鹿島建設での実証実験では長期的な効果が明らかに

OKIはWellbit Officeのサービス化に向け、鹿島建設と共同で実証実験を実施。アプリによる介入が、利用者の階段利用や歩行の増減、そしてオフィス内の居室間移動の回数にどういった影響を与えるのかを、1年間にわたって調査したとする。

すると、階段利用や歩行の促進に効果を発揮することが示されたのに加えて、オフィス内での移動回数も増大傾向が見られ、2023年7月(アプリ介入初期)から12月にかけて、約70%の利用者で移動回数が増加したことが明らかとなった。

  • 実証実験で見られた行動変容技術の効果

    鹿島建設との実証実験で明らかになった行動変容技術の効果(提供:OKI)

牛窪氏は、実証実験で確認された効果の重要な点として、「一時的に大きな効果が出て直後に元通りになるのではなく、長期的なスパンで徐々に効果が出ている」ことを挙げる。実際にデータからは、介入開始から時間を追うごとに効果が大きくなる傾向が見られており、利用が続くほど自己効力感などに与えるメリットが大きくなるとした。

社内調査では“何気ないメッセージ”の効果が判明

またメッセージの最適化に向けては、OKI社内向けに比較実験を実施したとのこと。メッセージの回数や内容について、同社独自のメッセージ、一般的なヘルスケアアプリにならったメッセージ、通常よりも頻度を多くしたメッセージの3群に分けて、それらの介入が階段利用数の増減に与える効果を計測したところ、OKI独自の介入が最も大きな効果につながったという。

牛窪氏は、こうした移動を促進することによって、すれ違う際の偶発的なコミュニケーション機会が生まれるなど、さまざまなメリットが継続的に生まれていくことが想定されるとしている。

  • OKI社内実験の結果概要

    OKI社内で行われた実験の結果概要(提供:OKI)

鹿島建設での導入を皮切りに年間売り上げ1.5億円を目指す

なお、今回開始されたWellbit Officeのサービス提供については、丸紅ネットワークソリューションズとの連携によって進めていくとのこと。2022年ごろから行動変容技術に関心を寄せていたという同社は、Wellbit Officeのサービス販売窓口としての役割を担い、オフィスビル内のセンシングやソリューション設計などを行うという。

その顧客としては、スマートビルを運営する不動産会社およびオーナーが想定されるといい、2026年度までに年間1.5億円の売り上げ規模にまで成長させることを目指すとする。

また、これまで実証実験を行ってきた鹿島建設の「鹿島KIビル」では、8月よりWellbit Officeの正式導入を開始することが発表された。さらに今後のサービス導入に向けた協議はすでに複数社との間で開始されているとのことで、それぞれの顧客に適したサービス内容やデータ収集体制などを模索しながら、売り上げの拡大を目指していくとしている。

将来は環境にも貢献する個人に寄り添ったアプリに

ちなみに、Wellbit Officeで使用されるアプリ名称が“GreenUP”となった背景について、牛窪氏は、「健康だけでなく“ウェルネス”にもつながる」ことを目指し、「アプリの利用によって人々が健康になるだけでなく、地球も健康にしていけたら」という理由から、グリーンという言葉を盛り込んだとする。また今後は、脱炭素への貢献度の可視化なども構想しているため、汎用性の高いデザインにしているという。

さらに将来的な展望として、「最終的には一般向けにGreenUPを公開し、個人の健康に寄り添えるようなサービスにできたらいい」とのこと。スマホに届く何気ないメッセージで、オフィスワーカーをはじめとする人々の健康がいつの間にか促進される。そんな好循環のきっかけが、今、OKIから始まった。