App Storeが配信するアプリとゲームの中から、2024年に多くのユーザーが利用した人気のコンテンツを表彰する年間アワード「App Store Awards」の受賞結果が発表されました。初めて設けられた「Apple Vision Pro App of the Year」のアワードに輝いた「What If…? An Immersive Story」を手がけたディズニーILM Immersiveスタジオの代表と、「iPhone Game of the Year」を受賞したゲーム「AFK Journey」のデベロッパであるFarlight Gamesの代表に喜びの声を聞きました。

  • 2024年の「App Store Awards」の受賞結果が発表されました

2024年は17のアプリが受賞、Apple Vision Proの部門も新設

App Store Awardsは、アプリやゲームによる体験を通じて、人々のコミュニケーション手段や文化的体験を革新した魅力的なコンテンツとそのデベロッパの功績を称えるイベント。App Storeは2024年現在、175カ国に40以上の言語でコンテンツを配信しています。2024年の1年間に公開されたコンテンツのなかから、アップルのグローバルApp Storeエディトリアルチームが厳しい審査を行います。

11月に実施した一次審査を経て、12種類のカテゴリーから45本のコンテンツがファイナリストに選出されていました。なかには、米国では2月、日本では6月に発売を迎えたアップルの新しい空間コンピューティングデバイス「Apple Vision Pro」のためのアプリとゲームも、今年から新しくノミネートしています。

  • 11月には、45本のファイナリストに選ばれたコンテンツが発表されていました

アップルは、日々App Storeに公開されるアプリやゲームはAppleデバイスを活用するユーザーの日常生活を豊かに彩るために欠かせないものであり、その開発に携わる大小すべてのデベロッパを大切なパートナーに位置付けています。

App Storeでは、年間を通して何万もの新しいアプリやゲームを配信しています。App Storeのエディトリアルチームは、App Store内の特集記事やイベントなどを企画することによって、これらの新しいコンテンツの情報をユーザーに向けて精力的に発信し、出会いの機会を創出してきました。今年発売したApple Vision Pro向けのアプリやゲームも含めて、デベロッパがアイデアを具現化するために必要な開発キットなどのツールと、各デベロッパが提供するコンテンツから収益を得るための仕組みもアップルが提供しています。

多くのAppleデバイスのユーザーは、このごろ特にmacOSで利用できるiOS/iPadOS向けの互換アプリが増えたことや、Apple Watch向けのアプリが充実してきたことへの手応えを感じているかもしれません。アップルは、今後も世界のデベロッパコミュニティのため積極的な支援と投資を続けることを宣言しています。

受賞結果発表! 今すぐ楽しめるアプリとゲームを紹介

2024年にApp Store Awardsを受賞したコンテンツを紹介しましょう。例年通り、アプリとゲームは別々のカテゴリーに分けられ、それぞれにデバイスごとに最適化されたコンテンツのベストワンが選ばれます。

2022年に新設された「カルチャーインパクトアワード」のコンテンツも受賞作品が決定しました。このカルチャーインパクトアワードのなかには、ユーザーのデジタル生活習慣の改善やデバイスのアクセシビリティを高めるためにデベロッパが工夫を凝らしたユニークなコンテンツも選ばれています。

  • 2024年にアワードを受賞したアプリとゲーム。Apple Vision Pro部門も新設されました

【2024 App Store Awardsの受賞結果】

<アプリ>

  • 今年のベストiPhoneアプリ「Kino」(デベロッパ:Lux Optics Inc)
  • 今年のベストiPadアプリ「Moises」(デベロッパ:Moises Systems Inc)
  • 今年のベストMacアプリ「Adobe Lightroom」(デベロッパ:Adobe Inc)
  • 今年のベストApple Vision Proアプリ「What If…? An Immersive Story」(デベロッパ:Disney)
  • 今年のベストApple TVアプリ「F1 TV」(デベロッパ:Formula One Digital Media Limited)
  • 今年のベストApple Watchアプリ「Lumy」(デベロッパ:Raja V)

