そうした背景を踏まえ、研究チームは今回、2つの芳香環を「強制的に近づける」ことで解決できると考察。2つの芳香環を頑強な母核で固定した触媒構造を設計・考案。そして、2つの芳香環が平行配列した構造を持っていることから「スタックドアレーン型触媒」と命名したとする。

また、もし期待した効果が発揮されれば、一方の芳香環の電子環境を変えることで、他方の芳香環の電子環境の変動、ひいてはその芳香環に置換している活性化部位(X-H)の性能調節が実現できるはずとする仮説を立て、実際に有機触媒を用いた研究でよく見られるニトロスチレンとマロン酸ジメチルとの反応を用いて、π-π相互作用の電子調節機能の評価を行ったところ、期待通りの一方の芳香環の電子環境を変えることで、触媒能が大きく変化することが確認されたという。特に、大きく電子が不足した状態になっているピリジニウム環を持つ触媒は極めて高い触媒活性を示し、良好な収率を維持したまま、触媒量を3mol%まで低減化することもできたとする。

  • 今回の研究の概要

    今回の研究の概要 (出所:農工大Webサイト)

なお、今回の研究成果について研究チームでは、「π-π相互作用の電子調節機能としての利用」という基礎的な知見が明らかにされただけでなく、物質製造に効果的な「高活性触媒の創出」の道を切り拓いた、という2つの点で意義深いといえるとしている。