小型衛星を活用して迅速に開発 アカデミア主導の「TFチーム」案
第3の案は「今後の宇宙開発体制のあり方に関するタスクフォース会合」 リモートセンシング分科会幹事会(以下、TFチーム)が提案する、小型光学衛星・中型光学衛星・LiDAR衛星を組み合わせたコンステレーション案だ。タスクフォースとは、東京大学の六川修一教授、岩崎晃教授、中須賀真一教授らを発起人として、衛星リモートセンシングに関わる研究者が「衛星地球観測と社会とのインタフェースを担い、実用化への道筋をつける」ことなどを目的に設置したコミュニティで、アカデミア中心のチームだ。
衛星地球観測の研究に長く関わり、JAXAの地球観測衛星開発やデータ利用を長く続けてきたTFチームの提案では、小型衛星を取り入れることで開発スピードが最も高速になっている。10機の小型光学衛星を、分解能80cmの衛星から段階的に開発し、2026年には運用・データ提供を開始する。2028年以降に運用を開始する第2世代の衛星では分解能を40cmまで向上させ、また中型光学衛星とLiDAR衛星の組み合わせは2029年以降に運用が始まるというプランだ。
ただしTFチームの案では、衛星開発を担う主体が提案されていない。宇宙開発利用部会の報告では、開発者選定は今後行っていく方向だという。
「TFチーム」 プロジェクト概要
- システム構成:中型光学イメージャ×4機、小型光学イメージャ×10機、小型ライダ衛星×1機(※オプションとして、イメージャ+LiDARを1機の中型衛星とする案)
- 観測幅:約100km
- 分解能:40cm~80cm
- 観測バンド:6バンド
- 打ち上げ時期:2026年度から段階的に
- 官民分担:(官)中型×4機、小型LiDAR×1機、(民)小型光学イメージャ×10機
2024年の衛星開発開始に向け議論が急がれる
3案を比較すると、ALOS-3を再生することでこれまで日本の衛星地球観測を見据えて準備されていた下地をそのまま活かし、利用の予見可能性を高める方向か、または思い切って分解能向上とLiDARによる高さ方向の精度向上を取り入れ、スピード開発で空白期間を短縮する案の、2つの方向性だと思える。JAXA 第一宇宙技術部門 地球観測統括の平林毅氏によれば、3案を1本に絞り込むのではなく分解して合流させる可能性もあるといい、方向性が近いNTTDチーム案とTFチーム案がまとまる可能性もあるのではないだろうか。
いずれにせよ、2024年度に衛星の開発開始となれば2023年9月ごろまでには方向性が絞り込まれている必要がある。夏にかけて引き続き議論が続けられる予定となっており、その進展は追って報告したい。