昨今、バルミューダの参入でも話題となっているコーヒーマシン界隈。正直、お茶好きとしてはコーヒー党の方々に嫉妬せざるを得ません。
コーヒーマシンがあんなにもバリエーション豊かで日々新アイテムが登場しているのに、し好品として双璧をなすはずのお茶は、専用家電がそれほどには充実していないからです。
そんな中、お茶好きに熱い視線を注がれているのが、ティファールから発売された“お茶専用電気ケトル”ともいうべき「テイエール 1.5L」(以下、テイエール)。茶こしつきの電気ケトルで、直接お茶を淹れることができます。
では実際、その使い勝手はどうなのでしょうか? お茶がないと仕事も遊びもままならないお茶愛好家の筆者が、じっくり使い込んでみました。
テイエールってどんな電気ケトル?
筆者は誇張なく365日お茶を飲んでいるのですが、「いかにして手軽に淹れるか」をテーマに生きているため、茶器はお手入れの手間が少ないものばかり。また、家族はコーヒー党なので、ひとりでも飲める茶こしつきマグカップの出番も多いです。本レビューは「ものぐさタイプのお茶好きが試した結果」とお考えください。
さて、前置きはここまでにして、テイエールを使ってみます。主な特長は以下の通り。
- 茶こしが付属し、ケトル内でお茶を抽出できる
- わかすお湯の温度を7段階で調節可能
- 「煮出し」機能でフルーツティーや麦茶も作れる
- ニオイ移りの少ないガラス製で、中が見える
まずは、お湯の温度調整が難しい煎茶からトライ。テイエールを使えば、ぴったり推奨温度のお湯を用意できます。
お湯の温度は60、70、80、85、90、95、100℃から選択できます。今回はお茶のパッケージ裏に書いてある推奨温度の70℃に設定。ティファールのレシピを参考に、約4杯分淹れてみます。
温度計マークのボタンを押すと、100℃からはじまりお湯の温度が表示されます。温度を選んだら、そのまま5秒待機。電源ボタンが明滅して5カウントし、その間何も操作がなければ決定扱いになります。
決定ボタンを押す操作になれている身としては、最初少しだけ戸惑いました。ちなみに、すぐ決定したいときは、温度選択後に点滅中の電源ボタンを押すとすぐに確定できます
お湯が沸いたら、茶葉を入れた茶こしをケトルの中へ。数分蒸らしたら完成です。しっかりとうまみを感じられる煎茶がお手軽にできました。
煎茶や玉露を適切な温度で淹れられる気がしないので、緑茶を飲みたいときはティーバッグを使っていた筆者。ですが、テイエールを使えば温度調節の心配は不要です。今後は買い置き茶葉に緑茶も加えて、休日にゆっくり淹れてみようかなと思えました。
そしてお茶愛好家が常に悩まされる手間といえば、茶殻の処理。テイエールの茶こしは底を抜いて分割できるので、ささっと捨てやすいのが好印象でした。縦長の茶こし、底に茶葉が張り付いてイライラしがちなので…。
筒のほうは特に分割機能はなく、硬質なステンレスのメッシュ製なので、柄付きのブラシを使ったほうがスムーズにお手入れできました。
そして、お湯の沸く速さはさすがのティファール。公式レシピブックの規定量である650mlの水は、約2分で沸騰させることができました。満量(1.5L)の場合も約8分(水温19℃の場合)で100℃になりました。
紅茶をおいしく「時短」で淹れられる理由
その後も家にある紅茶を順番に淹れてみましたが、お手頃な値段の茶葉でもしっかり味が出るようになり、家族からも好評でした!
