KDDIは10月29日、2022年3月期 2Q(2021年4月~9月)の決算説明会を実施しました。登壇したKDDI代表取締役社長の高橋誠氏は、記者団の質問に答える形で「povo」「楽天モバイルの展開状況」「国の電波政策」「ドコモの通信障害」「NTTの一体化」「iPhone 13の供給」について、詳しく説明しています。

  • KDDI代表取締役社長の高橋誠氏

上期の連結業績について、売上高は5兆3,500億円(進捗率49.1%)、営業利益は1兆500億円(進捗率54.6%)の見通し。高橋社長は「通期予想に向けて順調な進捗です。値下げの影響は想定内で、先を見据えてオペレーションを実施していきます」としました。業績を牽引する成長領域(ライフデザイン領域、ビジネスセグメント)についても、「ともに順調な進捗」と評価しています。

  • 上期の連結業績ハイライト

povoは100万超

記者団の質問に、高橋社長が回答していきました。

新プランの「povo 2.0」は、0円から利用できることでも話題を集めました。そこで減収の影響について聞かれると「立ち上げのタイミングでは(オンライン専用ということで)混乱もありお客様にご迷惑もおかけしましたが、だいぶ落ち着きました。また11月から拡販に努めていきます。契約者数は、前回の発表段階では90万でしたが、現在、100万を超えています。ひと月で10万以上も伸びており、順調に立ち上がってきました」と笑顔を見せます。

プランの特徴であるトッピングについては「トッピングの利用者比率は、はじめこそ全体の半分くらいでしたが、その後の2~3週間で4分の3くらいまで上がってきました」とします。ARPU(1契約者あたりの売上平均)については、UQモバイルよりも高いレベルだと明かしました。

  • UQモバイルについて

  • povo 2.0は9月29日よりスタートした

「そもそもauのモメンタムが落ちてきたころに、まずはUQモバイルで他社に対抗しました。そして、ゼロから始まるコンペチター(=楽天モバイルのこと)もいたので、そこに手を打つ意味合いでpovoを入れました。これにより、我々のグループから他社に流出する動きもだいぶ収まりました。いまのところ戦略の通り動いています。povoは、個人的にも本当にやりたかったサービス。モバイル界のDXのようなイメージです。入ってきたお客さんがどんな人か、データで知り、継続的に一生懸命アプローチをしてトッピングしてもらう。売ったあとも、どんどんお客さんとつながっていける、そんな設計です」。

楽天モバイルは、ちょっとどうかと…

KDDIのネットワークを利用してきた楽天モバイルでは、少しずつ自社回線に切り替えを始めています。これについてKDDI側の影響を聞かれると「我々からすると、粛々と対応している状況です」と回答したのちに、少し表情を緩めて「彼らも『非常に速いスピードでエリアを拡大しています』と言ってみたり、今度は『半導体が足りないのでエリア展開が遅くなります』と言ってみたり、あるいは『ローミング代が高すぎる』と言ってみたり、まぁいろんなことをおっしゃる。ちょっとどうなのかな、と思うところはあります」と苦笑いしました。

そのうえで、改めて「粛々と対応していきます」。契約では、楽天の自社回線で70%をエリア化できた地域では順次、ローミングを解除していくことになっていると説明しますが、「70%を達成したけれど引き続きネットワークを貸してほしい、と言ってくる基地局数が思っていたより多い印象です。したがって、想定していた以上にローミング収入は多いのかな、と思います。それでも今年度(ローミング収入は)ピークアウトしていくと思います」。

そして「大変だろうなと思います。我々もドコモさんもソフトバンクさんも、すでに99.9%のエリアを持っています。彼ら(楽天モバイル)はいま96%を目指していますが、70%達成の時点でローミングを解除してしまう。そうすると解除したエリアから、また基地局を打っていかなくてはいけない。エリアになっていない部分が、結構増えていくのではないでしょうか」とも話しました。

ちなみにKDDIでは、今年度中に3G回線を巻き取っていく(停波する)予定で、来年度には撤去費用の負担を減らせると見込んでいます。そのことを念頭に、高橋社長は「これと入れ違いで、ローミング収入による減収が良いバランスで重なっていくのではないでしょうか」と説明しました。

