Amazonから「Fireタブレット」シリーズの最上位モデルとなる「Fire Max 11」が発表されました。
その名の通り、約11型の大画面とステレオスピーカーで動画やゲームを楽しめるほか、スタイラスペンや日本語キーボードなどのアクセサリーも用意され、幅広い用途に使えるタブレットになっています。価格もFireタブレットシリーズの中では最も高く、64GBモデルが34,980円と設定されています(128GBモデルは39,980円)。
これまで動画配信や電子書籍など、Amazonが提供するサービスが楽しめるデバイスとして、手ごろな価格で人気を集めてきたFireタブレットですが、最上位のFire Max 11にはどのような狙いがあるのでしょうか。アマゾンジャパン アマゾンデバイス事業本部でFireタブレット事業を統括する丸山 舞さんに聞きました。
「色々なことがしたい」に応えるFire Max 11
──Fire Max 11はどういう狙いで開発された製品なのか、教えてください。
丸山さん:今、学校などで初めてタブレットに触れて、家でも使いたいとか、それを見た親御さんや兄弟が自分でも使ってみたいというように、タブレットへのニーズが広がってきています。特に日本では大画面へのニーズが高い傾向があり、調査会社のデータを見ても(10型以上の)大きなタブレットへのユーザーニーズが約80%を占めており、特に11型以上は2020年から2022年にかけて10%から15%に伸長しています。大画面で動画を見たり、Webを検索したりするだけでなく、何か作りたいというクリエイティビティへの欲求も高まっています。
「Fire HD 10」の発売時にMicrosoftと提携し、Bluetoothキーボードカバーと「Microsoft 365 Personal」をセットにした製品を出したのですが、それが大変好評でした。そういった点からもユーザーの使い方の広がりを感じると同時に、さらに要望に応えられる製品として考えたのが「Fire Max 11」です。今回はスタイラスペンも作って、今アプリも拡充しているところです。
──タブレット人気の背景には、コロナ禍におうち時間が増えたこともあると思います。アフターコロナのニーズの変化をどう見ていますか?
丸山さん:Fire HD 10が出た2021年、さらにその前の「Fire HD 8」も2020年で、まさにコロナ禍だったので、おうちで時間があるから動画を見ようというニーズは確かにあったと思います。一方で今は、皆さんが外に出るようになって、より色々なシーンでタブレットを使っていただけるようになってきています。だからこそ「タブレットで色々なことがしたい」という声に応えられるように、製品に広がりを持たせたかった。タブレットを使っていただける時間を、少しでも長く……というところを目指していきたいと考えています。
──最近は他社からも、たくさんのタブレット製品が登場してきています。改めてFireタブレットの強みは何でしょうか?
丸山さん:参入メーカーが増えて選択肢が広がっていることについては、色々な選択肢がある中で目に触れる機会も増えると思いますし、ユーザーにタブレットというものを取り入れていただくという意味では、むしろ良い機会だと捉えています。
我々が大事にしているのは、Amazonのサービスと連携してその利用頻度を増やすこと。また、そのための初期費用をなるべく抑えることも、すごく大事なポイントだと思っています。今回の34,980円からという価格設定も、かなりがんばった金額になっているのですが、それもAmazonのサービスと一緒に使っていただくというところに重点を置いているからです。そこにすごくこだわりを持って開発をしているところが、我々の強みだと思っています。動画もそうですし、電子書籍もそうですし、色々なパートナーのアプリを使っていただくこともそうですし、そこに広がりを持たせることで、初期コストを抑えています。
ユーザーニーズ見据え、アプリ拡充も
──今回、大画面でマルチタスクもできる、スタイラスペンも使えるとなると、より色々なアプリを使いたいというニーズも高まると思います。アプリの拡充についての考えを聞かせてください。
丸山さん:スタイラスペン対応のアプリは写真を編集できる「Picsart」(ピクスアート)など、すでにいくつか使えるものがありますし、今後もいろいろなベンダーと協力していきたいと思っています。「Amazon Androidアプリストア」については、(私は)直接の担当ではないのですが、日本のベンダーにもワールドワイドへ展開していただけるのがメリットだと思うので、そういったお話も一緒にしながら、アプリの拡充を図っています。グローバルから日本のベンダーまで、いろいろなパートナーの方とお話しているところです。
──特に強化していきたいアプリなどがあれば教えてください。
丸山さん:Fireタブレットは、ユーザーにエンターテイメントを楽しんでいただくためのデバイスということを非常に意識しているので、まずはエンターテイメントを楽しめるアプリで、ニーズの高いものが最優先になると思います。あとは今回、スタイラスペンやキーボードといったアクセサリーを展開したように、個人のユースケースを広げていけるようなものを拡充していきたいですね。
──ペンが使えるデバイスにはほかに「Kindle Scribe」もあります。Fire Max 11のKindleアプリでも同じような機能が使えるのでしょうか?
丸山さん:Kindle Scribeでは手書きメモを書き込めますが、Kindleアプリとスタイラスペンの組み合わせでは、こういった機能は利用できません。今後利用できるようになるかどうかは、何とも言えません。ソフトウェアに関しては常にユーザーのユーザビリティを見て拡張していますので、今後もユーザーがどういうふうに使いたいかを確認しながら、優先度を決めて対応していくことになると思います。
「何かチャレンジしたい人に、最適なタブレット」
──Amazonのスマートディスプレイ「Echo Show」との棲み分けについても聞かせてください。Fireタブレットでも音声操作ができる「Showモード」が利用できますが、競合しないのでしょうか?
丸山さん:FireタブレットでもEcho Showのような使い方はできますが、やはりタブレットの場合は、エンターテインメントを十分に楽しみたいというところで、そもそものユーザーニーズが異なると考えています。Echo Showでもプライムビデオを見られますが、タブレットでは持ち運んで車の中で見るとか、寝る前に見るとか、色々なところに移動しながら楽しむユースケースが多いと思います。
──エンターテインメントを楽しむデバイスとして、今後強化していきたい機能はありますか? たとえばさらに大きい画面サイズや有機ELの採用などの可能性はどうでしょうか?
丸山さん:今後の展開についてはお伝えできないんですが、画面サイズについてはこれ以上大きくなってくると、持ち運びがしにくくなってくるので、今の11型というところが、手ごろなところなのかなとは思います。ディスプレイについては、価格帯とのバランスやユーザーのニーズ、利用動向を見て判断するという形になるかと思います。
今回の製品もユーザーの利用シーンなどを見て、じゃあ11型を出そうという風に判断しているので。そこにすごくニーズがあるとなれば検討するかもしれませんが、あくまで開発の進め方としては、ユーザーの声を聞いてニーズを見て判断することになると思います。
──その意味で、今回のFire Max 11はユーザーのどのようなニーズを満たす製品と言えるのでしょうか?
丸山さん:やはり、大画面でエンターテインメントを楽しみたいユーザーに向けた製品なのですが、かつ、ちょっとイラストなども描いてみたいというような、そういう能動的にアクションを起こしたい、何かチャレンジしたいという思いのある方々には、最適なタブレットかなと思います。これまでタブレットを使ったことがないユーザーの入門機としても、より広い用途にご利用いただけるデバイスだと考えています。
──ありがとうございました。