グーグルのイヤホン、Pixel Budsシリーズから初のアクティブノイズキャンセリング機能を搭載する新モデル「Google Pixel Buds Pro」が7月28日に発売されました。

見どころ満載な注目機の実力を知るために欠かせない、7つの特徴にスポットを当てた実機レポートをお届けします。AirPods Proなど人気のノイキャン搭載ワイヤレスイヤホンと音や性能も比較してみました。

  • グーグルのフラグシップモデルとなるワイヤレスイヤホン「Google Pixel Buds Pro」が発売されました

シリーズで初めてノイキャン機能を搭載!

Google Pixel Budsシリーズは、スマホのGoogle Pixelとの相性もベストなグーグル純正の完全ワイヤレスイヤホンです。Google Pixel Buds Proは、音楽リスニングやハンズフリー通話の音声以外に、不要なノイズを電気的な処理によって打ち消す「アクティブノイズキャンセリング機能」を、シリーズで初めて搭載しています。

  • グーグルのオンラインストアの販売価格は23,800円。4色のカラバリが揃いました(左からCharcoal、Coral、Lemongrass、Fog)

  • ロゴを配置する側面にタッチセンサーリモコンを内蔵。写真のカラバリ「Charcoal」(チャコール)のモデルは、濃淡の違うグレーによるスタイリッシュなツートンカラー仕上げです

本機にはグーグルが自社で設計した、ワイヤレスオーディオやAI機能を高度に制御するシステムオンチップ(SoC)が搭載されています。

ハードウェアとソフトウェアもすべてグーグル純正なので、例えばGoogle翻訳アプリを使う「リアルタイム通訳/翻訳」(使い方レポートはこちら)の機能などは、Google Pixelシリーズのスマホと組み合わせた時にとても使い勝手が良いです。

  • イヤホンによる音声入力からスマホのGoogle翻訳アプリを起動。流ちょうな外国語の通訳/翻訳機能が使えます

Pixel Buds ProはグーグルのPixelスマホだけでなく、Android 6.0以上を搭載するスマホにもベストマッチします。また、Androidデバイスに比べると一部使えない機能もありますが、iPhoneやノートPC、ポータブルオーディオプレーヤー、スマートTVなどBluetoothオーディオに対応する製品との組み合わせにも幅広く対応します。

Pixel Buds Proをおすすめできる「7つのポイント」

今回はPixel Buds Proのさまざまな機能を、同日に発売を迎えるグーグル純正のスマホ「Google Pixel 6a」に接続して試しました。ざっと試してわかった、筆者がPixel Buds Proの特長として推したい7つのポイントを紹介します。

【1】ノイキャンの消音効果がとても強力

Pixel Buds Proが搭載する、独自アルゴリズムによるアクティブノイズキャンセリング機能の効果がとても強力です。

筆者はカフェや電車の中など騒々しい場所で試しましたが、ノイキャン機能をオンにすると騒音がすっと消えました。イヤホンの音量をあまり上げなくても、音楽やハンズフリー通話、動画の音声がしっかりと聞こえるので、耳に優しいイヤホンであるといえそうです。

  • ペアリングしているスマホ、またはイヤホンのリモコンの長押し操作により、ノイキャン/外音取り込み/両方オフのステータスが切り換えられます

【2】イヤーチップのフィット感を自動調整

本機の使用を始める前に、イヤホンの「デバイスの詳細」設定から「イヤーチップのフィット感の確認」を済ませておきましょう。この機能はAndroidスマホにつないだ場合のみ対応しています。スマホのBluetooth接続機器リストを開き、Pixel Buds Proの隣にある歯車の形をした設定アイコンをタップします。

イヤホンを耳に装着して、静かな場所で約20秒間のテストトーンを再生すると、選んだイヤーチップのサイズが自分の耳に合っているか、イヤーチップが耳に正しく装着されているかをチェックしてくれます。

