低環境負荷回路に関しては、有機半導体分野の研究を推進する東大・竹谷教授の研究室との共同研究で、カーボン材料で全電極を構成する有機トランジスタ作製プロセスを開発。カーボン電極有機トランジスタを用いて、CMOS構造のアナログ発振回路やデジタル変調回路が構成された。

一方の低環境負荷電池は、有機半導体で構成された低環境負荷回路を駆動するには電荷輸送に高い電圧が必要なため、低環境負荷材料として選定されたカーボンを電極として適用するための3次元の導電性多孔体構造の形成と、電池の直列化構造による高電圧化についての取り組みが行われた。

低環境負荷センサ・デバイスの構成は、低環境負荷電池と、低環境負荷回路と、市販スピーカ(またはオシロスコープ)、ケーブルがブレッドボード上で接続された構成となっている。低環境負荷回路は、発振回路や変調回路など、要素回路ごとに作製され、ブレッドボードを介して接続されている。

  • 低環境負荷な材料で構成したトランジスタ構成

    (左上)低環境負荷な材料で構成したトランジスタ(カーボン電極の有機トランジスタ)構成(側面図)。(右上)トランジスタの集積回路(上面からの画像)。(左下)低環境負荷センサ・デバイス(回路・電池)の実証試験構成図。(右下)実機画像 (出所:NTT Webサイト)

低環境負荷センサ・デバイスには、3bitの個体識別番号が付与されており、低環境負荷電池が液体を検出すると発電。通電した低環境負荷回路が、1bitの検出信号と3bitの識別番号を重畳した発振周波数140Hzの通信信号を生成し、スピーカで音波を発生するという仕組みが採用された。実験の結果、低環境負荷センサ・デバイスは、4bitの通信信号の信号を出力していることが確認できたとする。

  • 低環境負荷センサ・デバイス(回路・電池)の構成材料一覧

    低環境負荷センサ・デバイス(回路・電池)の構成材料一覧と従来材料の一例 (出所:NTT Webサイト)

研究チームでは今後、低環境負荷を指向したセンサ・デバイスに関する社会的コンセンサスの醸成に向けて、今回の成果を基に広く議論してもらうとしているのと同時に、低環境負荷な電池・回路に関する要素技術の高度化を進めていくという。また、社会実装を目指して外部機関・企業などと連携しながら、低環境負荷ならではのユースケースを探索し、これまでにない新しいサービスの創出を進めていくとしている。