既に事前説明会の情報をベースにAMDのCES 2023の基調講演の内容をお届けした(https://news.mynavi.jp/article/20230105-2553866/)が、やはりというか事前説明には無いものが色々出て来たので、追加の形で補足したい。

Ryzen Desktop Update

先のレポートではRyzen 7 7800X3Dの性能は示されたが、Ryzen 9 7950X3Dの性能は示されなかった。基調講演では、Core i9-13900KとのGaming比較(Photo01)が行われ、フレームレートが9~24%高い事を示した。

  • AMD CES 2023 Update - Ryzen 9 7950X3DとCore i9-13900Kの比較など新製品の情報を追加、隠し玉も

    Photo01: ゲームは上からWatchdogs Legion/DOTA 2/Rainbow Six Siege/Horizon Zero Down。いずれも2KでHigh Image Qualityとされる。流石に内蔵GPUではなく、Discrete(GeForce RTX 3090あたり?)を使ってのものと思われる。

Ryzen Mobile Update

まずRyzen 7045HXシリーズだが、事前説明の性能比較toとは異なるテスト(Photo02)で示されたほか、Core i9-12900HXとの比較(Photo03)が示された。またRyzen 7040HSについてはライブデモが行われた(Photo04)。ちなみにRyzen 7040HSの総トランジスタ数は250億個とのこと。

  • Photo02: 上からShadow of the Tomb Raider/Watchdogs Legion/Far Cry 6/CS:GO。

  • Photo03: 上からGeekbench Multi-Core/CineBench Multi-Thread/Blender/Handbrake。

  • Photo04: レンダリング時間をCore i7-1280P及びApple M1 Proと比較したもの。Ryzen 9 7940HSは既にレンダリングが完了しているが、他の2つはまだ途中であるとする。

XDNA Update

こちらのスライドにある"Dedicated AI Engine"の名称が正式に"Ryzen AI Engine"と披露された他、その性能は12TOPSと説明された。ただ性能比較(MobileNet v2)ではApple M2比で20%高速とされている(Photo05)。Apple M2はこちらの説明では15.8TOPSであり、ここから20%高いということは19TOPS近い性能ということになる(勿論TOPS値がそのまま性能に直結する訳では無いのだが)。ひょっとするとSu CEOの述べたTOPS値はINT 8、Apple M2はINT 4だとすれば、INT 4でのRyzen AI Engineの性能は24TOPS位になるのかもしれない。先の記事でVE2202相当ではないか? と書いたが、推測は正しそうに見える。

  • Photo05: ここではCore i7-1280Pとの比較であるが、Raptor Lake世代との比較結果が興味あるところ。

それとそのRyzen AI Engineのユースケースであるが、今回Microsoftが正式にWindows Studio Effectsでサポートされる事が明らかになった。Windows Studio EffectsはWindows 11 version 22H2で追加された機能で、カメラ画像に対して

  • 背景ぼかし
  • 声へのフォーカス
  • 自動カメラ目線
  • 自動フレーミング

の機能を提供する(同種のものはMicrosoft Teamsで提供されていたが、Windows Studio EffectsはTeamsに限らずカメラ画像に対して直接処理ができる)というもので、ただしNPUのH/Wを搭載していないと利用できなかった。今回MicrosoftがRyzen AI Engineに対応を表明したので、Ryzen 7040シリーズではWindows Studio Effectsが使えることになる。

  • Photo06: 声へのフォーカス以外の3つが利用可能となる。

またAlveo V70カードであるが、公式に400TOPSでPCIe 5.0に対応とされた(Photo07)事で、VE2802が搭載されているのがほぼ確定となった。

  • Photo07: 75Wで収まるのがちょっと意外だが、FPGA Fabricで色々やらせるのでなければこんなところだろう。

隠し玉

さてここからは全く新しい話を2つ。一つはVitisにMedical Imaging Libraryが追加されたことだ(Photo08)。元々Xilinxは医療機器分野で広く利用されているが、個々に向けてImaging LibraryをVitisに追加したという話。もう一つがAMD Instinct MI300のPreviewである(Photo09)。AMD Instinct MI300は3D Chiplet構成になっており、また新しいUnified Memory Architectureを採用しているという話は今年のロードマップ記事でも紹介したのだが、その詳細が明らかにされた形だ。CPUコアは24個で、それとは別にCDNA 3のコア、それと128GBのHBM3が実装される。Su CEOによれば「5nmのChipletが9個と6nmのChipletが6個、3D Stackingの形で実装され、更にHBM3が組み合わされる」との事。会場では最初のサンプルも示された(Photo10)。ちなみにAI性能で言えば、Instinct MI250の8倍の性能と5倍の性能/消費電力比である、とされている(Photo11)。

  • Photo08: この紹介にあたって紹介されたのがIntuitiveで、同社はロボット支援手術機器を開発しているメーカーである。で、そのロボット制御にKria Robotics Kitが使えるという話かと思ったら全然違っていてちょっとびっくりした。

  • Photo09: 総トランジスタ数は1460億個。IntelのPonte Vecchioも1000億個超えとされており、良い勝負である。

  • Photo10: 画像が荒いのはご容赦を。HBM3は8 Stackである。

  • Photo11: AI性能は良いのだが、FP64の性能とかが知りたいところ。

という事で、若干の追加情報をお届けした。まだ見えない部分は多いが、これらは製品発表時にもう少し明らかになってくるだろう。