ロードマップ記事でもちょっと触れたが、Intelは今年のCESでは基調講演を行わず、また独自の発表会なども開催しない。ではあるのだが、このCESのタイミングに合わせて新製品の発表を行った。大きく分けて3種類で、

  • Desktop向け35W/65W SKU
  • Mobile向けRaptor Lake
  • Intel Processor N

である。以下順に説明して行きたい。

Desktop向け35W/65W SKU

まずはこちら。こちらは代表例としてCore i9-13900が示されている(Photo01)。実際には今回16製品が一挙発表になったが、性能開示はCore i9-13900のみである(Photo02~03)。

製品ラインナップであるが、まずTDP(PL1) 65Wの製品がこちら(Photo04)、35Wの製品がこちら(Photo05)となる。

  • Intel、Core i9-13900やMobile向けRaptor Lake、Intel Processor Nなどを発表

    Photo01: この数字はCore i9-13900K vs Core i9-12900Kとほぼ同じ。

  • Photo02: 流石に16製品全部の性能比較を出す根性はなかったもよう。

  • Photo03: この比は概ねCore i9-13900K vs Core i9-12900Kより少し大人しい程度。

  • Photo04: PL2は89W~219W。価格は$109~$549である。

  • Photo05: PL2は69W~105W、価格は$134~$549となる。

Mobile向けRaptor Lake

次はこちら。Mobile向けにも55W枠のHX、45WのH、28WのPと15WのU、という4つのシリーズが投入されることが明らかにされた(Photo06)。まずハイエンドとなるHXであるが、こちらは何とDesktopと同じ24コア(P-Core×8+E-Core×16)構成である。こちらに関してはPCHは別チップ扱いとなっている(Photo07)。トップエンドのSKUはCore i9-13950HXとなるが、こちらは競合と比べて十分高速であるとしている(Photo08~16)。

  • Photo06: このあたりはAlder Lakeの時と一緒。

  • Photo07: 最大動作周波数も5.6GHzとお高め。

  • Photo08: Z790と比較するとややPCIeレーンの数とかUSBポートの数が少ない。またRST(Rapid Storage Technology)も搭載されない模様。

  • Photo09: 純粋な整数演算性能比較という事でAppleのM1 Max/M2も入っている。

  • Photo10: Blender v3.3.1でのレンダリング性能。ただIntelの方が20W消費電力が高い事は留意すべき。

  • Photo11: こちらはAutodesk製品でのベンチマーク。こちらもRyzen 9 6900HXは20W低い。

  • Photo12: Adobe製品ベンチマーク。条件は同じく。

  • Photo13: Game Benchmark。Core i9-12900HXがBase lineになっている。

  • Photo14: Unreal EngineをBackgroundで走らせながら、ForegroundでRealityCaptureを動かした例。比較対象はCore i9-12900HX。

  • Photo15: Foregroundで8K動画の編集をしながら、Backgroundでその様子を配信するという事例。配信のフレーム落ちが1%未満まで減った、というのだがこれリアリティのあるシナリオなのだろうか?

  • Photo16: AutoDeskでマルチタスクを行った事例。

ちなみにWireless周りではAlder Lake世代からいくつか新機能が追加されているとの事だ(Photo17)。このHXシリーズを採用したモデルは60以上が予定されているとする(Photo18)。Photo19がこのHXシリーズのSKU一覧で、Core i5/i7/i9各3製品づつとなっている。

  • Photo17: BLE Audio Stackの強化、それとVR Headsetを利用する際のLatencyを20%削減したとしている。

  • Photo18: HXシリーズも幾つかのSKUがあるので、モデルそのものが60以上というよりも、各社のモデルのCPUのSKU違いを全部まとめると60以上になる、という意味と思われる。

  • Photo19: Gaming Notebook向けとは言え、PL2はいずれも157Wというのがちょっと恐ろしい。

そのHXシリーズの下にはH/P/Uの各シリーズが投入される(Photo20)。こちらはPCHがCPUパッケージに統合される形で、その分I/Fがやや少なめになっている(Photo21)。性能比較でCrossMarkというのはどうかとは思うのだが、一応全ての項目でCore i9-13900HKが他を10%以上上回る性能を出している(Photo22)のはDesktop版のRaptor Lakeと同じく、動作周波数の向上とL2の増量、それとEnhanced Thread Directorの効果でよりE-Coreをブン回す事になった事で実現したものと思われる。

  • Photo20: この辺もAlder Lake世代と同じ。

  • Photo21: メモリの方も最大でDDR5-5200までである(LPDDR5xなら6400まで)。また最大構成でもP-Core×6+E-Core×8となる。

  • Photo22: これで比較するとRyzen 9 6900HXが非常にスコアが悪いのだが、これはCrossMark側の問題な気がしてならない。

またGPU周りも色々改良があるとされ(Photo23)るほか、Thunderbolt 4/USB 3.2周りでも地味ながら機能向上がなされている(Photo24)。またこの世代からM.2 Slot経由であるがMovidiusのVPUを標準で搭載可能になっており、これを利用してより広範なAI対応アプリケーションが実施可能になる、とする(Photo25)。

