KDDIは7月29日、2023年3月期第1四半期決算を発表しました。それによれば、今期の連結業績は増収減益でした。通信料金の値下げが影響しています。ただ、DX、金融、エネルギー事業などの注力領域が伸びており、減少幅は軽減されました。なお決算発表会に先立ち、2022年7月2日に発生した通信障害について1時間ほど説明の時間が用意されました。

  • KDDI 代表取締役社長の高橋誠氏

増収減益の要因は?

売上高は1兆3,517億円(前年同期比4.0%増)、営業利益は2,969億円(同0.8%減)でした。営業利益の内訳を見てみると、マルチブランド通信ARPU収入が292億円の減益となったものの、注力領域で152億円の増益、このほか3G停波関連、減価償却費の減少などを受けてトータルでは23億円の減益にとどめました。

  • 連結業績ハイライト

  • 連結営業利益の増減要因

マルチブランドID数は減少しましたが、これは3G回線の停波により25万の契約が解約されたことにともなう影響とのこと。その25万契約を除いて考えれば、「マルチブランドID数は順調に拡大している」(高橋社長)との解釈です。UQ mobile、povoの2ブランドは合計で約700万契約に到達しています。

  • マルチブランドID数と通信ARPU。UQ mobile、povoの好調を受けて、通信ARPUは減少傾向ながら「これは想定の範囲内」と高橋社長

  • 注力領域の主要指標

最後に「今般、発生させてしまった通信障害を踏まえまして、お客様の信頼回復と5G時代を見据えた通信品質の向上に向けた体制を強化します。持続的成長に向けた取り組みを推進して参ります」と高橋社長は頭を下げました。

他社に乗り換えたユーザーも?

通信障害についての会見、および決算発表会では記者団から質問が寄せられ、高橋社長が回答しています。決算に関連した質問を抜き出すと、以下の通りでした。

総額73億円の返金という、KDDIにとっても過去最大の返金額となった今回の通信障害。このコストは、どのような形で誰が負担することになるのか、と問われると高橋社長は「経営に影響が出るまでの額ではありませんが、我々の経営努力でカバーしながら対応していきます。コスト削減に取り組むなど、経営のなかで何とか吸収していきたい」。会計処理は『特別損失』にするのか、という質問には「いま検討中で、現時点では確定していません」と回答しました。

返金以外に、どのような費用があるのかについては「すべてが完了していないので、まだ開示できません」。障害が発生したのは7月2日ということで、第2四半期の決算で触れることになる、と説明しました。

今回の障害を機に、他社に乗り換えたユーザーも多かったのでは、との問いには「お客様の信頼を失ってしまったと思っています。足元の数字を見る限り、解約の数字は大きくありません。でも、新規契約のお客さんには影響が出ています。信頼を回復するには時間がかかると思いますが、全社を挙げて信頼を回復できるよう、地道に努力していきます」と説明。

同様に、楽天モバイルが基本料金0円を廃止したことで利用者がpovoに流れていたのに、今回の通信障害によって流れが止まったのでは、と聞かれると「楽天さんの0円廃止の課題の後、たくさんのお客様に来ていただいたのは事実です。実はこれが続いており、今回の障害の後も、まだウチから出ていく数より、新規で入ってくる数のほうが多い状況です。でも、一時期の勢いよりは落ちています」と高橋社長。なお、povoは利用料金が0円の状態が6カ月続くと契約が自動解約される仕様です。その解約数が6月から出始めている、とのことでした。

au PAYについて、今後どのように盛り上げていくのかと聞かれると、まずは「キャッシュレス決済のサービスは、採算を黒字化するのが本当に大変な事業なんだろうと思っています。これはPayPayさんも同様かと思います」と回答。そのうえで、KDDIではau PAY、auスマートパスのようなサービスを通信と融合させる一方で、ファイナンスはファイナンスの領域で伸ばして事業の柱にしていく、と説明しました。

ローミング収入が減っているのは楽天が自社回線に切り替えている影響か、と聞かれると「そのような理解で結構だと思います。楽天ローミングの場合、人口カバー率が70%を超えると終了になります。でも『まだやっぱり残してくれ』っていうエリアも結構多くて、完全に閉めた県は非常に少ない状況です」と回答しました。