  • スマホに接続されているBluetooth機器のリストからPixel Buds Proを選択。デバイスの詳細設定が表示されます

  • 「イヤーチップのフィット感の確認」を選択すると、ユーザーの耳にイヤホンのフィットを調整するためのガイダンスが利用できます

パッケージに同梱される3種類のイヤーチップから左右の耳、それぞれに合うサイズを選んで着けると、理想的な消音効果と快適なフィット感が得られます。

  • S/M/L、3サイズのイヤーチップを同梱。イヤホンのノズルの形状が特殊なので、サードパーティのイヤーチップへの交換が難しいかもしれません

正しいサイズのイヤーチップを装着してノイキャン機能をオンにすると、人それぞれ違う耳の形状に合わせて消音効果を最適化する、グーグル独自の「サイレントシール」機能が働きます。耳栓タイプのイヤホンによる独特な“耳詰まり感”も解消されます。

街を歩きながら音楽などを聴きたい場面では、イヤホンまたはスマホからのリモコン操作により「トランスペアレンシーモード(外音取り込み)」に切り換えて周囲の環境音が聞けるようにすると、安全なリスニングが楽しめます。

【3】大口径11ミリドライバーのサウンドがパワフル

Pixel Buds Proには、本機専用に設計した11ミリの大口径ダイナミック型ドライバーが搭載されています。

Pixel 6aにつないで試聴してみました。とても量感が豊かでパワフルなサウンドです。ボーカルの声がふくよかで、ピアノやギターのメロディにも独特な温かみが感じられます。筆者がふだんよく聴くロックやポップス系の音楽によく合いました。動画配信はアクション系のドラマやアニメのサウンドにマッチすると思います。

デバイスの設定から「ボリュームEQ」をオンにすると、低音・高音のバランスを持ち上げて、エネルギー感が加えられます。音量を下げた状態での聞こえ方を補正する機能ですが、小音量でも音が聞こえやすくなれば、耳にかかる負担も軽減されます。ハンズフリー通話の際に使うと人の声も少し聞こえやすくなりました。

  • ボリュームEQをオンにすると、小音量再生時の帯域バランスを聞こえやすく整えてくれます

【4】通話音声が劇的にクリア

Pixel Buds Proは、ハンズフリー通話の音声をとてもクリアに、会話の相手に届けられるイヤホンです。

通話中はイヤホンの外側に向けたマイクで環境音を拾い、口もとに向けたビームフォーミングマイクで、声を正確にピックアップします。それぞれの音声が機械学習によるアルゴリズムを介すると、人の声だけがクリアに抽出されます。背景のノイズを消しながら、人の声だけを伝えるノイズ低減技術が見事です。

  • イヤホンの外側に向けて配置されたマイクが環境音を拾い、ユーザーの通話音声だけを選り分けてクリアに伝えます

【5】ふたつのデバイス間の自動切り換えがスムーズ

Pixel Buds Proは、ふたつのBluetoothオーディオ機器と同時に接続できる、マルチポイント機能に対応するワイヤレスイヤホンです。

例えばMacBookによるYouTube再生、Pixelスマホによる音楽リスニングを交互に楽しむ用途にも対応します。最初のデバイスで再生を停止してから、順に2台目のデバイスで再生を開始するとスムーズにコンテンツ再生が切り替わります。MacBookで音楽を聴いている最中に、スマホに着信した音声通話をスムーズに受けるといった使い方も可能です。

  • Pixel 6aからiPhone 13 Proへ、音楽プレーヤーになる機器を切り換えながらPixel Buds Proを耳から外すことなくリスニングが楽しめました

【6】バッテリーが長持ち

イヤホンの内蔵バッテリーによる音楽再生は、アクティブノイズキャンセリング機能をオンにしたまま最大7時間連続で楽しめます。ノイズキャンセリング機能がオフの場合は最大11時間も到達します。飛行機による長旅の際にもバッテリー切れを気にせず使える頼もしいイヤホンです。

参考までに、アップルの完全ワイヤレスイヤホン「AirPods Pro」はノイキャンオンで最大4.5時間、オフで最大5時間です。

【7】ペアリングが超簡単

Pixel Buds Proを、Android 6.0以降のスマホに接続する場合は、「Google Fast Pair」というワンタッチペアリング設定の機能が使えます。

