氏にはさらに、ウォレットサービスの「Samsung Wallet」についても尋ねてみた。グローバルで、Samsung Walletは運転免許証などのIDを登録するデジタルIDウォレットとしての取り組みを進めている。韓国では運転免許証、住民登録証、外国人登録証、一部の大学の学生証などが登録できるようになっている。ほかにも、米国の一部州(8州)の運転免許証、一部大学の学生証に対応。カザフスタン、アラブ首長国連邦、中国、インドも身分証明書や運転免許証の登録に対応しているそうだ。

さらに、欧州のEUデジタルIDウォレットへの取り組みも進めており、オーストラリアではPhoto IDや運転免許証のデジタル化支援に加え、イギリス、ドイツ、フランス、ギリシャなどの欧州政府とコンタクトを取っており、拡大に向けて協議を進めているという。「モバイル身分証は実物の身分証を代替する安全な手段として利用率が増加している傾向にある」とChoi氏。今後、日本のマイナンバーカードへの対応も期待したいところだ。