具体的には、NV中心の電子スピンおよび核スピンが持つ3準位構造に着目。余剰なエネルギー準位を光シュタルクシフトによってチューニングし、スピン量子ビットの量子ゲートをアクティブ化、または非アクティブ化する新原理(光アドレス量子ゲート)が考案された。

  • 光アドレス量子ゲートの概念図

    光アドレス量子ゲートの概念図 (出所:横国大プレスリリースPDF)

あくまで光は、操作したいNV中心を選択するために使用され、量子制御自体は信頼性の高いマイクロ波およびラジオ波で行うため、高精度でのスピン制御が可能になるという。

実験では、電子スピン量子ビットの初期化、ゲート操作、読み出し、および保持の基本的な量子制御のすべてで動作が実証され、約300nmの空間分解能と、最大で95%の忠実度が得られることが示されたとする。これは、制御対象のNV中心から約300nm以上離れたNV中心には影響を及ぼさずに、95%の確率で正しい制御ができることを意味するという。

さらに、電子スピンを媒介にして、核スピン量子ビットも光でアクティブ化できることが示され、電子-核スピン量子ビットの量子もつれを生成することに成功したとする。この量子もつれは、量子中継の過程で光の量子情報を核スピンメモリに転写する際に必要となるものだという。

なお今後については、長寿命量子メモリを搭載した大規模集積量子メモリの実現に向けて、複数NV中心の同時制御を試みるとしているほか、その後、大規模量子ストレージによる高速な量子中継技術を確立し、量子暗号通信や分散型量子計算、秘匿量子計算の通信基盤となる量子インターネットの実現を目指すとしている。