ファーウェイ・ジャパンから、スマートウォッチの新モデル「HUAWEI Watch GT3 Pro」や、ノイズキャンセリング搭載の完全ワイヤレスイヤホン最上位モデル「HUAWEI FreeBuds Pro 2」などが発表されました。

  • ファーウェイが発表した新モデル「HUAWEI Watch GT3 Pro」

世界第2位のR&D投資が生んだ技術の一端を紹介

製品に関しては、別記事『ファーウェイ「WATCH GT 3 Pro」実機を触った! ダイビング対応のタフさ、でもシックな装いで日常に溶け込む』、『ファーウェイのノイキャン完全ワイヤレス最上位「FreeBuds Pro 2」ファーストインプレッション』などをご覧いただくとして、ここでは製品発表会で披露されたスポーツ&ヘルスケア分野の研究開発、FreeBuds Pro2に搭載された新技術をピックアップして紹介します。HUAWEIが2021年に出願した特許は6,952件にのぼり、5年連続の1位。また、研究開発投資としては年間175億ユーロと、MicrosoftやAppleを超える投資を行っている企業でもあります。

  • ファーウェイデバイス 日本・韓国リージョンプレジデントのヤン・タオ氏

  • Microsoft、Sumsung、Appleを上回る技術開発投資額

  • 世界の特許出願数も5年連続のトップ。2位の1.8倍という膨大な数

スマートウォッチやヘルス関連について解説したのは、HUAWEI スポーツ&ヘルスケア部門 CEO HUAWEI端末BGスマートウェアラブル&ヘルスケア製品プレジデント、ジャン・ウェイ氏。リモートで登壇しました。

  • HUAWEI スポーツ&ヘルスケア部門 CEO HUAWEI端末BGスマートウェアラブル&ヘルスケア製品プレジデントのジャン・ウェイ氏

初期の体活動量計はGセンサーを使った動き(≒歩数)しかわからなかったのですが、光学センサーによる心拍(≒脈拍)測定が大きな進歩をもたらしました。HUAWEIが「TruSeen」と呼んでいるこの技術は、2016年に初代TruSeen 1.0からスタートし、現在はTruSeen 5.0+まで進化しています。2019年のTruSeen 3.5からは、心拍だけでなく血中酸素レベル(SpO2)にも対応しました。

現在のTruSeen 5.0+は、高地での血中酸素レベルや血圧測定にも対応したそうです。なお、血圧測定は日本では有効になっておらず、日本の規制をクリアしたのちアップデートで有効になるとのこと。

  • LEDライトを皮膚に照射して、反射した強度から心拍数を測定するのがTruSeenの始まり。現在は24時間の連続モニタリングや血中酸素レベルにも対応。SpO2は新型コロナウイルスで注目度が大きく高まりました。ただし多くのスマートウォッチやスマートバンドは医療機器の認定を受けていないため、血中酸素レベル(SpO2)の測定は医療の一部としては使えず、あくまで健康管理を目的とした機能です

通常の測定機器とは異なり、ウェアラブルデバイスの心拍数モニタリングにはいくつかの課題があったといいます。具体的には、一定時間走って一定時間休むことを繰り返すインターバル走において、ラン時と休息時で数値が大きく離れるため、ノイズと判断されるのです。これを、大量のデータを使ったディープラーニングを用いて、異なるベース区間のノイズをタイムリーにフィルタリングすることで解決しました。

また、ワークアウト時はウォッチが物理的に動いてしまい、心拍数を測定できないことがあります(このため従来は、胸にぴったりと装着する電極付きバンド型の心拍センサーを用意していたメーカーもありました)。対策としては、ウォッチ裏側に円状レイアウトで多くの光センサーとLEDを配置し、外部からの干渉を大幅に削減。肌の色の違いで光の吸収が異なる課題に関しては、光路設計の見直しと光源の明るさを動的に調整することで対応したそうです。

  • 運動に大きな波があると、心拍数も大きく変動してノイズと判断される場合がありますが、大量のサンプルを用いたディープラーニングによって、ノイズを適切に除去しています

  • 「運動する=ウェアラブルデバイスが動く」ことで計測にエラーが出る問題は、LEDライトとセンサーの数を増やし、かつ密着度をよくすることで改善

  • 肌のメラニン色素量によって反射する光が大きく変化します。光路設計とスマートな照射量変更で対応しました

  • 運動の種類(100種類)をカバーするため、90万以上の学習データを用意。ライバル製品よりも高い精度になったとしています

将来の取り組みとしては、専門医療機関と共同して、血糖値測定、肺機能の評価、急性疾患リスクの事前予測、高地の低圧環境における行動プランニングサポート……などの研究を行っていると紹介しました。これらを支える研究機関として、HUAWEIは世界に10以上の拠点を設置しています。日本の拠点では、運動健康基準、センサー、素材・技術、美しいデザインをテーマに取り組んでいるそうです。