国の電波政策について

総務省では、3G電波の停波にともなって空いた周波数を『新しい事業者に渡すべきでは』といった議論まで出ています。この受け止めを聞かれると「総務省さんは昨年(2020年)11月~今年8月まで、デジタル変革時代の電波政策懇談会を実施してきました。国の電波政策として重要なテーマだと認識しています。我々もパブリックコメントを出しています」としたうえで、「以前、800MHzのときにも周波数の再編がありました。国の政策で電波の入れ替えをやった。当時、まだお客さんは少なかったけれど、かなり大変でした。周波数というのは空いたからすぐに使えるというものではなく、再配置はお客様に多大な影響を与えます。そのあたりも、ていねいな議論をしてほしいと申し上げています。今後5年間でこれを議論して、そのコストを各事業者が受け持っていくことで、5Gの展開速度を緩めないか。Beyond 5Gにつながることなのか。よくよく考えていかないといけません。そう簡単な問題ではないかなと思います」としました。

  • au 5Gの取り組み状況

ドコモの通信障害について

NTTドコモが10月14日に起こした通信障害についてコメントを求められると、「人ごとにしてはおけない話題です。いまの通信インフラは、昔と違ってかなり複雑になってきました。電子決済、交通産業にも関係します。ドコモさんは回線がタクシーにも使われており、影響が大きくなった。我々もIoT回線を多く提供しています。社会インフラを預かる通信事業者として、しっかりやっていかないといけない、と改めて思った次第です」。

そして「IoT回線工事が通信障害に起因しているとのことでした。IoT機器はそれぞれのトラフィックこそ大きくありませんが、トランザクションの数がものすごく大きくて、一度、事故を起こすとリカバリーが難しい。これをどうセーフティに運用していくか。ドコモさんの事故を我が事のように捉えて、見直していきます」。

  • KDDIのIoT回線数は21年7月時点で2,000万を突破した

NTTの一体化について

NTTドコモの『エコノミーMVNO』の取り組みについて聞かれると「答えにくい質問ですが、我々はpovoを入れたこともあり、すぐさま手を打たないといけない状況ではないかなと。ビッグローブ、J:COMなど、ターゲットに応じたMVNOもやっています。まずは新しいpovoの取り組みで、十分に対応できると考えています」。

NTTドコモが、NTTコミュニケーションズ、NTTコムウェアの子会社化を発表したことについては「NTTグループは今年、いろいろなことがありました。そしてこの秋の段階で、一定の見解をお出しになった。ドコモの配下に2社が入るということで、NTTグループの一体化について懸念があります。公平競争の観点から『逆戻りしないように』としっかり主張し続けていこうと思います」としつつも、「あまりネガティブなことを考えても仕方ありません。3社が一緒になったことで、相手の目指すところが明確になった部分もある。我々は今年度、法人部門で売上高1兆円を実現できそうですが、彼らは現在1.6兆円くらいだそう。そして2兆円を目指すとおっしゃっていました。敵が大きくなり、挑む目標が明確に見えてきた。社内にもハッパをかけやすくなりました。これに負けない方向性で進めていきます」。新しいNTTドコモグループは中期戦略もKDDIに似てきたように感じる、と苦笑いしつつ「我々も来春の決算に向けて、次の中期計画を練っています。あれ(NTTドコモグループ)にない特色を入れていきます」と意気込んでいました。

iPhone 13の供給について

半導体不足が及ぼす影響については「基地局の整備に関しては、影響は出ていません。基地局で使われる半導体はハイパフォーマンスで、今年度の工事分については早くから調達していました」と回答。細かい部品など、一部に影響は出ているけれどクリティカルな状況にはなっていないと説明します。また、iPhone 13の供給についても「いまのところ需要に応じて充分な在庫を持っており、予約分について対応できています」としました。

auショップはどうなる?

販売店の役割については「auショップは非常に重要なお客様接点、という考えに変わりありません。UQモバイルの取り扱いも始まりました。また、au Styleというショップでは、ご用意したライフデザイン商材を販売しています。これを増やしていきたい。auショップの役割は変化しつつあり、今後は通信以外の販売を担ってもらうことがポイントになってきます」。

そして「デジタルデバイドが進んでいる時代です。地方創生も進めますが、お客様にスマートフォンを使ってもらえる世の中にしていきたい。スマートフォンを勉強していただく拠点としても、auショップが有効だと考えています。端末の販売台数が減ってきている今、商材を増やしながら、引き続き代理店さんとは大事なパートナーとしてお付き合いしていければ」と話していました。