  • Photo23: XeSSに関してはハードウェアというよりもソフトウェア側の問題(なので、Alder Lakeベースでも恩恵を受ける)と思われる。

  • Photo24: ここにあるように新機能はDP Alt ModeでDP 2.1をサポートし、Dual 4K/60HzないしFull HD/240Hzをサポートすることと、USB 3.2 Gen2×2をサポートしたことである。

  • Photo25: ただしまだ必須扱いでは無くOption。これがCPU内部に入るのは次のMeteor Lake世代からである。当面はMovidius VPUを利用するアプリケーションの充実が急務であり、現時点ではソフトウェア開発のためのプラットフォーム的な位置付けに留まるのは仕方がない。

SKU一覧であるが、Hシリーズは合計11製品(Photo26)、Pシリーズは4製品(Photo27)、Uシリーズは7製品(Photo28)となる。

  • Photo26: ハイエンドのCore i9のみ倍率変更可能のK SKUが用意される。PL2は95W/115Wというのは、HXシリーズよりは大分良いとは思うが、それでも大きな数値だ。

  • Photo27: こちらはi7とi5のみ。PL2も64Wとだいぶ現実的。

  • Photo28: Uシリーズは一律PL2は55W。

このRaptor Lakeに対応したEvoプラットフォームも当然用意されるわけだが(Photo29)、Raptor Lake世代のEvoでの追加項目として挙げられたのがこちら(Photo30)である。まぁそれだけだと魅力が足りないので、Unisonを前面に押し出すのは当然と言えるだろう(Photo31)。現状Unisonに対応したAlder LakeのEvoは非常にすくなく、これをRaptor Lake世代でもっと増やして行くという話であった。

  • Photo29: このレベルの話だとAlder Lake世代と大差ない。

  • Photo30: Photo16と内容が被るのはまぁ仕方がない。

  • Photo31: Unisonに対応するiOS/Android Versionも増やして行く予定との事。

Intel Processor NとCore i3-N

最後が事前に話題になっていたPentiumやCeleronに代わる「Intel Processor」である。従来のPentiumやCeleronを廃して新しいIntel Processorブランドを立ち上げた理由としては、例えばユースケースの中にVideo Conferenceなど従来より高い性能が要求されるものが入ってきて、従来のCeleron/Pentiumより高い性能のプロセッサが必要になってきたから、という話であった(Photo32)。

  • Photo32: 「だったらCeleron/Pentiumの性能の底上げを図ればいいのでは?」と思わなくも無いが、流石に聞くのは憚られた。

そのIntel Processorであるが、コアとして実装されるのはGracemontで、4~8コア構成。それをIntel 7で製造する。要するにAlder Lake-Nとして知られていたものが投入される形だ。これは上位にあたるCore i3-N305も同じ模様である。いずれも既存のPentium Silver N6000と比べて大幅に性能向上がある、とされる(Photo33)。ただE-Coreのみで構成されるから消費電力は当然低く、またGPUを従来のCeleron/Pentiumより強化した事で使い勝手が大幅に上がった、という話である(Photo34)。構成としてはこんな感じ(Photo35)で、流石にI/Oは大分省略されている(その代わりeMMC/UFSが入っているのがちょっと目新しい)。またWi-Fi 6EのサポートなどConnectivityは充実している他、ビデオ会議向けなどに向けてGNA 3.0のサポートが入っているのも流石である(Photo37)。

  • Photo33: とはいえ、例えばCeleron 7305と比較してどこまで性能が上がるか? というのは微妙なところかもしれない。多分動作周波数で性能をカバーする形になっているものと思われる。

  • Photo34: 実際ビデオ会議とかでもGPUの性能が高ければCPUはそこそこでも動くわけで、その意味ではIntel ProcessorはPentium/CeleronよりGPU性能を大幅に引き上げたモデル、と考えた方がいいのかもしれない。

  • Photo35: 流石にCPUからはPCIeレーンが出ないので、Discrete Graphicsを接続する事は考えて居ない模様。

  • Photo36: GNAは本来P-Coreのオプション扱いだったと記憶しているが、Alder Lake-NではこれをE-Coreのアクセラレータとして実装した訳だ。

  • Photo37: Chrome OSもターゲットに入っているのは、教育機関向けの需要を考えれば当然であろう。

このIntel Processor N及びCore i3-Nシリーズを搭載する製品は2023年中に50以上登場の予定、との事であった(Photo38)。ちなみにSKU一覧はPhoto38の通り、Core i3-NとIntel Processor Nが各2製品づつとなっている。

  • Photo38: Core i3-Nが8コア、Intel Processor Nが4コア構成。E-CoreだからHyperThreadingは当然無効である。