SEMIジャパンは5月24日、オンラインで説明会を開催し、近年の半導体不足で注目を集めるようになっている半導体の模倣品(模造品/偽造品)に対する対策の現状に関する説明を行った。

何が半導体不足の引き金を引いたのか?

そもそも新型コロナウイルス感染症が世界的にパンデミックを引き起こした2020年以降に生じ、今なお続く半導体不足は、何が根本的な原因となったのか。

実のところ、新型コロナが世界的に感染拡大し、経済が滞ると言われていた中において、半導体の市場規模は月を追うごとに成長が続いており、半導体市場そのものが落ち込んだ、ということはない。SEMIによれば、半導体の需要そのものは新型コロナがパンデミックを引き起こす以前より増加傾向を見せていたという。

その一方で、大きく落ち込んだのが自動車の出荷台数である。ある調査によると、米国における自動車出荷台数は2020年3月、4月と大きく落ち込んだ。こうした事態の裏で、自動車(OEM)メーカーなどが在庫を抑えるために半導体の注文をストップ。その後、出荷台数は回復していくこととなるが、一度、半導体の生産発注を止めてしまった結果、その空いた枠に、別の空きを待っていた製品があてられることとなり、自動車メーカーが求める半導体に対してすぐに生産の枠を用意することができず、自動車メーカーが必要とする半導体が足りなくなり、そこを無理に枠を作った結果、それ以外の半導体が作れなくなり、といったドミノ倒し的に不足する半導体が広がっていったと考えられている。

  • 2019年4月以降の半導体売上高と米国の自動車出荷台数推移

    2019年4月以降の半導体売上高と米国の自動車出荷台数推移 (提供:SEMIジャパン、以下すべて同じ)

この近年の半導体需要の増加を下支えしてきたのは、スマートフォン(スマホ)の普及に伴って生じた社会変革。いわゆるデータ爆発である。半導体の需要は、シリコンサイクルに代表されるように、年代ごとに特定のアプリケーションがけん引してきた。かつてはPCであり、スマホがそれにあたる。しかし、近年はそこに輪をかけて、そうした末端の端末が生み出したデータを処理する側、つまりデータセンターやHPC、IoTといった新規分野での半導体利用も拡大。一方、そうした分野で必要とされる最先端半導体を製造できるところは限られており、3nmや5nmといった最先端のプロセスの製造が可能なところは現状、台湾TSMCと韓国Samsung Electronicsの2社のみ。Intelは14nm、10nmプロセスでの立ち上げに躓き、現在、キャッチアップを図る状態にあるほか、Samsungについても先端プロセスの歩留まりが不安視されており、必ずしも潤沢に製品供給ができているわけではないと言われている。

  • 世界のデジタルシフトが進めば進むほど半導体が適用される分野の拡大が進むこととなる

    世界のデジタルシフトが進めば進むほど半導体が適用される分野の拡大が進むこととなる。わかりやすい例が脱ガソリン車が世界的な潮流となっている自動車分野

半導体の進化を支えてきた「ムーアの法則」

「ムーアの法則」。これまで、半導体業界が半導体の性能を向上させていくために業界全体として掲げられてきたキーワードである。よくムーアの法則の終焉や限界説といった話が近年は取り上げられるが、それはトランジスタの微細化に起因した面であり、確かに物理的限界が見えてきたところはあるが、その一方で、1パッケージ内に複数のチップを搭載することで小型化、高性能化を図る取り組みが進められ、半導体の性能向上を図る動きがでてきている。

  • 半導体プロセスの微細化の推移

    半導体プロセスの微細化の推移

こうした中、近年、日本の半導体産業の立ち位置についての議論が各所で交わされるようになってきた。日本の半導体メーカーの世界シェアは年々低下しているが、レガシープロセスまで含めたその生産能力の合計(前工程)は17%であり、中国の23%、台湾の19%に次、韓国(17%)と同率3位と、それなりにあるといえる(SEMIによる調査結果。Knometa Researchによる2021年末におけるICウェハ生産能力調査では、韓国23%、台湾21%、中国16%、日本15%という順になっている)。

  • SEMIによる半導体生産能力(前工程)の地域別シェア

    SEMIによる半導体生産能力(前工程)の地域別シェア

現在、強みを発揮していると言われているのは材料ならびに製造装置分野であり、例えば国内トップの半導体製造装置メーカーである東京エレクトロン(TEL)の2022年3月期決算業績は、前年度比43%増の2兆38億円、純利益も同80%増の4370億となっている。装置種別や材料別に見ればSCREENを筆頭とする洗浄装置や、レーザーテックが世界シェアの大半を握るEUVリソグラフィ用マスク検査装置、ディスコが世界シェアの70%以上を握るダイシングソー、半導体テスタにおけるアドバンテストや、信越半導体とSUMCOで過半を占める300mmシリコンウェハなど、業界トップクラスの企業が多くある。

こうした有力な半導体製造装置メーカー、材料メーカーが多い日本の現状も踏まえ、SEMIジャパンでも「半導体不足改善に向けた装置用半導体供給確保の必要性」と題した白書を公表するなど、半導体不足の中、半導体製造装置メーカーに優先的に半導体を供給することこそが、半導体不足を解決する近道になることを強調するようになってきた。