横浜国立大学(横浜国大)、東京工業大学(東工大)、芝浦工業大学(芝浦工大)の3者は10月25日、光相関制御型の新方式ライダー(LiDAR)を開発し、空気の流れを可視化できる可能性のある100kHzの高速振動を検出することに成功したと発表した。

同成果は、横浜国大 理工学部の清住空樹大学院生、同・水野洋輔准教授、東工大の中村健太郎教授、芝浦工大の李ひよん助教らの共同研究チームによるもの。詳細は、「APL Photonics」にオンライン掲載された。

光測定などを用いた振動検出技術は、自動車部品などの特性解析や構造物の異常検知など、さまざまな分野で需要が高まっているが、主流のレーザードップラー振動計の場合、測距が想定されていないことから、測定レンジが短い、高速な測定位置の切り替えが難しい、などの課題があったという。

そこで研究チームでは、長距離の測距と振動検出能力の両方を備えたセンサを実現する手法として、光干渉の性質(光の相関)を制御する「相関領域ライダー(LiDAR)」を考案。測定対象にレーザー光を照射して跳ね返ってくる反射光を参照光と干渉させ、「相関ピーク」を形成させ、それを測定点として詳細な情報を取得することで、周波数や振動波形の測定が可能だという。

また、相関ピークの位置は、レーザー光の変調パラメータによって自在に制御することが可能で、複数の測定対象が広範囲に分布している場合でも、相関ピーク位置を掃引することで測定できるという。

  • LiDAR

    相関領域ライダーは、相関ピークと測定対象を重ねることで、振動などの情報を取得することができる。(出所:共同プレスリリースPDF)

実際にその性能を調べるために行った実験では、レーザー光の空間出射口からの同一直線上の12cm、25cm、41cmの地点にビームスプリッタおよびミラーを設置し、0cmから48cmの区間で反射率の分布を測定。正しい位置での反射が強くなっており、測距能力が示されたとするほか、30kHzで振動する振動発生装置の波形と周波数を測定したところ、正しい周波数にピークが現れることが確認されたともしている。今回の実験では100kHzでの実証も行われたが、原理的にはさらに高い周波数でも測定可能だと研究チームでは説明している。

  • LiDAR

    相関ピークの位置は自在に制御でき、複数の測定対象が広範囲に分布していても測定可能だ。画像は、レーザー光の空間出射口からの同一直線上の12cm、25cm、41cmの地点にビームスプリッタおよびミラーが設置され、0cmから48cmの区間で反射率の分布が測定された様子。右のグラフから、ビームスプリッタとミラーのある位置での正しく反射が強くなっていることがわかる (出所:共同プレスリリースPDF)

なお、研究チームによると、今回の技術の応用展開として、流速分布測定が期待されるとしており、それにより空気中に存在する粒子の振動や動きを捉えることができるようになり、空気の流れを可視化することが可能となるとする。これは、部屋の換気効率や、マスクの周りの乱流などの測定につながることから、感染症対策にも貢献できる可能性があるとしているほか、生体信号の非接触センシング(脈拍、呼吸、心臓の微細振動・鼓動など)にも応用できる可能性もあるとしている。

  • LiDAR

    30kHzで振動する振動発生装置の波形と周波数が測定され、正しく30kHzでピークが現れたことから(右のグラフ)、振動検出能力も示された (出所:共同プレスリリースPDF)