中国語版Wikipediaに、古代ロシアに関する「架空の情報」が数多く掲載されていたことが見つかりし、騒動になっている。
この偽の情報を掲載していたのは、「折毛」という編集者だという。彼の文章は精巧で、「卡申銀礦(カシェン銀山)」という架空の鉱物を例に挙げると、鉱物の産地や、採掘方法などの記述情報の完成度が高く、ロシア語が相当できる人でなければ、本物の情報だと信じるほどだそうだ。また、裏付けとなる参考文献の引用についても、引用先が実は架空の書物であったり、実在はするが関係のない書物、実在する書物だが存在のない項目を記載していたりした。
他にも、問題となった記事の中では、全てが偽の情報ではなく、一部で本当の情報も織り交ぜるなどの工夫がされ、真贋の見極めが困難になっていた。例えば、「小毛足鼠(小さなけむくじゃらのラット)」の説明文には、「1894年にロシアの探検家Vsevolod Ivanovich Roberovskyによって発見された。1899年、Robrovskyはそれを飼料および実験用ラットとして使用することを意図し、トルキスタンからアストラカンに40匹移送した。そしてそれの家畜化を試みるためにKonstantinSaduninに引き渡し、1903年に家畜化に成功した。」という記述があった。この部分に関して、このラットはVsevolod Ivanovich Roberovskyが最初に発見し、1903年にKonstantinSaduninが発表したのは事実だが、「飼料および実験用ラットとして使用することを意図」「トルキスタンからアストラカンに40匹を移送した」「家畜化を試みるで成功」の部分は全て偽の情報である。
今回の騒動と似た事例として、「ピゴリム戦争」というものがある。これは英語版Wikipediaに2007年から2012年にかけて掲載されていた架空の記事で、1640から41年にかけて、ポルトガル王国とマラーター王国の間で起きた戦争に関する情報がもっともらしい文章で記述されていた。この記事は、Wikipedia全記事の1%に当たる「良質な記事」に選ばれるほど、完成度の高いものだった。しかし、そんな戦争は本当は存在しなかったのだ。
ネット上では「SF味あるな」「ここまで作れるなら一本小説書いて欲しい」「歴史はこうして作られるんですねーつか作るなよww」などの声が寄せられた。「日本でも同じようなものはある」「氷山の一角」といった声もあり、Wikipediaとの付き合い方を改めて考えさせる出来事となったようだ。