2022年末から最新CPU投入が相次ぎ、にわかに活況を呈していた自作PC市場。後発となったAMD Ryzen 7000シリーズの発売や性能評価もだいたい落ち着いてきたので、諸般の事情を考慮して第13世代Intel Core i7-13700KFを購入しました。というわけで今回は筆者がこのCPUを選んだ理由や、組み合わせたマザーボード、そもそも購入を決断した理由について紹介していこうと思います。
Intel Core i7-13700KFはコア数と価格のバランスがよさげ
今回Intel Core i7-13700KF(16コア24スレッド)を選んだのは、見出しの通りコア数と価格のバランスがちょうど良いように感じたためです。これまで使ってきたRyzen 9 3900XT(12コア24スレッド)と似たようなコア数だと、候補には下記のようなものがありました。
仕様 | コア/スレッド数 | 最近の実勢価格(筆者調べ) |
---|---|---|
Intel Core i5-13600KF | 14コア20スレッド | 43,000円前後 |
Intel Core i7-13700KF | 16コア24スレッド | 59,000円前後 |
AMD Ryzen 7 7700X | 8コア16スレッド | 47,000円前後 |
AMD Ryzen 9 7900X | 12コア24スレッド | 65,000円前後 |
AMD Ryzen 9 7950X | 16コア32スレッド | 80,600円前後 |
こう並べてみると、第13世代Coreシリーズは相対的に割とお手頃。コストパフォーマンスを追求するならIntel Core i5-13600KFがベストに見えますが、Intel Core i7-13700KFでもRyzen 9 7900Xより若干安いので奮発しました。余談ですが、筆者にとってIntelでゲーミングPCを組むのはSkylakeこと第6世代Core i7-6700K以来。
また、見逃せないのは第13世代CoreプロセッサならDDR4メモリとも組み合わせられる点です。「どうせ買い替えるならDDR5メモリも買ってその辺もちゃんと徹底しろよ」という声が聞こえる気もしますが、予算的に大変厳しく、ゲーム用途では性能にあまり影響がなさそうなので見送りました。後述しますが、Intel Z690 / DDR4の素晴らしいマザーボードと出会えたのも大きな理由です。
ASRock「Z690 Steel Legend」との出会い
ここで少し話が巻き戻りますが、それは2022年秋に開催されたASRockのマザーボード発表会のこと。USB端子を大量に搭載して話題をかっさらった「LiveMixer」シリーズの投入が明かされた回で、発表会では同社YouTubeでもおなじみの原口氏が製品について紹介していました。
製品について聞いているうち、筆者が特に関心を惹かれたのは「USB端子大量搭載」よりも、さらりと紹介された「ウルトラUSBパワー」という特色。USB端子の5V電源をマザーボードの12Vからわざわざ別途生成して出力するというもので、強力かつクリーンなUSB接続を行えるとあります。USBバスパワーのオーディオインタフェースを愛用している筆者にとっては、素晴らしく魅力的に聞こえました。
その発表会の質疑で「ウルトラUSBパワーってLiveMixerシリーズだけの機能なんでしょうか? 他のモデルにもぜひ展開してほしいです!」と聞いてみたところ、なんと「今まであんまり推してこなかったんですけど、実はちょっと前のSteel Legendとかでも既に採用されてるんですよね笑」という衝撃の回答が。これはもうウルトラUSBパワー搭載モデルを買うしかないと決めた瞬間でした(でもUSB端子はそんなにたくさん必要ないので、LiveMixerは見送りました)。
そこでCore i7-13700KF用マザーボードにはASRock決め打ちで製品を調査し、今回はチップセット型落ち・ソケット共通の「Z690 Steel Legend」を購入しました。昨今の時勢やCPUの消費電力増加で最近のマザーボードはどれも高価ですが、型落ちチップセット搭載モデルなら相対的にリーズナブルです。
ちなみにZ790 Steel LegendではVRMがDr.MOSからSPSになっていたり、そもそもフェーズ数が増えていたり、チップセット的にはUSB 3.2 Gen2x2が多かったりPCIeレーンの振り分けが変わっていたりしますが、どれも筆者には関係ない(?)のでスルー。Z690マザーボードで第13世代CPUが不安定になることも当然なく、超ヘビーなゲームでも問題なく遊べて大満足です。今回CPUの買い替えに踏み切ったのは、このマザーボードの存在が最も大きいと言っても過言ではありません。
購入した個体は物流倉庫で死蔵されていたのか、手元にやってきた段階でUEFIのバージョンが7.02でした。第13世代Coreシリーズに対応するのは9.03からで、最新バージョンは10.04。ブートのための第12世代CPUを持っていませんでしたが、本製品は対応CPU不要でUEFIアップデートを行える「Flash Back」機能を搭載しているので、問題なく最新バージョンまで引き上げることができました。
UEFIではファンをサイレントモード(気持ち静かになる)にしたり、tjMAXをAutoから99度に変えたり(このモデルはAutoだと100度を超えてしまう)、オンボードオーディオを無効化したり(使わないため)してからWindows 11をインストール。Windows 11環境では『VALORANT』の起動にセキュアブートが必須なので、UEFIから「デフォルトのセキュアブート用キーをインストール」を行うことで対処しました。ここでも余談ですが、ASRockのドライバインストールユーティリティは個人的に最高。役目を終えると自己消去してシステムから立ち去り、以降常駐することもありません。
肝心のウルトラUSBパワーですが、オーディオインタフェース「MOTU M2」を繋いで愛用中。本当に12Vから電源が取られているようで、システムをスリープに入れると接続デバイスへの給電も止まって驚きました。
Ryzen 9 3900XTより抜群に速く、高負荷時は格段に熱い
負荷が小さく、CPU性能をかんたんに取得できるSpeedometer 2.1でスコアを計測してみました。Intel Core i7-13700KFではいよいよ400を超越した圧倒的な高速性能を実現しており、前に使っていたRyzen 9 3900 XTで200をギリ超えるレベルだったことを思うと、買い替えで2倍くらい高速化できているようです。VAROLANTはWQHD最高設定でも500fpsを余裕で超え、サイバーパンク2077は「サイコ」設定でも90fps前後を維持できるようになりました。
中でも地味に嬉しかったのが、スマートフォンゲームを遊ぶために導入しているAndroidエミュレーターの性能が劇的に高まったことです。スマートフォンをいたわるべく、高負荷なゲームをPCで代替でき、しかもはるかに快適に遊べるようになって満足です。
買ってよかった第13世代Core i7-13700KF。でも空冷は…
ここまで今回購入したCPUとマザーボードについて紹介してきた本記事。ただ、高負荷時の排熱には念入りな対処が必要です。実はケースの都合で水冷クーラーを使えず、空冷クーラー「DeepCool AK620」を組み合わせていますが、それでも240Wの発熱には耐えられていません。あれこれ考える前に、とにかく適当な水冷クーラーを組み合わせたほうがベターです。