  • TruSeenをベースに、高血糖リスクのスクリーニングや早期アラートが行えないか、専門医療機関と共同研究中

  • 心拍、血中酸素レベル、呼吸の音声情報といった点から肺機能を評価し、慢性閉塞性肺疾患(COPD)のスクリーニングと急性疾患リスクの事前評価を研究中

  • 高山病を起こりにくくする行程プランニングをサポート

  • HUAWEIが世界各地に設けている研究施設では、それぞれの得意分野を研究

  • HUAWEIのスマートウォッチは「TruSport」という計測も実施。ランニングでも多くの指標をトレーニング用に提示

最後にジャン・ウェイ氏は、安全性に関して言及。GDPR(EU一般データ保護規則)やGAPP(プライバシーに関する原則)に準拠しており、ユーザーの許諾がなければ第三者にデータは渡さないと強調しました。

一方、プラットフォームの開放によってパートナーとの連携も進める考えです。今回、ファーウェイの公式サイトから「HUAWEI WATCH GT 3 Pro」を購入したユーザー向けに、adidus Runningのプレミアム会員(12カ月分)のギフトコードを贈呈します。キャンペーン期限は2022年12月31日まで。

  • GDPRに準拠するため、ユーザーの許諾なしにはデータを使用せず、暗号化して保存

完全ワイヤレスイヤホン「HUAWEI FreeBuds Pro 2」の技術

続いて、アクティブノイズキャンセリング機能を備えた完全ワイヤレスイヤホンの最上位モデル「HUAWEI FreeBuds Pro 2」の技術面について、ファーウェイ東京研究所 東京オーディオラボ室長 角田直隆氏が解説。

HUAWEIのオーディオ関連製品は、ワールドワイドですでに4カテゴリ、30以上の製品が投入されています。研究開発に関しては、世界6カ所の研究所で1,000名以上の技術者が取り組んでいるそうです。日本では音響ハードウェア、欧州ではオーディオ信号処理といったように、得意な領域を分業して研究しています。

  • アクティブノイズキャンセリング機能を備えた完全ワイヤレスイヤホンの最上位モデル「HUAWEI FreeBuds Pro 2」

  • ファーウェイ東京研究所 東京オーディオラボ室長 角田直隆氏

  • 世界の6拠点でオーディオ関連技術を研究

角田氏は「イノベーションがオーディオ機器をスマートにする」と総括し、たとえば装着感の良いデザインのためには耳の形を3Dモデリングで作成し、それを元にした仮想試着システムによって膨大なパラメーターを分析。実際に人間が装着した快適性評価も加えて、さまざまな使用環境における装着安定試験を行っています。結果として、各部の寸法はミクロンオーダーで最適化されるとのことです。

  • 完全ワイヤレスイヤホンは装着性がとても大切。単純に良い音だけでは成立せず、多くの技術が必要です

  • 装着性を高めるために、耳の3Dモデリングによる仮想装着システムを構築。実際に人が装着した評価とあわせて、ミクロン単位で最適化

HUAWEI FreeBuds Pro2では、ダイナミックドライバーと平面振動板ドライバーというデュアルドライバー構成を採用しています。高音域を担当する平面振動板ドライバーは、レスポンスに優れ48Khzまで対応。低中域をサポートするダイナミックドライバーは、マグネット×4基を配置することによって、前機種と比べて30%アップの駆動力と、14Hzまでの低域再生が可能です。これらを、2つのアンプとデジタルクロスオーバー技術を用いて、お互いの干渉をなくして一体動作させています。

  • 平面振動板は以前からからありましたが、完全ワイヤレスイヤホンにも使える小型化を実現

  • ダイナミックドライバーは4基のマグネットで駆動力を増し、さらに14Hzまでの低周波再生に対応

また、HUAWEI FreeBuds Pro2では、ノイズキャンセリングのために3つのマイクと骨伝導センサーを駆使。風切り音に対してはマイクを切り替えて対処するほか、ダイナミックモードにすると外部環境に応じて3種類のノイズキャンセリングモードを自動で使い分けます。職場や図書館のような静かな環境向けの「くつろぎ」、雑踏やカフェのような環境向けの「標準」、飛行機内や地下鉄のような環境向けの「ウルトラ」です。

音楽再生時のノイズ除去だけでなく、通話やWeb会議における自分の声も重視。DNN(ディープニューラルネットワーク)の学習によって人の声を認識し、通話時の相手にクリアな音声を伝えます。

  • 従来製品からマイクを1つ増やして風切り音に対処。さらに、音楽を聴くときだけでなく、通話時にも相手にノイズを届けない機能が追加されました

そして、良い出力は良い接続からと、カバー特性の異なる2つのアンテナを搭載。状況に応じて自動的に切り替えます。Bluetoothの音声コーデックは、SBC、AAC、ソニーが開発したハイレゾ向けのLDAC、およびファーウェイのハイレゾ向けHWA(対応スマートフォンは限定的)に対応しています。

  • HUAWEI FreeBuds Pro2は2つのアンテナを内蔵。ハイレゾ相当に対応したコーデックとしては、LDACとHWAをサポートしています

  • Devialet社によるサウンドチューニングも施されており、価格は少々お高め。エントリー向けの「HUAWEI FreeBuds SE」はリーズナブルな設定です