この1年間に発売されたカメラや交換レンズ、アクセサリーなどから優れた製品を選ぶ「カメラグランプリ2025」の贈呈式が5月30日に開かれました。大賞をはじめとする各賞を受賞したメーカーの開発担当者らが出席し、受賞の喜びや製品の開発秘話を語ってくれました。
大賞:キヤノン「EOS R1」
カメラグランプリ2025の大賞を受賞したのが、キヤノンのミラーレスで初のフラッグシップモデルとなる「EOS R1」です。
キヤノン株式会社 イメージング事業本部 IMG第一事業部長の加藤学氏は、以下のように喜びを語りました。「2018年にEOS Rシステムを発表してから、EOS Rの“1”はいつ出すのか、とずっと言われてきた。キヤノンとしては、この“1”という機種に大きなこだわりを持っており、いかなる妥協も許さないという思いで開発を進めた。2024年、パリ五輪に試作機を持ち込んで使ってもらったが、開会式はものすごい大雨で何台かのカメラに水滴が入ってトラブルが発生した。すかさず代替機を渡すとともに技術者に原因究明を指示し、しっかり対応してくれた。技術者が信頼性という無形の価値を生み出してくれ、プロの方々に満足して使っていただける製品に仕上がったと考えている」
レンズ賞:ソニー「FE 28-70mm F2 GM」
レンズ賞を受賞したのが、開放F2通しの明るさながらF2.8クラスのサイズに仕上げたソニーの大口径標準ズームレンズ「FE 28-70mm F2 GM」です。
ソニー株式会社 レンズテクノロジー&システム事業部長の岸政典氏は、「このレンズの企画開発にあたって目指したのは、ズームレンズではなく“焦点距離が変えられる単焦点レンズ”を作ること。F2のズームレンズは大きく重くなりがちだが、どれだけ小型軽量に開発できるかが大きなチャレンジだった。先日、このレンズと組み合わせるのに最適なFE 50-150mm F2 GMも発売したが、こちらも市場から高い評価をいただいている。こうした新しいコンセプトの商品を作ることで、市場を活性化させていきたい」と喜びを語りました。
開発を担当したソニー株式会社 光学設計部 統括部長の金井真実氏は「このレンズの設計でこだわったポイントの1つが、ズーム時の繰り出し量が小さいこと。操作性や重心の変化という観点でなるべく小さくしようという意思を持って設計したが、結果的にメカ構造の軽量化にも大きく効いた。もう1つのこだわりがボケの質感。スペックや数字で表現しづらい官能的な性能ではあるが、ボケと解像感のバランスに苦心しつつ仕上げた」と振り返ります。
あなたが選ぶベストカメラ賞:キヤノン「EOS R5 Mark II」
あなたが選ぶベストカメラ賞を受賞したのは、キヤノンの高画素フルサイズミラーレス「EOS R5 Mark II」です。
キヤノン株式会社 イメージング事業本部 IMG開発統括部 IMG製品第一開発センター所長の佐藤洋一さんは「このカメラは、アマチュアの方々が静止画も動画も満足に使えるものに仕上げる、という思いで開発した。Mark IIとして、先代のEOS R5から何を進化させるのか、何を入れるのかというところをしっかり議論した。動画の撮影時間を長くするために、今回アクセサリー(クーリングファン CF-R20EP)側にファンを置く工夫も凝らした。今までと変えない部分がありながらも新たに変える部分を作った、というところが評価につながっているのかなと思う」と喜びを語りました。
あなたが選ぶベストレンズ賞:キヤノン「RF70-200mm F2.8 L IS USM Z」
あなたが選ぶベストレンズ賞を受賞したのは、キヤノンの望遠ズームレンズ「RF70-200mm F2.8 L IS USM Z」です。
キヤノン株式会社 イメージング事業本部 IMG光学統括部門 IMG光学開発センター部長の中下大輔氏は「70-200mm F2.8ズームの最高傑作、といったコメントもいただき、開発者としてはこれ以上ない思い。パワーズームアダプターへの対応、インナーズームによる堅牢性、要望の多かったエクステンダーへの対応に加え、ズーミング操作の時にピント位置が変動しないようオートフォーカスの性能を大幅に進化させた。開発の初期段階から、メンバー全員でこのオートフォーカスの進化を達成しようということで技術開発をしてきたので、達成できてうれしい」と喜びを語りました。
カメラ記者クラブ賞:ニコン「Z50II」
カメラ記者クラブ賞を受賞したのは、ニコンのAPS-Cミラーレス「Z50II」です。
株式会社ニコン 映像事業部開発統括部付(兼)設計部長の八木成樹氏は「Z50IIは、Z9から始まる上位譲りの優れた機能性能をこのサイズにギュッと詰め込みつつも、難しい設定はカメラ任せにして、初めてカメラを使われる方でも安心して撮影に没頭していただけるモデルにしたいと思って開発した。昨今はスマートフォンで撮影する人が多いが、被写体と向き合いながらファインダーを覗いてシャッターを切るという撮影を、このZ50IIで多くの人に体験してもらいたい」と語りました。
カメラ記者クラブ賞:リコーイメージング「PENTAX 17」
同じくカメラ記者クラブ賞を受賞したのは、リコーイメージングのフィルムコンパクトカメラ「PENTAX 17」です。
リコーイメージング株式会社 カメラ事業本部長の濟木一伸氏は「2022年の暮れ、将来のPENTAX 17につながるフィルムカメラプロジェクトを発表したが、十分な状態でのキックオフではなかった。21年間フィルムカメラを出していないのでその間に技術も失ってしまったし、昔の図面もない。世の中の人がフィルムカメラにどういう期待をしているか、十分な検証もできていなかった。しかし、いざプロジェクトを発表したら、ファンの方々、フィルムに関わる方、現像に関わる方、世界中から思いもよらぬ期待の声が寄せられて、これはちゃんと作らなきゃいけないぞ、と。晴れて完成したPENTAX 17、若い人たちが“古くて新しいもの”という好意的な受け取り方をして、たくさん発信もしてくれた」と喜びを語りました。