カフ型電極は、PEDOT-PU電極を2枚のPVAハイドロゲルフィルムで挟み込んで一体化させる形で実現。挟み込む際に、下側のフィルムを引き伸ばしておくことで、接着後に管状に変形させるようにしたという。管の内径はフィルムの厚みと引き延ばしの強度によって1~6mmの範囲でコントロールできたとする。

実際にカフ型電極の巻付きによる固定力の評価が行われたところ、直径2mmの棒に対して「横滑り(ズレ)」と「剥がし」のどちらにおいても電極の自重を十分に超える固定力が観測されたとする。一方で、ゲルの巻付きによって発生する圧迫圧力を自作の棒状センサで計測すると、神経に傷害が生じ得る1.3kPaよりも十分に小さい200Pa程度であることが確認されたともしているほか、有機物のみで構成されているため、MRI撮像時にもアーティファクト(ノイズ)が発生しないことも確認されたともする。

さらにブタによる動物実験により、迷走神経に対する密着固定の維持と刺激有効性の検証からは、ブタの迷走神経に取り付けたゲル製カフ電極による刺激(10mA、0.5ms幅、30Hz)で生じた徐脈(心拍数の低下)の観測に成功し、迷走神経刺激が適切に行えていることが示されたという。加えて、サーモカメラによる観察も行われ、電極周辺に有意な発熱が生じていないことも確認された。

  • (上)PEDOT-PU/PVAカフ型電極の作製の模式図。(下4点)迷走神経のモデル(直径2mmのゲルチューブ)への取り付けの様子 (出所:東北大プレスリリースPDF)

,A@)PEDOT-PU/PVAカフ型電極の作製の模式図|

なお、研究チームでは、実用化に向けて、長期留置による電極性能(固定力、刺激性能)の劣化を最小に留める電極形状のデザイン、ゲル材料の改質、癒着防止剤などの徐放機能の搭載などを予定しているという。また、迷走神経刺激に限定せず、ほかの末梢神経(感覚神経、運動神経)や「動く」筋組織への刺激など、ゲル製電極の特徴が活きる応用への拡充も進めていくとしている。