前編に続き、栃木県宇都宮市の路面電車「宇都宮ライトレール」(愛称はライトライン)をフルサイズミラーレスと望遠ズームレンズを使って撮影してみました。撮影する場所だけでなく時間も重要なポイントだと改めて認識しました。

  • 2022年8月に開業した「宇都宮ライトレール」。JR宇都宮駅東口を起点とする全長14.6kmの路面電車です

    今年8月に開業した「宇都宮ライトレール」。JR宇都宮駅東口を起点とする全長14.6kmの路面電車です。次世代型路面電車(LRT/ライト・レール・トランジット)の導入や、新規で開通する路面電車としては75年ぶりとなるなど、何かと話題の多い路線です。写真は宇都宮駅東口駅近くの専用軌道区間を走るライトラインです

今回の機材は、ソニー「α7C II」(ILCE-7CM2)にタムロン「17-50mm F/4 Di III VXD(A068)」、「タムロン35-150mm F/2-2.8 Di III VXD(A058)」、「タムロン50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD(A067)」を使用しました。他の鉄道同様、望遠レンズはマストと述べてよいでしょう。今回の撮影で主だった設定として、AFはコンティニュアス(AF-C)、記録フォーマットはRAWとしています。撮影では、できるだけ速いシャッターを切るため、感度は上げて撮ることが多かったです。なお、ライトラインは方向幕や前照灯などにLEDを使用しているため、速いシャッターを切ると発光が途切れたり暗くなるいことがあるのですが、リフレッシュレートが不明なためあまり深く考えずに撮影しました。

  • カメラはソニーのフルサイズミラーレス「α7C II」、交換レンズはタムロンの「17-50mm F/4 Di III VXD(A068)」「35-150mm F/2-2.8 Di III VXD(A058)」「50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD(A067)」の3本を使った

3:清陵高校前駅←→ゆいの杜西駅

この区間は、専用軌道区間で工場地帯を走行します。清原地区市民センター前駅には、トイレとちょっとした待合室があります。

天候の回復を待って、清陵高校前駅と清原地区市民センター前駅の間にあるS字カーブへ。ここもガードパイプがちょっと邪魔で、アングルや車両の位置に工夫が必要です。クルマで移動できるのであれば、脚立を使って高さを稼ぐのもありそう。清原地区市民センター前駅近くの交差点では、グリーンスタジアム前駅を目指すライトラインや、反対にこちらに向かってくるライトラインの姿を写すことができました。やはり、ここも長玉を使用するのがよさそうです。ただ、道路側にガードパイプやガードレールがないので、撮影の自由度は大きいように思えました。

  • 青陵高校前駅と清原地区市民センター前駅の間で撮影。フルサイズのカメラの場合、焦点距離400mm前後をカバーする望遠ズームがあると便利ですが、気をつけないと今回の撮影のように正面からのカットばかりになってしまいそうです ソニーα7C・タムロン50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD(A067)・絞り優先AE(絞りF6.3・1/1000秒)・ISO400・WBオート・RAW

  • 青陵高校前駅と清原地区市民センター前駅の間にあるS字カーブで撮影したシーケンス写真です。何度も書いているとおり専用軌道区間はガードパイプやガードレールで線路と道路が仕切られているところが多く、写真を撮るうえでひとつのポイントとなります。個人的にはS字カーブに入ってくる最初のカットがいいかなと思っていますが、いかがでしょうか ソニーα7C・タムロン50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD(A067)・絞り優先AE(絞りF6.3・1/1000秒)・ISO400・WBオート・RAW

  • 清原地区市民センター駅すぐ近くの交差点歩道からの撮影です。ちなみにライトラインの線路幅は日本では一般的な1067mm。これは今後他の線への乗り入れを考慮してのことと言われています。ここはもっと撮り方があったかなと反省 ソニーα7C・タムロン50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD(A067)・絞り優先AE(絞りF8.0・1/1000秒)・ISO200・WBオート・RAW

4:ゆいの杜西駅←→芳賀台駅

この区間は併用軌道区間で、ロードサイドには飲食店やホームセンター、自動車販売店などが並ぶ地方都市らしい風景。ファミレスやカフェも点在しており、ランチや休憩ができます。

