モトローラ・モビリティ・ジャパンの新型スマートフォン「motorola edge30 PRO」「moto g52j 5G」が6月3日に発売されます。発売直前に開かれた記者向け説明会で、新製品に込められた思いを聞いてきました。
「motorola edge30 PRO」はコストパフォーマンスに優れる高性能スマホ
motorola edge30 PROは、クアルコムの高性能チップ「Snapdragon 8 Gen 1」を搭載するハイエンドスマートフォンです。リフレッシュレート144Hzでなめらかに動く高速ディスプレイや68W急速充電、デスクトップモードの「Ready For」などが主な特長です。詳細はレビュー記事でも紹介していますので、ぜひあわせてご覧ください。
フォルダブルディスプレイ搭載の高級機である「razr 5G」という特殊な例を除くと、日本市場でモトローラが8~10万円クラスのハイエンド機を出すのはかなり久しぶりのこと。しかし、現在のスマートフォン市場を取り巻く環境としては、コロナ禍の影響を受けた半導体不足やサプライチェーンの問題、円安が進行した為替レート、そして日本では値引き規制もあり、客観的に見れば高価格帯のスマートフォンを売り出すには厳しい状況のように思えます。
なぜこのタイミングでハイエンド機を再投入する決断に至ったのか、同社の松原丈太社長に疑問をぶつけてみると、逆風が吹く市場環境であることは認めた上で「その中でも端末はどんどん進化していて、その進化を体感したいお客さんは少なからずいる。そういったお客さんに対して選択肢を提供したい」と力強い回答を得られました。
motorola edge30 PROの価格は8GB/128GBモデルで86,800円、12GB/256GBモデルで89,800円。5月30日時点で日本国内での販売価格が発表されているSnapdragon 8 Gen 1搭載スマートフォンでは最も安く、少しでも手頃に最新のスマートフォンを体験したいユーザーにとっては魅力のある選択肢といえるでしょう。
本機種は3月下旬の発表から段階的な延期を経て6月3日の発売に至りますが、背景としてはやはり世界的な混乱による部材調達の遅れが影響した様子。発売後の品不足がなるべく起きないように万全な体制を整えてから発売することを第一に考え、6月まで少々ずれ込んだということです。
3月の発表時点では日本版は12GB/256GBモデルのみの予定でしたが、最新のハイエンド機を少しでも手頃に提供したいというコンセプトを突き詰めた結果、8GB/128GBモデルも急遽追加されました。
両モデルの差額が3,000円というのはスペック差を考えるともう一声欲しいところですが、先に発売が決まっていた12GB/256GBモデルと後から追加された8GB/128GBモデルでは、企画時期の違いからその間の部材調達コストや為替の変動が大きく、同条件での差額は出せなかったようです。
販売国によってメモリ/ストレージ容量の構成が異なるため一概には言えないのですが、米国版(motorola edge+)などいくつかの海外版の価格を5月30日現在の為替レートで単純計算してみると、日本版の12GB/256GBモデルが10万円どころか9万円も切っているのはそもそも異例。8GB/128GBモデルが割高というより、3月時点で価格が決まっていた12GB/256GBモデルが今の相場では結果的に割安になったのだと考えられます。
「moto g52j 5G」はおサイフケータイ&防水対応のミドルレンジスマホ
moto g52j 5Gは、39,800円という売れ筋の価格帯に位置するミドルレンジ機。同社のスマートフォンとしては初めて、IP68相当の防水/防塵性能とFeliCa/おサイフケータイに同時対応しました。その他の主な仕様としては「Snapdragon 695 5G」や120Hz駆動の6.8インチ大画面、5,000万画素カメラや5,000mAhの大容量バッテリーを搭載します。
スマートフォン黎明期から日本でも多くの機種を販売しているメーカーだけに、防水やおサイフケータイという日本市場特有のニーズに合わせてローカライズされた機種がこれまでなかったというのは少々意外なところ。防水については2018年発売の「Moto X4」などがIP68相当だったほか、ミドルレンジのmoto gファミリーでもIP52相当の防滴レベルの機種は多数ありましたが、おサイフケータイに関しては2012年にソフトバンクから発売された「RAZR M 201M」以来の対応となります。
数年前、松原社長の前任であるダニー・アダモポウロス氏などへの取材を通じても、グローバルの開発部隊に対して日本市場におけるFeliCa対応の重要性を伝えていることが伺えましたが、ようやくキャリアモデル以外での搭載が叶ったというところ。
優先度が上がった理由としては他の海外メーカーのSIMフリー機でも防水やおサイフケータイに対応する機種が増えていることだけではなく、ユーザーの反応や需要の変化もあると言います。おサイフケータイそのものはフィーチャーフォン時代から存在する機能ですが、以前はどちらかといえばスマートフォンを使いこなしている一部のユーザーが求める機能だったのに対し、キャッシュレス化の流れやiPhoneのFeliCa対応、モバイルPASMOの登場などといった周辺環境の変化によって、当たり前の機能として求めるユーザーが増えたようです。
世界全体での売上は好調、日本市場にも注力
2022年現在のモトローラの製品ラインアップを大きく分けると、フォルダブルディスプレイなどの先進技術を取り入れた高級路線の「razr」ファミリー、高性能なSoCやディスプレイ、カメラを搭載するプレミアムラインの「motorola edge」ファミリー、価格と機能や性能のバランスを重視したミドルレンジの「moto g」ファミリー、手に取りやすいエントリーモデルの「moto e」ファミリーという4種類に分類されます。
日本市場では一時期、ミドルレンジ以下の機種のみのラインアップとなっていた時期もありましたが、razr 5Gの発売や2021年からのmotorola edgeファミリーの投入によってエントリーからハイエンドまで幅広い選択肢が揃うようになりました。
世界全体でのモトローラのスマートフォンビジネスの状況としては、販売台数は前年比32%アップ、売上は昨年比40%アップと好調。特に、中南米ではメーカー別シェア2位、北米では3位を記録しました(FY21/22 Q4時点)。
アジア太平洋地区の中では、日本、インド、オーストラリアを重点地域と位置付けているとのこと。motorola edge30 PROのようなコストパフォーマンスに優れた高性能機、そしてmoto g52j 5Gのような日本市場にあわせてしっかりローカライズされた競争力の高いミドルレンジ機という両軸での取り組みの継続が期待されます。