そこで研究チームは、Shy Girl遺伝子の機能に着目し、遺伝子編集技術を用いて同遺伝子を欠いた雄のキウイフルーツを作出したという。すると、雄はすべて両性花に変化するとともに、花が多い・開花が早いといった共通する雄らしささえも同時に失うことが確かめられた。

  • 雄のキウイフルーツ(左)は、Shy Gir 遺伝子の機能を失うことで両性花(右)となる。さらに「花が多い」「早く花が咲く(開花している枝が多い)」といった雄の特徴も失われている

    雄のキウイフルーツ(左)は、Shy Gir 遺伝子の機能を失うことで両性花(右)となる。さらに「花が多い」「早く花が咲く(開花している枝が多い)」といった雄の特徴も失われている(出所:共同プレスリリースPDF)

これまでの定説では、まず性決定遺伝子が成立して雄・雌という概念が成立した後に、雄らしさを生み出す別の遺伝子群が成立することで、雄らしさを示すY染色体が作られると考えられてきた。しかし今回の研究成果により、植物の個体において「性が成立する」ことと「雄らしさを獲得する」という進化は、いずれも性決定遺伝子そのものが担っており、Y染色体が作られる過程とは独立しているという新説を提唱するに至ったとする。

性染色体の進化に関する今回の新しい知見は、本来、同じであると思われていた動物と植物の性染色体の成立過程や役割が、大きく違ったものである可能性を示すものだという。植物は、進化の過程で何度も独立して性を成立させており、今回の知見はその植物に特異な「柔軟な性の成立」における原動力の理解につながるものになるとした。

性別は、作物の安定的な生産や、育種の上で交雑組み合わせを限定する大きな課題となるが、植物ごとにその性決定の仕組みは異なっており、「なぜ植物は性別を生み出すのか?」という根本的な要因はわかっていなかった。研究チームは、今回の研究が植物において、その根幹となる性染色体進化の一端を初めて紐解いたものであり、この知見を基にして、植物における性の成立の独自性とその根本的な要因の解明が期待されるとしている。