<ゲーム>

  • 今年のベストiPhoneゲーム「AFK Journey」(デベロッパ:Farlight Games)
  • 今年のベストiPadゲーム「Squad Busters」(デベロッパ:Supercell)
  • 今年のベストMacゲーム「Thank Goodness You're Here!」(デベロッパ:Panic, Inc)
  • 今年のベストApple Vision Proゲーム「THRASHER」(デベロッパ:Arcade Odyssey, from Puddle, LLC)
  • 今年のベストApple Arcadeゲーム「Balatro+」(デベロッパ:Playstack Ltd)

【2024 App Store Award:カルチャーインパクトの受賞結果】

  • 「EF Hello」(デベロッパ:Signum International AG)…AI英会話学習
  • 「Oko」(デベロッパ:AYES BV)…歩行者支援AIナビゲーション
  • 「DailyArt」(デベロッパ:Zuzanna Stanska)…美術史学習
  • 「Do You Really Want To Know 2」(デベロッパ:Gamtropy Co., Ltd.)…SNSロールプレイングゲーム
  • 「The Wreck」(デベロッパ:The Pixel Hunt)…3Dバーチャルノベル
  • 「NYT Games」(デベロッパ:The New York Times Company)…パズルゲーム

2020年以降、アワードを受賞したデベロッパには、App Storeのアイコンを立体化した質感がとてもリッチな「青いトロフィー」が贈呈されます。トロフィーには、受賞したコンテンツとデベロッパの名前が刻まれます。筆者も、あと20年若ければ必死にプログラミングを勉強して、これをゲットすることに命を燃やしていたと思います。

さて、今回は見事にApp Store Awardsを受賞したうらやましいデベロッパの方々にオンライン取材をする機会を得ました。

Disney+のアニメシリーズとコラボした「What if…?」

「Apple Vision Pro App of the Year」の初代受賞者となった「What If…? An Immersive Story」(以下、What if)のデベロッパであるディズニーILM Immersiveスタジオからは、エグゼクティブ・プロデューサーのShereif Fattouh氏とマーケティングPR・ディレクターのElizabeth Walker氏のお二人がアプリの開発秘話を語ってくれました。

  • Disneyが提供する動画配信サービスと連動したApple Vision Pro向けアプリ「What If…? An Immersive Story」

「What If」は、MARVELとILM ImmersiveスタジオによるApple Vision Pro専用の空間コンテンツアプリです。映像配信サービスのDisney+で視聴できる同名のアニメシリーズとコラボした作品で、2Dのアニメ作品の世界観と連動した3D空間エンターテインメントが楽しめるところに大きな魅力があります。今のところ期間限定とされていますが、Apple Vision Proのユーザーは無料で楽しむことができます。

MARVELは、オリジナルのスーパーヒーローたちが活躍するコンテンツの世界観を、映画やコミック、ドラマなどあらゆる形の媒体に広げてきました。Fattouh氏は「その可能性を次世代の空間コンピュータによるイマーシブエンターテインメントにも広げることが、このアプリの大きな使命だった」と語ります。

Fattouh氏の開発チームは、Apple Vision ProのユーザーがDisney+が提供するアニメシリーズの世界観を同時に楽しめるように、アプリの中から各エピソードに飛べるディープリンクを配置するなど、スムーズなメディアミックスを実現するためのさまざまな工夫も凝らしてきました。

「What ifならではのコンテンツ体験として強く意識したことがあります。それは、180度の2Dビューと、360度の全天球ビューの両方の視点でストーリーの世界をシームレスに往来することで、視聴者とキャラクターたちとの結び付きを深めることでした。Apple Vision Proを装着してアプリを楽しむ人々は物語のオーディエンスであり、同時にキャラクターのひとりになりきって世界観に没入できるのです」(Fattouh氏)

「What if」をApple Vision Proで上手に楽しむ方法

ILM Immersiveスタジオでは、Apple Vision Proのユーザーがデバイス独自のハンドジェスチャーを有効に活用しながら、物語の中で自由自在に動き回れるよう、独自開発した10種類のハンドジェスチャーをアプリの中で使えるようにしました。