実は、テイエールを使ってみる前、「お茶専用ケトルはうれしいけど、正直、一般的な電気ケトルでも十分事足りるかも…」と予想していた筆者。というのも、紅茶の場合使うお湯の温度は基本的に100℃で、お湯の温度を調整する必要がないためです。
ですが、「ケトルがそのままティーポットになる」テイエールは、温度調整が必要な煎茶のみならず、美味しい紅茶を淹れる手間も減らしてくれました。
紅茶を美味しく淹れるコツとして、あらかじめ分量外のお湯でポットを温めておく工程があります。それは、ティーポットにお湯を注ぐと100℃から温度が下がり、お茶が出にくくなってしまうから。ですが、はっきり言って面倒くさい……。
テイエールは、その構造上「お湯を沸かす=ティーポットを温める」ことにもなるため、温める工程を飛ばせます。わずかな手間ではありますが、毎日のことになると積み重なって負担に感じるので、テイエールは毎日紅茶を飲む筆者のような人にはかなり便利なアイテムといえそうです。
便利だけどお茶の種類を選ぶ「保温機能」
続いて、目玉ともいえる保温機能を試してみます。テイエールでは最大60分、お茶を保温しておくことができます。最大1.5Lの大容量で、一度には到底飲み切れない量が作れるだけに、2杯目も熱々のお茶を飲めるのは魅力的です。
保温した結果、香りがどうなるか知りたかったので、我が家にある中で一番香りが強い紅茶を使ってみました。紅茶専門店「マリアージュフレール」の「マルコポーロ」。甘いフレーバーなのにさわやかな飲み口が大のお気に入りで、フレーバーティーはあまり得意ではないのですがこれはゴクゴク飲めます。
(ちょっといいお値段の茶葉なので)テイエール、美味しく保温してくれよな…!
淹れ方は先ほどと同様、温度設定してお湯が沸いてから茶こし(茶葉入り)をセットします。そして規定の時間だけ蒸らして完成です。一杯目は当然ながらバッチリの味わい。甘い香りが際立つ美味しいお茶です。
保温時間は最大60分、それ以内なら5分単位で設定できます。加熱が終わった後に保温ボタンが押せるようになるので、テイエールがピピっとなったら駆けつけて保温ボタンを押します。ここはやはり、時間いっぱい、60分保温してもらうことにしました。
仕事をしつつ待ち、約1時間後。2杯目のお茶をカップについで飲んでみました。期待しつつ口をつけましたが、残念ながら香りは1杯目と比べると半減と言わざるを得ません。複雑で甘い独特のフレーバーはほとんど飛んでしまっていました。
お茶を注いだあとはケトルをプレートの上に戻し、保温ボタンが点滅している10秒間のうちに再度押すと保温が続行されます。
テイエールの保温機能は「最初に設定したお湯の温度」を「指定の時間だけ保持する」という設計。100℃のお湯で淹れると美味しくなる紅茶は、テイエールの仕様上それに近い95℃で保温し続けることになるため、香りが飛びやすかったのではないかと推測しています。香りを堪能したい茶葉に関しては、保温せず飲み切れる量だけ淹れるのがよさそうです。
家にあるお茶を手当たり次第試した結果、ほうじ茶や麦茶のように香ばしいお茶は、長時間保温しても安定して飲める印象。紅茶(ノンフレーバー)や煎茶、グリーンルイボスティー、ハーブティー(カモミール主体のブレンド茶)は、時間が経つにつれて香りが少しずつ変化したり、渋みが出たりしてしまいました。
加熱して温度を一定に保っているので、お茶の味が変わってしまうのは当然といえば当然。ですが願わくば、保温の温度は沸かすときとは別に設定できたらよかったなと感じました。
ちょっと浮かれて非日常なフルーツティーをつくる
ここからは、ちょっと気分を変えて、テイエールのユニークな特長である「煮出し機能」にチャレンジ。電気ケトルに食べ物を入れるのは通常NGですが、実は茶葉以外にも、フルーツやスパイスを入れて煮出すこともできます。
見た目も華やかなフルーツティーが作れるということで、公式レシピを参考に作ってみました。紅茶を通常通り淹れてから、カットしたフルーツを入れて煮出します。煮出しボタンも、保温と同様にお湯を沸かした後押せるようになります。
先ほどお茶のためにお湯を沸かしたときはぼこぼこと泡立っていましたが、煮出し機能はじっくり静かに、煮立たせないように加熱しているように見えました。ガラスのケトルなので中が見えて何とも気分が上がり、これまでやったこともないティーパーティーを催したくなります。
家でフルーツティーを作ったのは初めてですが、台湾や日本のカフェで何回か飲んだことがあり、それと比べるとややあっさりな印象。フルーツの風味が前面に出ているものの、紅茶(アッサム)の味もしっかり感じられました。お好みで砂糖やハチミツで甘みをつけるとより美味しいと思います。
テイエールのレシピブックには、ティファールとフランスのティーメゾン「クスミティー」とコラボしたレシピが掲載されています。せっかくなので、その中から「アナスタシアとフレッシュオレンジのティー」を淹れてみました。
「アナスタシア」は、ロマノフ王朝時代の皇帝・ニコライ二世の皇女であるアナスタシアの逸話から着想を得たフレーバーティー。「ベルガモット、レモンとオレンジが香るクスミティーの代表作」ということで、多くの人に受け入れられそうな、さわやかな香りの紅茶です。ティファール掲載のレシピでは、85℃のお湯を沸かしてアナスタシアの茶葉を蒸らしたあと、輪切りのオレンジを加えて2分煮出します。
生のオレンジのフレッシュな酸味が印象的な一杯になりました。ただ、アナスタシアの茶葉自体の香りは煮出し工程で飛んでしまったようでした…。せっかく香りのよい茶葉なのに、フレーバーとオレンジの相乗効果が感じにくかったのは残念です。
フレッシュなフルーツを煮出すのは楽しい、けどフレーバーティーの香りとは両立しにくい。それならレモネードを作ればいいじゃない!