イヤホンのケースを開き、背面にあるペアリングボタンを長押しすると、ケースLEDが白く点滅します。この状態で、画面ロックを解除したスマホに近づけると自動セットアップのガイダンスがスマホの画面にポップアップします。あとは数秒待つだけでセットアップは完了。ワイヤレスイヤホンを初めて使う方にとても優しい機能だと思います。

  • AndroidスマホとPixel Buds Proの瞬間ペアリングを実現する「Google Fast Pair」

注目のノイキャン完全ワイヤレスと比べてみた

Google Pixel Budsの「サウンドの傾向」と「アクティブノイズキャンセリング機能の消音効果」を、本機にとってはライバルになる人気のイヤホン2機種と比べました。用意したモデルはアップルの「AirPods Pro」と、Beats by Dr. Dreの「Beats Studio Buds」です。

サウンドの傾向についてはすべてのイヤホンをGoogle Pixel 6aにつないで、Amazon MusicからOfficial髭男dismの『宿命』を課題曲として聴き比べました。

  • 左からAirPods Pro、Google Pixel Buds Pro、Beats Studio Buds。この3機種を比べてみました

Google Pixel Budsは、楽曲冒頭の低音がズシンと腹の底に響くような分厚いアタックがとても印象的です。重心の低いベースラインの上に、ボーカルやメロディが重なりあって濃厚なハーモニーが豊かに広がります。立体的な音場が作り出せる安定感が本機の魅力であり、個性です。

比べるとAirPods Proはボーカルがとても煌びやかで、中高域の抜け感がとてもクリアなイヤホンです。ボーカルの繊維なニュアンスを追い求めたり、ピアノや弦楽器にフォーカスしたクラシック・ジャズの演奏に深く入り込みたい時に最適な選択肢となります。

Beats Studio Budsは、ふたつのイヤホンに比べると音のバランスが中立的でクセがなく、色んな音楽の魅力を素直に引き出します。

アクティブノイズキャンセリング機能の消音パフォーマンスについては、仮にAirPods Proの強度を「100%」とした場合、Beats Studio Budsも「100%」ぐらいですが、Google Pixel Budsは「120~130%」ぐらいのレベルに到達していると筆者は感じました。各イヤホンメーカーが目安となる測定数値やスペックを公開していないので、あくまで筆者個人の感覚的な手応えですが、ご参考まで。

ノイズキャンセリング機能は音楽を再生しなくても、オンとオフの効果の違いが確かめられます。ぜひ店頭のデモ機などを試してみてください。

活躍シーンは多彩。空間オーディオにも期待が高まる

プレミアム級の消音性能を誇るGoogle Pixel Buds Proは、音楽を聴いたり、動画のサウンドを迫力たっぷりに楽しむ用途だけでなく、リモートワークのコミュニケーションデバイス、あるいはイヤープラグ(耳栓)としても優秀な性能を発揮してくれるワイヤレスイヤホンです。

イヤホン本体がIPX4等級の防滴仕様、ケースもIPX2等級の生活防滴仕様なので、スポーツシーンにも積極的に持ち出して使い倒せます。

  • Pixel Buds Proは、充電ケースもIPX2等級の生活防滴仕様です

ノイズキャンセリング機能を搭載しない「Google Pixel Buds A-Series」も引き続きグーグルのオンラインストアでは11,900円(税込)で販売されます。

とても安価でコスパも良いイヤホンですが、アクティブノイズキャンセリング機能を搭載するGoogle Pixel Buds Proの方が、さまざまな場所で静かな環境を作り出し、コンテンツのサウンドに没入できることを考えると、活用シーンはより広く「元が取れる」選択だと筆者は思います。

  • 右がエントリーモデルの「Google Pixel Buds A-Series」

グーグルは今秋、Google Pixel Buds Proをソフトウェアアップデートで「空間オーディオ」に対応させると発表しています。どんなコンテンツが、どのサービスから発信されるのか。そして、今後の空間オーディオに関する発表も楽しみです。いろんな将来性を考えれば、いま少し奮発して上位の“Pro”を選ぶ価値は大いにあるといえるでしょう。