MediaTekは11月7日、ハイエンドスマートフォン向けSoC「Dimensity 9300」を発表した。最初の搭載端末は2023年中に登場する見通し。

  • MediaTek Dimensity 9300

    MediaTek Dimensity 9300

同社のスマートフォン用SoCラインナップの頂点に位置する新チップで、TSMCの第3世代4nmプロセスで製造される。CPU構成を大きく変更し「オールビッグコア設計」とアピールする。

近年のSoCはピーク性能を引き出すための高性能コア(パフォーマンスコア)と省電力性を重視した高効率コア(エフィシェントコア)を数個ずつ組み合わせたCPU構成が一般的だ。特に、PC向けとはマルチタスクの使われ方や消費電力に対する考え方が異なるモバイル端末用のハイエンドSoCでは、さらに高性能コアの構成を細分化し、最も強力なプライムコアを1つとパフォーマンスコアを数個という構成になっているものが多い。たとえばMediaTekの前フラッグシップSoCである「Dimensity 9200」の場合、Cortex-X3(プライムコア)×1+Cortex-A715(パフォーマンスコア)×3+ Cortex-A510×4(エフィシェントコア)×4という構成だった。

オールビッグコアとうたうDimensity 9300では、近年のハイエンドSoCのセオリーとなっていたこの方針から転換し、Cortex-X4×4+Cortex-A720×4の構成とする。

直近で発表されたクアルコムの競合製品「Snapdragon 8 Gen 3」のCPU構成がCortex-X4(プライムコア)×1+Cortex-A720(高性能コア)×5+Cortex-A520(高効率コア)×2であることを踏まえると、Dimensity 9300は本来プライムコアや高性能コアとして扱うクラスのCPUコアのみで構成された異例の設計といえる。

GPUはArm Immortalis-G720を採用し、Dimensity 9200との比較でGPU性能46%アップ/GPU消費電力40%減とする。また、生成AIなどの利用を支援する「APU 790」も内包する。ISPも強化し、4K60fpsのHDR録画やAndroid 14のUltra HDRフォーマットに対応する。通信面では、5G Sub6帯での4CC-CAとミリ波の8CC-CAやWi-Fi 7に対応。メモリはLPDDR5T 9600Mbpsまでサポートする。