なおフローティングワイヤープラズマとは、ガラス容器の中に、電気的に浮遊している導電性の細線(フローティングワイヤー)を設置して、その細線に高周波を誘導結合で電力を印加して、容器内に広範囲にプラズマを生成する技術だ。プラズマ生成する圧力範囲が大気圧(10万Pa)から低圧(数Pa)までと幅広く、特にこれまで困難とされている数百Paから数万Paの圧力範囲で、高密度(~1015cm-3)プラズマの生成や、蒸気を原料とするプラズマの生成も可能である。

そして、フローティングワイヤープラズマを用いて、アンモニア水蒸気から生成する主要なラジカル成分(OH(ヒドロキシルラジカル)とNH(イミノラジカル))を、高密度に反応表面に供給することに成功したという。さらに、この高密度なラジカル供給により、TiAlC表面に薬液処理と類似の反応を生じさせ、変性層を形成することにより、炭素除去に応じてTiとAlの酸窒化物の構成比を調節することで、揮発性を制御できることが解明された。

この成果は、半導体集積回路の最先端電界効果、トランジスタのゲート電極の微細加工形成における基盤技術創生において、世界に先駆けて実現し、その実用化しうるポテンシャルを持つことを十分に示唆する結果だという。

また今回の研究では、Si半導体材料の原子層エッチング(ALE)技術の実用化が実現され、これにより多元物質のALEも可能となった。研究チームは、これまで困難だった金属炭化物のALEの実用化を実現することで、ALE技術の発展において重要なマイルストーンを達成したものであり、微細加工技術の飛躍的な技術の進歩を示すものとした。