開発されたフッ素化ナノチューブは、これまでの水透過ナノチューブよりも大きな0.9nmという内径を有していることから、NaCl(塩)が容易に通り抜けてしまうように思えるが、フッ素化ナノチューブの内壁が負に帯電しているため、同じく負に帯電した塩化物イオンの侵入を防ぐことができるという。
また、フッ素化ナノチューブの内表面は、水分子の間に働く水素結合を崩壊させる機能も有するという。一般に数分子の塊として存在している水が、ナノチューブ内部に取り込まれるとバラバラになり、その結果、水とチューブ内壁の間の摩擦が低減し、超高速な水透過が実現されるとする。
これまで、水透過ナノチューブの開発指針は常にアクアポリンに基づいていたと研究チームでは説明するが、今回の研究の動機については、それとはまったく異なり、「水をはじくテフロンのような内壁を持つナノチューブを作ったら、水はどのような透過挙動を示すだろうか」という好奇心から派生したものだったという。
もし今回のフッ素化ナノチューブが同一方向に密に並んだ膜を作ることができたなら、既存の水処理膜はもとより、アクアポリンを敷き詰めた仮想膜、CNTを敷き詰めた仮想膜と比較しても圧倒的に高い水処理能が期待されるとのことで、このことは超高速水処理膜の設計指針を提供することにもつながるとしている。