  • 太陽の日差しを受け輝度の高い状態ですと、キリッとしまった映えのあるライトラインの写真となります。駅撮りでも十分楽しめる路線ですので、家族で訪れてみるのもよいかもしれません。ゆいの杜西駅で撮影 ソニーα7C・タムロン17-50mm F/4 Di III VXD(A068)・絞り優先AE(絞りF5.6・1/2000秒)・ISO400・WBオート・RAW

  • ライトラインで移動中にゆいの杜西駅で見かけた光景。急いで降車し、太陽を背にして走るライトラインをホームの端で待ちました。撮った瞬間、今回の撮影は終わったような気がしました(笑) ソニーα7C・タムロン35-150mm F/2-2.8 Di III VXD(A058)・絞り優先AE(絞りF8.0・1/1000秒)・ISO200・WBオート・RAW

5:芳賀台駅←→芳賀・高根沢工業団地駅(終点)

この区間は併用軌道区間で、再び工場地帯の中を走行。芳賀町工業団地管理センター前駅と、かしの森公園前駅の間には、最大60‰の坂があります。芳賀町工業団地管理センターとかしの森公園にはトイレもあります。

ライトラインの撮影ポイントの目玉といえば、芳賀台駅と芳賀・高根沢工業団地駅の間にある60‰(パーミル)の坂。谷を越すところがあるのですが、その谷を中心にV字型となった坂が急勾配なのです。ちなみに60‰とは、1,000m(1km)進んで60m上る、あるいは下る傾斜であることを示します。鉄のレールの上を鉄の動輪で走行する一般な鉄道としては、かなりの急勾配となります。そんな坂道を下り、そして登るライトラインは、望遠レンズの圧縮効果をうまく活かせば絵になると思います。

問題は、軌道の両脇をクルマが行き交うため、そのクルマがライトラインにカブってしまう可能性があること。少しでもいい結果を得るには、ちょっと粘る必要がありそうです。

  • 芳賀工業団地管理センター前駅とかしの森公園前駅の間にある話題の60‰のV字坂です。坂の様子がよく分かるように超望遠域の焦点距離による撮影です。併用軌道区間のため、クルマがライトラインに被ることが多いのですが、じっくりと狙うといいかなと思います。なお、写真ではクルマのナンバープレートに加工を施しています ソニーα7C・タムロン50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD(A067)・絞り優先AE(絞りF9.0・1/500秒)・ISO400・WBオート・RAW

終点の芳賀・高根沢工業団地駅まで再び足を運んだあとにUターン。太陽はかなり傾いていましたが、ゆいの杜西駅などで撮影しながら宇都宮駅東口駅に戻りました。最後に、同駅周辺でブルーアワーのなかのライトラインにカメラを向け、撮影は終了。

  • ブルーアワーも終わりそうなときにようやく来たライトラインにカメラを向けました。併用軌道区間もあるため、時間帯によってはダイヤの乱れが発生するのは致し方ないところ。余裕を持って撮影を楽しみたいところです。宇都宮駅東口駅と東宿郷駅の間で撮影 ソニーα7C・タムロン35-150mm F/2-2.8 Di III VXD(A058)・絞り優先AE(絞りF3.5・1/100秒)・ISO6400・WBオート・RAW

今回は、撮影ポイントなどの情報を事前にチェックせずに撮影に臨みましたが、それでもなんとか絵になりそうなところをいくつか見つけ、写真に収めることができました。ライトラインは、路線が適度に短いうえに便数も多いので、初見でなおかつ電車移動でも十分撮影が楽しめるように思えます。トイレや食事にも困ることもほとんどないので、家族で撮影に出かけてみるのもありかもしれません。

撮影ポイントが未開拓なところも多いので、いつか見たあの風景ではなく、まったく新しい自分だけでの視点で写真を撮る楽しさもあります。これらからの季節、北関東は冷たい北風が吹くようになりますが、それにめげず、ライトラインにカメラを向けてみるのはいかがでしょうか。できることなら望遠レンズ、超望遠レンズも携えることをオススメします。