Fattouh氏は、Apple Vision Proのデバイスの魅力について、次のことを挙げました。

「何より画質・音質が優れていることです。Apple Vision Proがあれば、オリジナルのアニメコンテンツを、ご自宅のテレビとオーディオシステムで視聴している感覚と変わらない、高いクオリティのイマーシブエンターテインメントに違和感なく入り込むことができます。アニメシリーズの監督であるブライアント・アンドリュース氏が、What ifアプリの各シーンの監修もしっかりと行ってくれました。アプリでも、オリジナルシリーズのクオリティが忠実に再現されています」(Fattouh氏)

さらに、What ifアプリ単体でも高い没入感が楽しめるように、Apple Vision Proの優れた画質をフルに活かして水面のゆらぎや反射を忠実に再現したり、同時に複数のキャラクターが画面に登場するときの構図の作り込みも入念にしたそうです。

What ifアプリは、約1時間にわたるシナリオの中で展開されるさまざまなミッションを、時には身体を動かしながらクリアして楽しむコンテンツです。筆者も何度か最後までプレイしていますが、ゲームやイマーシブコンテンツが初めての方でも簡単に物語が進められると思います。プレイの途中で休憩を入れながらマイペースに楽しむこともできます。

「このアプリには、ユーザーが選択したシナリオに従って、2種類の異なるエンディングが用意されています。MARVELのファンがあっと驚くような特別なゲストも登場します。これからWhat ifをプレイされる方は、ラストシーンを楽しみにしてください」(Fattouh氏)

Walker氏は、今後も多くの人がWhat ifアプリに触れられる機会を作りたいと話しています。

「今年の夏にイタリアで開催されたベネチア国際映画祭に『What if』アプリを出展したところ、とても高い評価をいただきました。さまざまな形でコンテンツを紹介し、ファンの方々にイマーシブエンターテインメントの魅力を伝えたいと思っています」(Walker氏)

  • 「What if」はApple Vision ProのApp Storeから無料でダウンロードして楽しめます

ゲームが得意な方も入門者も楽しめるる「AFK Journey」

「iPhone Game of the Year」を受賞したゲームスタジオのFarlight Gamesからは、受賞作品である「AFK Journey」のプロデューサーであるJiangyuan He氏がタイトルの魅力を語ってくれました。

  • 2024年の「iPhone Game of the Year」に輝いた「AFK Journey」

AFK Journey」は、美しいアニメーションで描かれたキャラクターたちと、独自の物語を旅するファンタジーRPGゲームです。App StoreではiOS版とiPadOS版が配信されています。macOS版とWindows版はWebサイトからダウンロードが可能。アプリ内課金コンテンツがあります。

  • 「AFK Journey」は、美しいアニメーションを楽しみながらストーリーをクリアしていくファンタジーRPGゲームです

He氏は、App Store Awardsを受賞した喜びを次のように語っています。

「AFKシリーズのゲーム作品は、最初の『AFK Arena』以来、これが2作品目です。ついにApp Store Awardsをいただけたことは私自身とても嬉しいことであり、開発チームにとっても大きな励みになっています」(He氏)

Appleのゲームコンテンツの開発環境はiOSからiPadOS、そしてmacOSまでマルチプラットフォーム展開が容易に実現できるところが、デベロッパの視点から見てとても魅力的だとHe氏は感じているそうです。

AFK Journeyについては「ゲームが好きな方だけでなく、美しいアニメーションやストーリーの世界にゆっくりと浸りたい方も楽しめるように間口を広く、世界観を奥深く設計することに注力した」といいます。初心者のためには、シナリオを選択してマップをゆったりと探索できるモードがあり、キャラクターを操作してバトルやダンジョン踏破を楽しみたい人のためのモードも準備しています。

He氏は、世界中のAFKシリーズのファンが自主的に作ったコミュニティにも積極的に参加しているといいます。また、AFK JourneyはSNSやコミュニティチャンネルを通じて、ファンが描いたイラストの紹介にも力を入れています。App Storeを通じてつながることができたファンたちとの「縁」をこれからも大切にしたい、とHe氏は嬉しそうに話していました。