ということで、ティファール公式レシピを見て作ったところ絶品で、家族にも大ウケ。ワックス不使用のレモンを調達するのがちょっと大変ですが、味わい豊かなレモネードがたっぷり楽しめます。カップに移してから、お好みでハチミツを加えると味わいが増しますよ。
さて、使い倒したのでしっかり洗おうかな…と説明書を見ると、実はテイエールは丸洗いNG。電源パネルとケトルに分かれていますが、本体にも通電部があるので、うっかりポット感覚で洗わないように注意しないといけません。外側は布拭き、内側は水ですすいでから乾拭きします。
本格的なお手入れは、一般的な電気ケトルと同じクエン酸を入れた水で沸騰させ放置する洗浄方法。水洗いでは落ち切らない、ミルクを使った煮出しは行えません。煮出しのミルクティーこそケトルで作れたらとも思ってしまいますが、お手入れの簡単さを優先した仕様なのでしょう。
ケトルの上部はフタをガバっと取り外し、大きな口の広いティーポットの状態ですすげるので洗いやすいです。
テイエールで革命的に飲みやすくなった「あのお茶」
さて、ここまで色々とお茶を淹れてきましたが、約1カ月ほど使い込んで一番たくさん淹れたお茶は、……実は、麦茶でした。
オシャレなメニューのたくさん載った公式レシピブックを参考にしておいて何なのですが、実は麦茶を淹れたときが、テイエールの真価を発揮できたと感じたのです。
これまでは、麦茶を煮出して作ると美味しいことは知りつつも、手間を減らすために水出しボトルを使っていました。しかしそれでも、水出ししたお茶が傷む前に飲んで、また新たなお茶を補充するサイクルが億劫に…。妥協を重ねた結果、この夏に至ってはペットボトルで箱買いしていました。
ですが、テイエールが来てからというもの、1Lたっぷり淹れる麦茶を仕事や家事のお供に飲むのが習慣に。麦茶の多くは1L単位で淹れるパックで売られているので、大容量で煮出し機能のあるテイエールと相性ぴったり! 茶こしに麦茶パックを入れて煮出し、途中で取り出すと、お茶の濃さを加減しやすかったです。
手間の少なさはもちろん、煮出した麦茶は香ばしくてどんどん飲めて、先述の通り保温しても風味がほぼ変化しないので、近いうちに1袋使い切れそうです。
筆者が温かいお茶、それも煮出した麦茶が好みというのは多分に影響していますが、温かいお茶を常に飲めるのは想像以上に快適でした。忘れがちな冬の水分補給にもよさそうです。
テイエールは忙しいお茶好きの味方
ここまでいろいろと試してきましたが、やはり茶葉を使ってお茶を淹れる手間を減らしてくれるのが、テイエール最大の魅力といえるでしょう。
ティーバッグでもしっかり蒸らせば美味しく淹れられますが、やはり茶葉が気軽に使えると飲めるお茶の種類がぐっと広がり、お茶ライフが豊かなものになります。テイエールは、美味しいお茶を手軽に毎日飲みたい人にはおすすめできる家電です。
容量も電気ケトルとしては多いので、在宅ワーク向けに一度にたくさんお茶を淹れたいとき、家族や友達など大勢で飲むときなど、量が必要な場面でも役立ちます。
ひとつワガママを言うなら、普段大勢でお茶を飲まない筆者のような人向けに、500~800mlくらいのミニサイズが出たら、毎日といわず数時間に一度レベルで使い倒せそうです。ともあれ、貴重な「お茶家電」として、これからも市場をにぎわせてくれることを願います。