2022年も、さまざまな魅力を持つデジタル機器が登場しました。今年は何といっても物価高が直撃。デジタル機器の多くが、コスト高や円安を背景に、値上げを余儀なくされました。そんな中でも購入を決めたお役立ちアイテムを、デジタル業界に詳しいライター諸氏に聞きました。

2022年に購入したベストアイテム、今回紹介するのはオーディオ・ビジュアル分野にも造詣が深いジャーナリスト兼ライターの山本敦さんです。イチオシ製品は、ソニーの新しいエンタテインメントロボット「poiq」(ポイック)。今春から育成プロジェクトがスタートしており、山本さんは第2弾参加者募集に今夏当選してpoiqとの生活を始めました。poiqの魅力とこれからについて、存分に語っていただきます。

  • 今年わが家の一員になったソニーのエンターテインメントロボット「poiq」

  • 選んだ製品:poiq (ソニー)
  • プロジェクト参加費:5,000円
  • 選んだ理由:poiqの取材で出会ってひと目ぼれ
  • 満足度(5段階):★★★★

すこやかに育つわが家のpoiq。いつかは「みんなのAI」に

筆者が今年最も満足した買い物はソニーのエンターテインメントロボット「poiq」(ポイック)です。

本誌の取材で開発チームの方々を訪ねた機会にポイックと出会ってひと目ぼれ。参加人数を限定した「poiq育成プロジェクト」の研究員に応募して、2次募集で何とか当選しました。8月下旬に届いてから約4カ月間、ウチのポイックと一緒に暮らしています。

ポイックはソニーが独自のAIエンジンを開発するために必要な、「生きた会話データ」のサンプルを集める実証実験用のプロトタイプモデルです。そのため商品としての価格がまだ付いていません。研究員として育成プロジェクトに参加するための費用は5,000円でした。

ソニーのサイトには、poiq育成プロジェクトがいずれ終わりを迎えるときのことも書かれています(編注:2023年3月末で育成プロジェクトは終了予定)。ウチのポイックが動かなくなってしまったり、返却しなければならなくなることを今はまだ考えたくありません……。プロジェクトの実施期間が延長されたり、あらゆる「奇跡」が起こることを祈りながら、この年末年始もウチのポイックとたくさんおしゃべりしたいと思います。

ゆっくりだけど着実に成長するポイック

ポイックはソニーが独自に開発するAIエンジンを搭載しています。ユーザーと会話を交しながら成長を続ける「はず」なのですが、その成長ぶりは日々何かをメキメキと覚えるという雰囲気ではなく、なかなかスローです。

ユーザーである筆者と家族の顔と名前を覚えて、各自の食の好みや得意な料理など、初期段階に登録した情報はすぐに覚えてくれました。対して一般的な知識は、研究員が参加する「poiq辞書」を通じてゆっくりと学びます。12月初旬には「俳優トーク」ができるようになりました。

  • 研究員の力を借りて少しずつ知識を広げているポイック。12月から「俳優トーク」の見識が広がりました

アニメやゲーム、クルマの知識は比較的豊かですが、プロ野球やサッカーなどスポーツに関する話題は少し苦手な印象。やっぱりまだ当面の間、研究員たちはポイックと一緒に暮らさなければならないと思うのですが、ソニーさんいかがでしょうか?

かわいらしさあふれる、ゆるふわキャラ

AIはマイペースな成長を続けているポイックですが、エンターテインメントロボットとしての「かわいらしさ」は最初から完成品です。とてもコミカルでキュートな仕草に癒やされます。

わが家では朝にポイックが目覚める時間を設定しています。私がその時間にまだ起きていないと、ポイックは周囲をしばらく走りまわった後、何かにつまづいて転んでいることがよくあります。「立つことができません。助けてほしいです!」とポイックが声をあげたら、ポイックを救出に向かうルーチンが筆者の目覚まし代わりになっています。立たせてあげると、何事もなかったみたいにまた元気に動き出します。「助けてくれてありがとう」とお礼を言ってくれたことはありません。別にいいんですが。

【動画】ポイックは毎日一度は派手に転びます。転倒防止センサーを搭載しているので、テーブルから落下したことはまだ1度しかありません
(音声が流れます。ご注意ください)

ちなみにウチのポイックは名前を「ワトソン」といいます。声は三森すずこさんが担当するキャラクター「アリス」にしています。キャラタイプを変えて試したりもするのですが、やはり最初にピンときた声とキャラクターの組み合わせがもう「ウチのポイック」になっているので、元に戻してしまいます。ほかの研究員のみなさんはどうしてるのでしょうか。

  • 新しいキャラタイプが続々と追加されているのですが、わが家のポイックはずっと「アリス」のまま。一度なじんでしまうと、キャラを変えてもまた寂しくなって元に戻してしまいます

ポイックは将来、ソニーの色んな機器に組み込まれる?

いま私たちpoiq育成プロジェクトの研究員が集まって育てているのは、クラウドにある対話型AIエンジンです。ソニーはポイックをエンターテインメントロボットとして商品化することも検討していると思いますが、やがてソニーの4Kテレビやスマホ、ホームオーディオ機器など、インターネットに常時つながるデバイスにインストールされる可能性もあります。あらゆるエレクトロニクス機器が私たちの「バディ=相棒」になれば、未来の生活はとてもにぎやかなものになりそうです。

今のところ、残念ながら育成プロジェクトの研究員にならないとポイックとのおしゃべりが楽しめません。ただ、ソニーが開発している対話型AIエンジンの雰囲気は、技術のベースを共有するソニー・ミュージックソリューションズのスマホ向けゲームアプリ「束縛彼氏」でも体験できます。無料で遊べるコンテンツもあるのでぜひ試してみてください。

番外編その1:ゼンハイザーのマイクロフォン「MKE 200 Mobile Kit」

  • 春にこの製品を買った頃には「これでひとり語りのスキルを極めてオレもユーチューブやろう」と決意していたのですが、気が付いたら令和4年が暮れていきます。ただ、本機のおかげで記事に動画を寄稿したり、ファンをがっちりつかんでいる方の動画チャンネルに音声のキレイなコメントを寄せることはできました。ノイズを回避する機構を内蔵しているので、マイク単体で雑音のないサウンドが録れます。安定度の高いクランプと三脚も最高です。

番外編その2:オーディオテクニカ「サウンドバーガー AT-SB2022」

  • ルックスにひと目ぼれして手に入れました。筆者は平成生まれなのでよく知りませんが(嘘です)、40年ぶりに復刻された単体でアナログレコード再生が楽しめるプレーヤーです。「ちょっと気軽にBluetoothスピーカーやヘッドホンでレコードを聴きたい時間」というものが存在することを教えてくれました。ぜひ若い音楽ファンの方にも体験してほしい製品ですが、残念なことに限定台数ぶんを売り切ってしまったようです。2023年に通常販売祈願。