電気自動車(EV)は走行時に排出する二酸化炭素(CO2)が少ないため、地球に優しいモビリティといわれています。しかし現状、「マンションで充電器が設置できない」「いざというときに電源を確保できるか?」など、充電の不安が拭えないのも事実。
そうした不安の解決を目指すサービスのひとつとして、パナソニック エレクトリックワークス社(以下、パナソニックEW)が手がける「everiwa Charger Share」があります。複数のユーザーで車を共有するカーシェアリングのように、電気自動車の充電器をシェアしようという取り組みです。今回、everiwa Charger Shareを実際に導入した千葉県市川市を取材しました。
地球環境のためだけでなく防災対策にも
everiwaとは、パナソニックが社会課題の解決を目指すコミュニティのこと。このコミュニティでは、パナソニック以外の企業、自治体や大学、個人などさまざまな立場から課題解決を考え、そのなかで登場したのが今回紹介するeveriwa Charger Shareです。
everiwa Charger Shareは、電気自動車用の充電ポイントをシェアするサービス。簡単にいうと、電気自動車の充電施設を所有している「チャージャーホスト」と、電気自動車の「ユーザー」をマッチングするプラットフォームです。
すでにEV用の普通充電器があれば、パナソニック製以外の充電器であっても、誰でもホストになれます。ホスト側は、自分が所有する充電器をeveriwaサービスに登録し、手元に届くQRコードが印刷されたステッカーを充電器に貼ります。そして「他人に充電器を貸してもよい時間」や「時間ごとの価格」を自分で設定すれば、ゼロ円から手軽に充電器のシェア(提供側)を始められます。
ホストは充電器を貸すことで収入が得られ、ユーザーは各地の充電拠点を利用できるという、ホストとユーザーの双方にメリットがある取り組みです。現在は始まったばかりですが、全国各地にeveriwa Charger Shareの充電拠点が増えていくほど、ユーザー側の利便性も高まります。
everiwaが「社会課題の解決」を目指していることからわかるように、everiwa Charger Shareの目的はユーザーの「便利」だけではありません。地域に充電スポットが豊富にあれば、安心感から電気自動車ユーザーが増え、電気自動車ユーザーが増えればeveriwaを利用した充電スポットがさらに増える――という良い循環が期待できます。
つまり、このサービスによって充電インフラを充実して電気自動車を普及させ、結果として社会全体のCO2排出量を抑えることが目標なのです。「2050年までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする」という目標を掲げる千葉県市川市は、このCO2排出量削減という目標に共感し、10月27日にパナソニックEWと「EV用充電インフラの整備促進及び啓発に向けた協定書」を結びました。
市川市は「EVの充電に不安のない街づくり」で電気自動車の普及を後押し
市川市の田中市長は「EV充電に不安のない街づくり」をすることによって、地域の電気自動車普及率を上げてCO2排出量を削減したいとします。今後は電気自動車の普及促進に向けて独自の補助金制度を制定したり、公用車へEVシェアリングを適用したりといった施策を進めるとのこと。また、電気自動車について不安を持つ市民に向けて、電気自動車の充電体験をはじめとした啓発イベントも積極的に行うとコメントしました。
市川市はさまざまな取り組みの一環として、市役所の地下駐車場にeveriwa Charger Shareを使った公共充電スポットを設置。今回はこの「市川市役所第1庁舎 一号機」の充電スポットを実際に見られました。
電気自動車を充電する手順も見学。といっても、充電は簡単。事前に充電時間を予約しておいたスポットに行き(予約がない場合は現地予約も可能)、現地の機器に貼ってあるQRコードと車の充電残量をアプリで撮影してチェックイン。あとは一般的な電気自動車の充電手順と同じように充電を行うだけです。料金はスポットによって変わりますが、市川市役所第1庁舎 一号機は1時間220円でした。
everiwa Charger Shareは2022年末にサービスインしていますが、まだまだ1年足らず。充電スポットの数が増えていくのもこれからです。今回の市川市のように、電気自動車の充電インフラ整備を積極的に進める自治体が増えれば、日本各地ですぐに近くの充電スポットが見つかる未来が訪れるかもしれません。